モンゴル語を奪おうとする中国~日本に問われる「国会の見識」
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月15日放送)にジャーナリストの有本香が出演。中国当局が民主活動家の李宇軒氏ら12人の拘束を発表したニュースについて解説した。
中国当局が活動家ら12人の拘束を発表
中国広東省深圳市の公安当局は9月13日、香港から台湾に密航しようとして中国海警局に拘束された民主活動家の李宇軒氏ら12人について、深圳市内で拘留を続けていると発表した。
飯田)12日に活動家の方々のご家族が、8月23日に拘束されたあと消息が途絶えたということで、記者会見を開いていました。
有本)アメリカのポンペオ国務長官は、これに対しても深い懸念を表明しました。最近の中国国内では弾圧、外へ向かっては膨張・拡張と、さまざまなことがあからさまになっています。
中国がモンゴル族に対し、授業でモンゴル語から中国語に言語を変更
有本)いま私が非常に心配しているのは、無論、この民主活動家の方々や香港との関係などもあるのですが、いま内モンゴル自治区で大変な事態になっているということです。9月1日以降、わかりやすくやや乱暴に言うと、モンゴル人にとってのモンゴル語とは国語であり、第一言語なのですけれども、これを外国語のような扱いにするという問題が出て来ています。ほとんどの授業を、多少段階的にではあるけれども、今後は中国語でやるということで、モンゴル民族からモンゴル語を奪うという暴挙を、突如としてやると言い出した。これに伴って、子供たちや父兄が授業をボイコットするということが起き、それをまた学校に連れ戻すという動きもあり、自殺者も出ています。
飯田)学校の校長先生が自殺されて、子供が悲嘆に暮れているという映像や画像が出ています。
有本)5日に、元中国籍の方々も含めた在日モンゴル人の方々が、かなり大規模に都内や大阪でデモを行いました。本当に中国は、これをやり切るつもりなのかということです。チベットでもウイグルでも同じようなことが起きていて、私も長年取材しているテーマですが、内モンゴルに関しても文革時代に相当ひどいことが行われて来たのは事実です。しかし、その後の内モンゴルについては、それなりの民族政策が取られて来たという認識でいたのですが、ここへ来て急に、新疆ウイグル自治区と同じような状況になって行くのではないかということが見え始めました。
日本も中国へさまざまな牽制をするべき~国会の見識が問われている
有本)これに対して、日本の永田町からはほとんど声が上がりません。ウイグル問題に対してもそうでした。国会で日本がどのような方向に行くのかということを、活発に論戦して欲しいのと同時に、世界のなかにいる日本が隣国で起きていること、特に人権問題ですが、内政不干渉の原則をあえて外れてでも、国際社会がさまざまな牽制を中国に対してするべき事柄だろうと思います。ここで日本の見識や、日本の国会は民主主義の府ですから、そこでの考え方、理念のようなものを発信しなければ、私たち国民としても「いったい何のために国会があるのか」という話になります。
飯田)まさに価値観を大事にする外交を、この7年8ヵ月でやって来た。松川議員は、それを菅政権も踏襲するとおっしゃっていましたが、そうであるなら政府や国会が体現するべきです。
有本)政権側がどうであるか、ということも大事ですけれども、いまは「国会の見識」が問われている場面だと思います。過去にチベット問題やウイグル問題で、欧米諸国がどのような対応をして来たのかと言えば、政府が最終的な声明を出す前に、どこの国でも、国会で1つのステイトメントを採択するということをやっています。
飯田)香港問題についても、アメリカ議会はそうですよね。
有本)素早くやりました。議会が主導するというのはある意味、いちばんあるべき形です。
飯田)民意が主導するということ。
有本)そこを本当は期待したいと思います。しかし、そういう動きには全然つながりそうにもないという、残念な感じもします。
ファーウェイへの米政府の規制が強くなるなか、日本からの部品調達が5割増~こんなことをしていれば日本は外されてしまう
有本)それから、ファーウェイのことがありますが、中国の国有企業や国営企業以外にも、民間と言いながら限りなく国策企業的なところに対して、アメリカやオーストラリアが規制をかけています。回り回って日本企業にも影響が大きいところはありますが、日本は中国企業について、例えば国民の情報が取られてしまうとか、安全保障上の懸念が言われている中国企業に対して、何の規制もしないのかということです。菅新政権がスタートするならば、「いろいろな規制改革をする」、「行政を合理化する」というところにはまったく賛成なのだけれども、日本として守るべきところには新たに規制をかけて欲しいと言ったのは、こういう部分です。
飯田)8月末に、ファーウェイ日本法人の会長がオンラインイベントで、「日本からの部品供給が5割増えている」と言っていました。
有本)日本の財界も政界もそうなのですが、「むしろ日本企業にとってはチャンスではないか」くらいのことを言っている人もいます。考えられないと思います。そんなことをしていたら、日本が外されてしまいます。
飯田)アメリカの逆鱗に触れることにもなりかねません。
有本)アメリカだけではなく、「自由主義圏の仲間ではないの?」と認識されても不思議ではないです。
飯田)ヨーロッパも中国に対して、懐疑的に舵を切り始めました。
有本)ドイツですら変わって来ているわけですから。そのなかで、日本だけがズルズルと関係を続けてしまうのはどうかと思います。その辺りについての考えがまったく表明されないというのは、本当に信じられません。
このままでは国際社会のなかで日本は立ち位置を失う
有本)それと民主活動家、あるいは民族政策に反発している人たちと、日本の政治がどのように関わるのだろうかということも、本当は期待したいです。いままで民主活動家や民俗的な活動家の人たちが国外に出たときには、アメリカやヨーロッパの国々が保護したり、応援することがありました。日本はまったくそういうことをして来ていないのだけれども、今後は必要になって来る場面があると思います。そのためにも、民主活動というよき活動をしようとして、中国から弾圧されている人たちについて、日本はどうなのかという観点も必要です。スパイ防止法的なものを早くつくり、こうした人たちを受け入れて、日本の国益というプラットフォームに乗っていただいた上で、そのような活動を日本が応援する。それが中国に対しての牽制になるというところを組み立てて行かなければ、これからの国際社会のなかで、日本は立ち位置を失ってしまうのではないかという懸念があります。
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