「ダイヤモンド・プリンセス号」から1年~その教訓は生かされているのか

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(2月2日放送)にジャーナリストの有本香が出演。1年前、乗客の感染が判明したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」で船内の対策本部で活動した衆議院議員・橋本岳を電話ゲストに迎え、当時の様子、また、その経験から新型コロナウイルスの感染防止対策について訊いた。

「ダイヤモンド・プリンセス号」から1年~その教訓は生かされているのか

大黒ふ頭に停泊するクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」と出入りする救急車両=2020年2月16日午後、横浜市中区 写真提供:産経新聞社

クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」の集団感染からまもなく1年

乗客の感染が判明したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」が横浜港に入港して、2月3日で1年となる。このコーナーでは、厚生労働副大臣として船内の対策本部で活動された衆議院議員の橋本岳に当時の様子を訊く。

飯田)橋本岳さんと電話がつながっています。あれから1年が経つということですけれども、どういうお気持ちで乗り込んで行かれましたか?

橋本)いろいろな気持ちがありましたけれども、1つは、やはり未知の感染症が蔓延している状況と思われる船のなかに行くということで、「怖いな」という気持ちも正直ありました。ただ一方で、3700人の人がその船のなかで、未知の感染症への恐怖を抱えながら、実際に熱が出たり、いろいろな症状を持ちながらおられるので、そのなかでできることをしなければならないという使命感もあり、いろいろな気持ちを持ちながら入って行きました。

飯田)ご自身に託された任務は、全体の統括をするということだったのでしょうか?

「ダイヤモンド・プリンセス号」から1年~その教訓は生かされているのか

横浜・大黒ふ頭沖に停泊するクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」=2020年2月5日午前、横浜市鶴見区(川口良介撮影) 写真提供:産経新聞社

情報が錯綜~現場へ入り状況を把握

橋本)ダイヤモンド・プリンセス号が横浜港に入って来たとき、私は厚生労働省本省の対策本部で船のなかのいろいろな状況を聞いていました。しかし、船のなかで何が起こっているのか、厚生労働省本省にいてもよくわからないことがたくさんありました。当初、薬が不足しているということで報道もされました。私たちもそれを把握して、いろいろな医薬品を調達して搬入するようなことはしていたのですが、なかなかそれが行き渡っていないようだと。「船のなかに搬入した」という報告はあるのだけれども、乗客の方からは「まだ届いていない」というご連絡がありました。そうしたことが、外にいてはわからないことが多かったので、加藤大臣と相談して、「現場をまずよく見て来い」ということだったので、視察をするために入って行ったということです。

飯田)なるほど。実際に2月10日に乗船されたということですが、船内の様子はどうでしたか?

橋本)乗客の方は船室で待機されているので落ち着いていました。ただ、2月10日ごろですと、1日に60人~70人くらいの数の方が新たに発熱されるという状況でした。「発熱をした方はこちらの電話番号にお電話を」ということになっていたのですが、その電話が鳴り止まない状態がありましたし、支援団体の方々の手も回っていないという状態にありました。2月11日に薬は配り終えたのですけれども、今度はお医者さんの診察が間に合っていないとか、PCR検査も、当時は1日に100件~200件くらいしかできなかったので、これも間に合っていませんでした。まずはそういうところを整理して行くということが仕事になりました。

「ダイヤモンド・プリンセス号」から1年~その教訓は生かされているのか

【新型肺炎 クルーズ船】横浜・大黒ふ頭に着岸したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」。救急車などが岸に止まり、乗客らが不安そうに見つめていた=2020年2月6日午前、横浜市 写真提供:産経新聞社

ダイヤモンド・プリンセス号での教訓~「ステイホーム」は効果がある

有本)いままた緊急事態宣言が延びるという状況を鑑みますと、このダイヤモンド・プリンセス号で橋本さんたちが経験されたことというのが、その後の例えば法律の改正や日本の水際対策、隔離をどうするのかというようなことなどに、生かされていないのではないかという印象も私は持っています。いまの状況と、当時のご体験を両方見比べて、これからまず何をしなければならないとお考えでしょうか?

橋本)ダイヤモンド・プリンセス号のなかで、いくつかの教訓がありました。2月5日に船室待機になりましたけれども、それ以前は豪華客船ですから、パーティやいろいろなイベントがあり、食事も皆さんでされていたというような状況でした。主にそういうなかで、感染が拡大して行ったと思われています。そういう日常の「晴れやかな活動が感染しやすい」という、その結果として、あれだけの数の感染が起こってしまったということがまず1つ言えると思います。

有本)そうですね。

橋本)一方で、2月5日以降に船室待機にしました。私が入って行った2月10日ごろは新規発熱者が数十人いたのですが、1週間も経たないうちに、新規の発熱患者数が1桁になっていました。きちんと船室待機をして、潜伏期間がありますから、「1週間~10日経つと感染者は減るのだ」ということも1つの体験です。「ステイホームは効果があるのだ」ということです。

「ダイヤモンド・プリンセス号」から1年~その教訓は生かされているのか

【新型肺炎】タクシーに乗り込む、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」から下船したとみられる人=2020年2月19日午前、横浜市鶴見区 写真提供:産経新聞社

適切な対応を取れば感染は防げる

橋本)もう1つ言うと、これは要改善点だと思っていますが、乗員の方、クルーの方々はもちろんマスクをして消毒をし、防護をしてもらいながら働いていただいていました。しかし、同じように彼らも感染のリスクを抱えていて、実際に発熱してお休みになる方も出て来るという状況でした。ただ、これは感染対策の専門家の先生方に入っていただいてそういう対策をした以降になりますけれども、感染を抑えて行っているのです。クルーの方々も。ですから、「仕事をしていながらも適切な対策を取れば、抑えることができるのだ」というのも1つの教訓だと思っています。

「ダイヤモンド・プリンセス号」から1年~その教訓は生かされているのか

大黒ふ頭に停泊するクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」から、外の様子をうかがう乗客ら=2020年2月16日午後、横浜市鶴見区 写真提供:産経新聞社

手洗いとマスクの2点に尽きる

橋本)感染対策の基本というのは、アルコールでも石鹸でもいいですから、きちんと手洗いをすること。それとマスク等をすることの2点に尽きると思います。そうしたことが「効果があるのだ」ということです。緊急事態宣言ということで、いろいろな要請をお願いして、ご不便をおかけしていると思いますが、例えば食事をするにしても、気を付けて食事の仕方をするだけでも効果はあるし、そうしたことを多くの方にしていただけるかどうかによって、感染の拡大は違って来ると思います。やはりそういうことをきちんとお願いして行くことが大事なのだと思います。

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FM93/AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00

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