米国「戦い方」改革が進み逆効果~中国、南シナ海に弾道ミサイル

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月28日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。中国が南シナ海に向けて複数の弾道ミサイルを発射したニュースについて解説した。

対艦弾道ミサイル「東風21D」=2020年8月27日 北京(共同) 写真提供:共同通信社

中国のミサイル発射、菅官房長官が懸念

菅官房長官)最近の中国の南シナ海での活動については、懸念を持って注視しており、我が国としては南シナ海での緊張を高めるような、いかなる行為にも強く反対をいたします。

 

中国が南シナ海に向け、8月26日に複数の弾道ミサイルを発射したとの情報について、菅官房長官は27日の記者会見で、「最近の中国の活動は懸念を持って注視している。南シナ海での緊張を高めるような、いかなる行為にも強く反対する。自由で開かれた平和な海を守るため、アメリカをはじめ国際社会と連携して行く」と述べている。

飯田)弾道ミサイル、しかも種類が複数ですね。

習近平国家主席=2020年6月22日 写真提供:時事通信

第一列島線に米軍は入れないという意思表示

宮家)官房長官の懸念と反対は当然だと思います。中国は「アメリカに対しての警告だ」と言うのですけれども、懲りないですよね。1996年に台湾の総統選挙があったとき、中国がミサイルを撃って、その後にアメリカの空母が台湾海峡にやって来て、それでチャラになったわけです。あれから24年、中国の実力は間違いなく伸びています。DF26ミサイル、DFとは東風という意味なのですが、今回はDF26とDF21が撃たれました。DF26の方は、射程が約4000キロで、グアムまで届くことからグアムキラーと呼ばれています。DF21の方は空母キラーです。つまり、九州から沖縄、台湾、フィリピン、南シナ海を含めた第一列島線のなかに、アメリカの海軍は入れませんよ、という中国の意思表示です。

「中国式法治」香港に拡大 中国の習近平国家主席を映す北京市内の大型ビジョン=2020年5月(共同) 写真提供:共同通信社

中国の力を誇示することは逆効果

宮家)しかし、それをやったら逆効果だということが、どうしてわからないのかねえ。力を誇示すると言いますが、当然のことながら1996年のときは米国からの対応措置がありました。今回は中国の力が強くなっているから、必ずしもそれができるとは言えないけれども、その分だけこちらも「やばい、本気でやらなくてはいけない」ということになる。私はいつも言っていますが、米国では既に「戦い方」改革がどんどん進んで行くわけですよね。中国の沿岸に何百、何千と配備されている、弾道型で命中率の高い、無数にあるミサイルシステムをどうやって打ち破るか、ということを考えなくてはいけなくなる。当然のことなのですが、どうして中国にはそのことがわからないのですかね。相変わらずだなと思います。

埋め立てが進むスビ礁(2015年5月)(南沙諸島海域における中華人民共和国の人工島建設-Wikipediaより)

早い段階で正しくメッセージを送っていれば、人工島の計画自体を凍結できた

飯田)南シナ海は、日本から遠いというイメージがあるかも知れません。

宮家)しかし、日本のタンカーが通っています。タンカーも貨物船も、みんな通っているわけですよね。

飯田)生命線と言っても過言ではありません。

宮家)中東まで行くときに、そこがいちばん近いわけですから、通らざるを得なくなる。ですから、日本にとっては決して他人ごとではないです。もちろん東シナ海、尖閣の方が大事ですけれども、結局海はつながっていますから、中国にとっては同じですよ。

飯田)アメリカは「航行の自由作戦」をやったりもしていましたが。

宮家)これも、もともとは中国が南シナ海で人工島をつくって、軍事要塞化しているわけでしょう。そのときにオバマ政権がどう対応したかと言うと、厳しい言い方ですが、最初は見て見ぬふりをしたのです。しかし、2期目くらいで「これはやばい」ということでやっと「航行の自由作戦」を始めたのですが、当時は実に象徴的なやり方だったのですよね。本気で中国に喧嘩を売るようなやり方ではない。ただ、トランプさんになってからは、かなり喧嘩腰でやっています。それはそれで心配ですが、米国がもっと早くこれをやっていれば、早い段階で正しいメッセージを中国に送っていれば、もしかしたら人工島の埋め立て自体を凍結することができたかも知れません。もはや手遅れですけれどね。

「中国ウイルス」を正当化 2020年3月17日、米ワシントンのホワイトハウスで記者会見するトランプ大統領(中央)(UPI=共同) 写真提供:共同通信社

アヘン戦争の屈辱を晴らしたい中国

飯田)こういう事実を見ると、すでに南シナ海は中国の内海になった、と思った方がいいのでしょうか?

宮家)そうしたいのでしょうね、中国は。しかし内海と言っても、勝手に九段線などという線を引いたところで、そこは公海ですよ。あんなものは島ではないのですから。人工島をつくって埋め立てても、国際法上は単なる岩なのです。だから領空も領海もできません。そういうことをわかった上で中国はやっているわけです。確信犯ですし、大きな問題だと思いますけれどね。

飯田)しかし、国連の安保理常任理事国だと、これを止める手段はない。

宮家)国連ではもう解決できないです。中国には拒否権がありますから。拒否権を拒否すればいいのですけれども、そうもいかないでしょう。

飯田)最近では、力による現状変更のようなことをやりつつ、WHOに代表されるように、国際機関でもグイグイ出て来ますね。

宮家)しかし、中国側からすれば、自分たちが蹂躙されて来たのだということです。アヘン戦争で完膚なきまでにやられて、香港をとられ、マカオをとられた。そしてヨーロッパ、アメリカが入って来て、最後は日本までやって来た、と思っている。「ふざけるな。自分たちはもう強いのだ、昔の屈辱を晴らして見せる」ということです。歴史的に見ればアヘン戦争の屈辱ですよ。彼らだったら、そういう気持ちになってもおかしくはないと思います。しかし、周辺国はたいへん迷惑なので、やめてくれという話です。

「東方経済フォーラム」全体会合で、演説を終えた中国の習近平国家主席(左)と握手する安倍晋三首相=2018年9月12日、露ウラジオストク 写真提供:産経新聞社

日中の問題ではなく、中国対国際社会の問題

宮家)中国にはもっと国際社会に溶け込んで、責任あるメンバーとしてやって欲しいのです。そうすれば中国が望むような、中国に対する尊敬というものも生まれるでしょう。しかし、それをせずにミサイルをバンバン撃ち込み、香港ではやりたい放題をやって……、冗談ではありません。「昔の日本と同じではないか」と言いたいですね。

飯田)日本としては、どう対応すべきでしょうか?

宮家)簡単です。これは日中の問題ではなく、中国対残りの世界、すなわち中国対国際社会の問題にすべきです。普遍的な価値観を共有する世界のコミュニティに対して、それに溶け込まず、反対する勢力がある。中国対国際社会という枠組みのなかで考えて、日本はどこにいるかと言ったら、それは国際社会に決まっています。国際社会の利益、すなわち日本の利益であり、それで中国を翻意させる、考え方を変えさせるという方向で動くのが、正しいやり方だと思いますね。

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