『ある画家の数奇な運命』アカデミー賞監督が描く、祖国ドイツの“歴史の闇”と“芸術の光”

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【Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね 第912回】

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。

今回は、10月2日に公開された『ある画家の数奇な運命』をご紹介します。

『ある画家の数奇な運命』

激動の時代に数奇な運命を生きた、若き芸術家の物語

ドイツを代表する世界的な画家、ゲルハルト・リヒター。彼の半生をモデルにした映画『ある画家の数奇な運命』が、日本公開となりました。

長編初監督作『善き人のためのソナタ』でアカデミー賞外国語映画賞を受賞したフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督が、祖国ドイツの“歴史の闇”と“芸術の光”に迫った人間ドラマです。

『ある画家の数奇な運命』

『ある画家の数奇な運命』のあらすじ

ナチス政権下のドイツ。少年クルトは叔母の影響を受け、幼いころから芸術に親しむ日々を送っていた。しかし、精神のバランスを崩した叔母は強制入院の果て、安楽死政策によって命を奪われてしまう。

終戦後、東ドイツの美術学校に進学したクルトは、そこで出会った娘エリーと恋に落ちる。彼女の父親は、元ナチ高官。愛する叔母を死に追いやった張本人だったが、そんな残酷な運命にも気付かぬまま、2人は結婚する。

やがて東のアート界に疑問を抱いたクルトは、エリーと共に西ドイツへ逃亡。創作に没頭するが……。

『ある画家の数奇な運命』

『ある画家の数奇な運命』のみどころ

ゲルハルト・リヒターと言えば現代美術界の巨匠で、その作品がオークションに出ると、数十億円の価格がつく世界的なアーティスト。

フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督がリヒター氏に映画化を申し込んだところ、1ヵ月にもわたる取材許可が降りました。

ただし映画化の条件は、人物の名前は変えて、何が事実か事実でないかは、互いに絶対に明かさないこと。

そうした契約の元に完成した本作は、全編にわたってミステリアスな雰囲気に満ちており、描かれている歴史的事実に衝撃を受けると同時に、観客のイマジネーションを刺激する作品となっています。

『ある画家の数奇な運命』

前半はナチスの戦争犯罪に絡んだエピソードを軸に展開し、後半は激動の時代を経て自らの芸術を完成させて行くアーティストの姿を追う。

その底流には、常にドイツアート界の“負の歴史”があり、その見事な構成力には感嘆するばかりです。

真実は、すべて美しい。信じるものと向き合い、命をかけることで、苦悩や葛藤を希望と喜びへと昇華させて行くクルトの生き様は、観る者すべてに勇気をもたらしてくれることでしょう。

『ある画家の数奇な運命』

<作品情報>

『ある画家の数奇な運命』

2020年10月2日(金)からTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
監督・脚本・製作:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
撮影:キャレブ・デシャネル
音楽:マックス・リヒター
出演:トム・シリング、セバスチャン・コッホ、パウラ・ベーア、ザスキア・ローゼンダール、オリヴァー・マスッチ
(C)2018 PERGAMON FILM GMBH&CO. KG/WIEDEMANN&BERG FILM GMBH&CO. KG
原題:WERK OHNE AUTOR/英題:NEVER LOOK AWAY
公式サイト https://www.neverlookaway-movie.jp/

連載情報

Tokyo cinema cloud X

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/

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