災害時における情報をどのように送り、受け取るべきか
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月31日放送)に中央大学法科大学院教授の野村修也が出演。災害時における情報の対応と防災用語の見直しについて、RKK熊本放送・宮脇利充を電話ゲストに迎えて解説した。
ラジオで大雨の情報を聴いたら、取るべき行動とは
大雨の際に出される警戒レベルや警報などの気象情報、用語を改めて理解し、ラジオでさまざまな情報を耳にしたとき、自らが取るべき行動をどう決定するべきかを考えて行く。
飯田)9月1日は防災の日です。ここでは豪雨、大雨について整理し、リポートして行きたいと思います。いろいろな情報が出されると、情報がありすぎて迷ってしまうこともあるので、ここで整理して行きましょう。
警戒レベルについて
飯田)まずは警戒レベルについてです。2019年から取るべき行動を直感的に理解できるように、5段階の警戒レベルを明記しています。市町村が発令する避難情報や気象庁、国土交通省が発表する大雨・洪水・暴風などの防災気象情報が提供されています。このレベルと防災気象情報が結びつかないということで、整理します。
レベル1・2「早期注意情報」、レベル3「準備」、レベル4「避難」~わかりにくい
飯田)まずレベル1、レベル2は、早期注意情報や注意報などです。その次にレベル3、レベル4があります。レベル3は避難に時間のかかる高齢者や、体の不自由な方が避難を開始する段階。レベル4は、危険な場所にいるすべての人が避難する段階。3で準備、4で避難ということです。このレベル1~レベル5までの行動の裏付けとなっているのが、気象庁発表の洪水・土砂災害・高潮などの警報や、土砂災害・浸水・洪水など災害リスクの高まりを地図上に示す危険度分布などです。川の近くに住んでいるような危険度分布が高いところでは、例えば大雨洪水、または氾濫警戒情報などに接した場合、「レベル3」という言葉を聴いたら避難するということです。特に高齢者や、体の不自由な方は避難する段階なのですが、こういうものも行政だなというか、縦割り感がありますね。
野村)住民目線ではないですよね。聴く方の側に立っていないということが、どうしても感じられます。
飯田)レベル4になると、土砂災害警戒情報・氾濫危険情報・危険度分布で「非常に危険」となり、「危険」という言葉が並びます。防災のホームページやテレビでは、レベル4になると紫色が出ますので、「紫色が出たら非常に危険で、すぐに避難」となります。色分けが気象庁のホームページにも詳しく載っていますので、あらかじめカラーで印刷しておいて、冷蔵庫などに貼っておくとわかりやすいですね。
野村)言葉だとわかりにくいので、最近だと「これはレベル4相当です」とか「3相当です」と言ってくださいます。やはりこの5段階レベルで、自分たちの行動を決めるといいのではないでしょうか。
7月豪雨~被災地の現在
飯田)平時にこう言っていても、有事の際に放送局はどういう動きをするのか。7月4日午前4時50分に、熊本県と鹿児島県で大雨特別警報が発令されました。大雨特別警報はレベル5、既に災害が発生しているという段階です。そこに至るまでにラジオが何を伝え、行動を促して来たのか。令和2年7月豪雨で、甚大な被害が出た熊本で対応に当たられた、RKK熊本放送ラジオ局次長兼ラジオ制作部長の宮脇利充さんと電話がつながっています。およそ2ヵ月が経ちましたが、いまの状況はいかがですか?
宮脇)コロナ禍での復旧活動ということもあって、熊本地震のときは全国からボランティアの方に来ていただいたのですが、今回、ほとんどの被災地はボランティア募集を熊本県内だけに絞り込んでいます。それもあって、まだ土砂の掻き出しをやっているというのが現状ですね。
飯田)まず復興の基盤をつくる片付けの部分が、いまも続いているという形になるのですね。
宮脇)まだまだ全然、という状況です。人吉市の街中では、ほとんど土砂の掻き出しは終わっているのですが、少し郊外に出ると、まだ家が散乱しているという状況が続いています。
飯田)そういう方々は、いまだに避難所で暮らしている方も多いのですか?
