【ライター望月の駅弁膝栗毛】
2020年の年末、上越国境はドカ雪に見舞われ、高速道路は大きくマヒしました。
そのなか、大きなダイヤの乱れもなく運行されたのが「上越新幹線」。
昭和57(1982)年の開業以来、雪に強い新幹線として冬の安定輸送に貢献しています。
JRになり、この新幹線の施設を有効活用して生まれたのが「GALA湯沢スキー場」。
令和2(2020)年12月20日で、オープンから30周年の節目を迎えました。
地元の雇用にも大きく貢献しているという、湯沢町・南魚沼市の各スノーリゾート。
かつては、特急「新雪」をはじめ、スキーの臨時列車が、石打行として運行されました。
残念ながら2020年で無人化されてしまった石打駅ですが、その駅前で越後湯沢向けに駅弁を製造する「川岳軒」は健在です。
「駅弁屋さんの厨房ですよ!」第23弾は、川岳軒の牧野晶社長にお話を伺っています。
●スキー人気で駅弁屋さんも大盛況!
―越後湯沢・石打には、数多くのスキー場がありますが、冬場の駅弁販売にまつわるエピソードはありますか?
スキー人気華やかなころは、1日3000個の駅弁が売れる日もありました。
でも、スキーのお客様の動向を読むのは本当に難しくて、私も苦い思い出があります。
20年程前、土曜日に大変多くのお客様がいらしたので、「この週末はイケる!」となって、翌日も大量の駅弁を作ったら、読みが外れて400個の売れ残りを出してしまいました。
夜9時ごろまで営業しても売り切ることができず、駅の関係者に配りまくってもダメでした。
―越後湯沢での販売は、いつごろからやっているんですか?
新幹線開業以前から販売があり、新幹線ができてからもしばらくの間は、越後湯沢駅の東口に営業所と工場があって、むしろ湯沢での製造分のほうが多いくらいでした。
新幹線開業までは、この営業所の1階で土産物店を経営、地下で駅弁を作っていました。
いまは駅が少し移転して、区画整理も行われたので、当時とは雰囲気が変わっています。
ちなみに、私が経営に関わるようになってからは、ずっと石打で作っています。
●上越新幹線と特急はくたか、接続時間1分の差で、売上大変動!
―昭和57(1982)年の上越新幹線開業の影響は大きかったですよね?
(まだ小学生のころだったので、具体的な数値はわかりませんが)とても大きかったです。
メリットもデメリットも大きかったですが、トータルではメリットのほうが大きかったと思います。
お客さまがとにかく増えましたし。
川岳軒としては、新幹線開業による越後湯沢駅の移転に伴って、土産物店がお客様の動線から外れて、店の引っ越しを強いられたことはデメリットでしたね。
―平成9(1997)年の「ほくほく線」開業は、具体的にはどんな恩恵がありましたか?
金沢行の特急「はくたか」の始発駅となったことで、1日200個の駅弁がほぼ確実に売れるようになったのはとても大きくて、ダッシュで買われていくお客様が多かったですね。
上越新幹線と「はくたか」の接続時間が1分短くなるだけで、売り上げが大きく変化しましたので、ダイヤ改正では、接続時分の動向がとても気になっていました。
とくに10時台の「はくたか6号」と11時台の「はくたか8号」はゴールデンタイムでした。
●スキー客、最後の「頼みの綱」! 越後湯沢の駅弁!!
―一方で越後湯沢駅は、以前から“駅ナカ”がかなり充実していると感じていますが、どのような形で棲み分けをされていますか?
スキーシーズンの繁忙期における越後湯沢駅は、いくつもある食事処に行列ができて、お客様が入りきれないくらいの盛況ぶりとなります。
「川岳軒」は、そんなお客様の「受け皿」として機能していると感じています。
いまスグにお腹を満たしたい方は「湯沢庵」の立ち食いそば・うどんを召し上がっていただくことができますし、しっかりとご飯をいただきたい方には、「駅弁」をご用意しています。
(川岳軒・牧野晶社長インタビュー、つづく)
1月の「成人の日」3連休、湯沢の温泉を楽しんだことがありますが、越後湯沢機構内の回転寿司屋さんは、30分以上待ちの大盛況ぶりだったと記憶しています。
迫る新幹線の発車時刻、乗車変更は効かない切符、お腹が空いてどうしようもないというアナタに、手を差し伸べてくれるのが、越後湯沢駅「川岳軒」の駅弁です。
昨シーズンからリニューアルされたのは、「どかんとかにずし」(950円)ですね。
【おしながき】
・酢飯
・ズワイガニ
・椎茸煮
・錦糸玉子
・紅生姜
大きなカニが描かれた水色の掛け紙を外すと、食欲をそそる酢飯の香り。
四角いマス型の容器には、一面にズワイガニと錦糸玉子、椎茸煮が敷き詰められており、彩りのよさを感じさせてくれます。
もちろんご飯は、南魚沼・塩沢産コシヒカリですので、モチモチとした食感と共に、ご飯そのものの甘味と酢の酸味が、口のなかに心地よい満足感を残してくれます。
12月中旬、2021年3月のダイヤ改正が発表され、上越新幹線ではE7系新幹線電車が追加投入されて、新たに12本の列車が全席コンセント付きのE7系で運行されます。
これに伴って、現在2階建ての「Maxとき」「Maxたにがわ」として運行しているE4系新幹線電車は、2021年秋ごろで運行終了になるとのこと。
上越新幹線が走る風景も、来年(2021年)は少しずつ変わっていきそうです。
(参考)JR東日本ニュースリリース・2020年12月18日分
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/