感染症法改正案~最初から「修正協議ありき」の法案である理由
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月26日放送)にテレビ東京 政治部・官邸キャップの篠原裕明が出演。感染者への懲役刑などをテーマに行われる修正協議について解説した。
感染症法改正案など5項目~与野党が修正協議へ
1月25日、自民党の森山国対委員長と立憲民主党の安住国対委員長が国会内で会談を行い、感染症法の改正案に導入された入院を拒否するなどした感染者への懲役刑など5項目をテーマに、26日から修正協議を行うことで合意した。
飯田)衆院内閣委員会と厚労委員会の与野党筆頭理事、計4人でやるということだそうです。
篠原)入院拒否した感染者に「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」というのは、率直にどう感じられますか?
飯田)1年以下の懲役は長くないですかね。その間に治ってしまいます。
篠原)懲役というのが重く感じますよね。今回のこの法案には、「過料」と「罰金」という言葉が出て来ます。どちらも金銭的なペナルティという意味ですが、大きな違いは、過料は行政罰なので前科がつきませんが、罰金は刑事罰なので前科がつきます。入院拒否については、刑事罰である懲役か罰金ですから、前科がつくものです。ですから野党側は、「懲役刑は重過ぎるのではないか」と反発をしている状況です。
感染症法改正案~最初から「修正ありき」の法案
篠原)政府側としては、そもそも感染症法というのは、刑事罰の法律なのだというんです。感染症法というのは、バイオテロのようなことを想定しているのだと。例えばエボラ出血熱のようなものをみだりに発散させて、公共の危険を生じさせたものには、「無期もしくは2年以上の懲役、または1000万円以下の罰金に処する」という罰則がすでにあるのです。こういうものとの整合性を取って、懲役や罰金というものをつくったのだと政府側の人は言います。ただ、政治部の記者から言わせてもらうと、これは「はじめから修正ありきの法案だな」と思うわけです。最初から、野党に高いボールを投げて、野党から「修正しろ」という声が出て来るように仕掛けた法案であるということです。
飯田)値切るのを前提で高い値段をつけたようなことですか?
補正予算と本予算の間で審議するために野党に見せ場をつくった
篠原)そういうことです。実際、先週の代表質問でも、菅総理は「野党の意見を聞きます」と、法案の国会提出前から野党に譲歩する姿勢を示しています。では、なぜこんなに野党に見せ場をつくる必要があるのかということですけれども、この特措法と感染症法の審議のスケジュールが異例なのです。普通は、この1月~3月は予算案の審議をする期間となります。一般の法案は審議しません。一般の法案は4月以降の審議になるのですが、これを政府が「緊急性が高いので、補正予算と本予算の間で審議させてくれ」と言ったので、言うことを聞いてもらうために、野党に見せ場をつくったということです。
飯田)そういう駆け引きがあったのですね。
修正協議は非公式な場で議事録も残らない~委員会の審議のなかで行うべき
篠原)与野党が話し合って、法案を修正するということ自体は、いいことだと思います。普通であれば、与党は出した法案を無傷で成立させるということに汲々としますし、それに対して野党は揚げ足取りの質問が多いなどと言われます。ですから、国会で与野党が話し合ったことが、法案に反映されて行くことはいいことだと思います。ただ1つ苦言を呈したいのは、26日から始まる修正協議、これは非公式の場なのです。先ほど言った内閣委員会と厚生労働委員会の筆頭理事4人が非公式の場でやるのです。この修正協議は、本来であれば、委員会の審議のなかでやるべきだと考えます。正式な委員会の審議のなかでやれば、議事録が残りますし、歴史の検証にも耐え得るわけです。しかし、日本は、対立はあまり見せたくない、むしろ公式な表の場では、すんなりと運びたいということがあって、どうしてもそういうことをやってしまう。この種の議論は表に出しても、全然問題ない議論のはずですから、今後はこういうことは委員会のなかでやって、議事録もしっかり出して欲しいと思うのです。
飯田)確かにね。何か国会が舞台みたいになってしまって、こういう実質の修正協議は書き割りの裏でやっているようなことになりますね。
篠原)議事録がないので、「なぜこういうことになっているのかわからない」ということがあるのです。
飯田)そうなると、人に聞いた話の記事やオーラルヒストリーのようなものがもてはやされるのかも知れません。諸外国では、「まずは記録に当たれ」ということになりますよね。
議会のなかで1条ごとにチェックするドイツ
篠原)ドイツでは、マークアップセッションと言って、議会のなかで1条ごとにチェックして行きます。
飯田)1条ごとに決めて行くように。
篠原)日本でもそういうことをやるべきだと思います。
飯田)確かに。包括して束ねてしまい、複数法案も一緒にして「イエス、ノー」で採決になるのは、よくないですよね。
篠原裕明 テレビ東京 政治部 官邸キャップ
【テレ東 官邸キャップ篠原裕明の政治解説】
https://www.tv-tokyo.co.jp/news/series?id=2&cornerId=0
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