宮脇)8月31日の時点でも、避難されている方が1098人いらっしゃいますから、自宅に戻れない方はまだ多いですね。
飯田)そうすると、復興住宅や仮設にすら行かないというところも多いわけですよね。
宮脇)いま仮設住宅の建設、入居が、先々週くらいからようやく始まっているところです。
7月豪雨の際、現地でラジオはどう伝えたのか
飯田)それだけ甚大な被害が出た今回の豪雨ですけれども、実際の気象情報が来るなかで、ラジオではどう伝えられたのですか?
宮脇)「これは自治体から出ている情報で、これは国交省、これは気象庁」ということは、実際に伝える立場にある私たちとしては、それほど意識せずに、とにかく並んでいる端末から出て来る情報を重複しないように気を配りながら、次から次に放送しました。伝える際は、「どこからの情報だ」ということをできる限り言うことはもちろんですが、先ほどお話が出たように、「これは警戒レベル4に相当します」とか、「レベル3です」ということを言い添えました。
大雨特別警報が出たのは早朝4時50分~次から次へと情報を流す
飯田)情報が来始めたのは、大雨特別警報が出てからですか?
宮脇)熊本は、大雨特別警報や洪水警報がよく出る地域で、しかも7月4日の前日となる3日の段階では、「降雨量も時間雨量が60ミリぐらい」という予想が出ていました。60ミリほど降るというのもよくあることなので、ほとんどの人は警戒していなかったはずです。大雨特別警報が出たのが早朝4時50分でしたので、そこから「ええ!」と多くの人が警戒し、私たちも伝え始めたというのが実際のところです。
飯田)なるほど。警戒レベルなど、いろいろな情報がありました。レベル何相当と、ある意味でラベル付けをしながらお伝えされたと思うのですが、伝える側の苦労や工夫、混乱はありましたか?
宮脇)どこからの情報だということは意識せずに、次から次へと伝えて行ったものですから、私たちが気を配ったのは、「できるだけ多くの情報を入れたい」ということです。各方面から流れて来る情報と、弊社の報道部からも情報が入って来ますので、それと合わせて、次から次に情報を入れる。いろいろな勧告は、大きなエリアに網をかけて流していることが多いので、たくさん入れればお聞きになっている皆さんは、自分のすぐ傍の情報だと受け手の方が聴き取られると思うのです。だから、そこに気を配りました。
「避難スイッチ」~「レベル4」になったら無駄になっても避難する
野村)受け手の側の問題もあると思います。せっかく伝えていただいても、行動につながらなければいけないと思います。いま私が注目しているのは、「避難スイッチ」という言葉です。これは京都大学防災研究所が強く主張しているのですが、「何かの事柄が伝わったら、何も考えずに避難すると決めておく」というものです。災害時にいちいち判断していると、どうしても「まだ大丈夫だ」という方向に行ってしまうので、「無駄でもいいから避難するということをリンク付けする」ことが必要だと思うのです。いまお話があったように、「レベル4です」と言われたら、もう避難すると決めておく。そういう形で、ラジオとリンクすることが大事なのではないでしょうか。
飯田)そうなると伝える方は、新しい情報をどんどん入れて行けば、どこかで反応してくれる人がいると信じてやって行くことになるわけですか?
放送と自分たちの経験則を合わせて判断する
宮脇)私たちは、とにかく伝えるしかないわけです。実際、大雨の音でどのくらいの人がラジオの音声を聴き取れているだろうか、ということもあります。自治体の無線が聴き取れなかったという反応が、災害が起きるたびに言われるわけですから。ただ今回のような、これまでにも氾濫が起きている球磨川流域の住民の皆さんは、私たちが流す放送の情報以外にも、「川の水位がここまで以上に来たら危ない」とか、「あそこが浸かり始めたら逃げなくてはならない」という情報を持っている方も多いです。放送と合わせて、自分たちの経験則と一緒に判断なさっていると思います。
野村)まさにそれが避難スイッチですね。
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