イスラエルがUAE、バーレーンとの国交正常化合意~その背景には何があるのか

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月16日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。イスラエルがアラブ首長国連邦(UAE)とバーレーン、それぞれの国と国交正常化の合意文書に署名したニュースについて、電話ゲストに国際政治アナリストの菅原出を迎えて解説した。

(左から)バーレーンのザイヤーニ外相、イスラエルのネタニヤフ首相、アメリカのトランプ大統領、アラブ首長国連邦のアブドラ外相(アブラハム合意-Wikipediaより)

イスラエルがUAE、バーレーンとの国交正常化合意文書に署名

イスラエルは9月15日、アラブ首長国連邦(UAE)とバーレーン、それぞれの国と国交正常化の合意文書に署名した。署名式典はアメリカのホワイトハウスで行われ、出席したトランプ大統領は、さらに5~6ヵ国が近くイスラエルと国交正常化の合意に達するとの見解を示している。

アメリカ・ホワイトハウスにてアラブ首長国連邦とイスラエルの国交正常化をメディアに公表するドナルド・トランプ大統領。2020年8月13日(アブラハム合意-Wikipediaより)

選挙対策だけとは言えない~イスラエルと国交を結ぶことはメリットであるとするアラブの国がある

飯田)調印式は先ほど行われたばかりです。この時間は、いま中東で何が起きているのか、中東情勢に詳しい国際政治アナリストである菅原出さんにお話を伺います。おはようございます。UAEだけでなくバーレーンも、ということで、中東はどう動いているのでしょうか?

菅原)トランプ政権がイスラエルを支援すると、アメリカ国内のイスラエル寄りの人々、福音派と呼ばれるトランプさんの支持基盤の人たちが喜びますので、大統領選挙前に、イスラエルに有利な国際環境をつくる外交を進めているということです。ただ、それだけではなく、イスラエルと国交を結ぶことにメリットがあると考える一部のアラブの国があり、そういう国際環境、地域情勢ができているということが大きな背景としてあります。

中東和平案を発表し、握手するイスラエルのネタニヤフ首相(左)とトランプ米大統領(アメリカ・ワシントン)=2020年1月28日 写真提供:時事通信

一部のアラブの国にとって大きな脅威となっているイスラエル

飯田)新聞紙上では、このメリットはイランとの関係だと指摘されています。これはどうですか?

菅原)イランはいちばん大きな国の1つです。イランだけではなく、トルコという国もあります。イランについては特にイラク、シリア、イエメン辺りに影響力を伸ばしています。特にイエメン辺りでは、サウジアラビアやUAEと一部で代理戦争のようなことをやっていますので、イランの脅威は伝わっています。トルコはサウジアラビア、エジプト、UAEが支援しているグループとは別のグループを支援していて、リビアでは代理戦争が行われています。また、東地中海の海底にあるガス田の開発競争が盛んに行われ、そこでもトルコが孤立する形で、アグレッシブに海底の資源探査をしています。それが近隣のギリシャ、キプロス辺りの権利を侵害しているということで、近隣諸国は怒っています。エジプトやイスラエル、UAEも一体となって、トルコと対立しているという構造があります。大きな背景のなかで、一部のアラブの国では、イスラエルという国は懸念ではなく、それよりも大きな脅威ができているということがあるのだと思います。

飯田)敵の敵は味方ということですか?

菅原)そうですね。

サウジアラビア・ウラー近郊でムハンマド皇太子(左)の歓迎を受け握手する安倍首相=2020年1月12日(代表撮影・共同) 写真提供:共同通信社

バーレーンに対して「イスラエルとの国交正常化はOK」だと指示したサウジアラビア

佐々木)サウジアラビアは、アラブの盟主としてどう動くのですか?

菅原)サウジアラビアは、イスラムのなかではリーダー的な役割で、イスラムのメッカ・メディナを守っている立場です。これまでの中東和平のなかで、サウジアラビアが果たして来た役割があります。パレスチナの権利をイスラエルが認めて、いままでの占領地を返すことと引き換えに、イスラエルとの国交を正常化するという条件でした。それをサウジアラビアが取り下げることはなかなかできませんが、いまの環境のなかではUAEやバーレーンと同じように、イスラエルとの関係を強化したいという方向性を持っています。ある意味、バーレーンはサウジアラビアの了承なしにはこういうことができませんので、サウジアラビアがバーレーンに対してゴーサインを出したと見るべきです。サウジアラビア自身はまだまだ動けませんが、バーレーンに対して、イスラエルとの国交正常化はOKだと出したとみられています。

パレスチナ自治区ガザで、イスラエル軍の空爆で破壊された家を調べる女性ら=2019年11月14日(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

孤立し、トルコやイランに頼らざるを得なくなるパレスチナ

佐々木)ずっとパレスチナ対イスラエルという形でしたが、そうなるとパレスチナ政府が孤立してしまうことになりかねません。そこはどうなのでしょうか?

菅原)相当孤立しています。パレスチナの方は、アラブ連盟の会議が9月9日にあったのですが、そこでUAEとイスラエルの国交正常化を非難してくれ、権利を守って欲しいと提案しました。しかし、エジプト、バーレーン、UAEなどがみんな反対して、却下されました。その代わりにアラブ連盟の代表会議が出した声明が、「我々にとってのアラブの脅威はトルコとイランだ」というものです。つまり、アラブの主要な国々にとっては、パレスチナのためにイスラエルと対立するよりも、イラン、トルコと対抗するためにイスラエルと組んだ方がいいと考えている人たちが、たくさんいるということです。パレスチナの人々は、自分たちを守ってくれるアラブの国々がなくなり、トルコやイランに頼らざるを得ないという方向に行きますね。

飯田)宗教の違うイスラエルよりも、同じイスラム教でもシーア派のイランや、トルコは同じスンニ派ですが、こちらの方が憎いということになるのですか?

菅原)宗派や宗教よりも、国家としての利害関係が優先される状況です。

飯田)国益優先ということですね。

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