ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月9日放送)に内閣官房参与で外交評論家の宮家邦彦が出演。国王が「反乱は鎮圧」と表明したヨルダン王室の内紛について解説した。
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ヨルダンの首都アンマンで式典に参列する前皇太子のハムザ王子=2009年6月9日(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社
ヨルダンのアブドラ国王~「反乱は鎮圧」
中東の君主制国家ヨルダンの元皇太子、ハムザ王子が反体制活動に関与したことをめぐり、アブドラ国王は4月8日、国営テレビの演説で「反乱の芽は摘み取った」と述べ、事態は収束したとの認識を示した。王族の仲介により、ハムザ王子は国王に忠誠を誓う手紙に署名したということである。
飯田)アブドラ国王とハムザ王子は、お母さんは違うけれども、兄弟であるということです。
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アブドラ・ヨルダン国王=2005年12月8日、午前、首相官邸 写真提供:産経新聞社
中東の安定に大事なヨルダンの存在
宮家)異母兄弟ですね。ヨルダンという国は、人口は約1000万人で、決して豊かではないし、資源もないのですが、周りの国に比べれば穏健で、君主制ではあるけれども、ある程度自由な空気もあって、私は好きな国の一つです。この国が安定しているからこそ、中東の、特にパレスチナ問題について安定が保たれていると思うので、大事な国なのです。
飯田)ヨルダンによって安定が保たれている。
宮家)大事な国なのですが、もっとわかりやすく言うと、中東のこの種の国は中小企業だと思えばいいのです。オーナー中小企業ですね。もともとはハーシム家と言うのですが、メッカの太守としてメッカを守って来た一族たちです。ところがサウジアラビアが出て来て追い出されてしまった。そこで、仕方がないからイギリスがハーシム家の子どもたちをヨルダンとイラクとシリアの王様にしたわけです。その流れで、ヨルダンでは先代のフセイン国王が、イスラエルとの戦争もあり、パレスチナ側の反乱もあり、その厳しい環境のなかで何とか国を守って来た。先代は老獪な部分と、国民に人気がある優しさの両方を持ち合わせていたということなのです。
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ヨルダンのアブドラ国王夫妻と懇談される皇太子ご夫妻=2018年11月26日午後、東京都中央区 写真提供:産経新聞社
アブドラ国王の逆鱗に触れたハムザ王子の行動
宮家)ところが、息子の代になり、状況は変わって来た。アブドラ国王は素晴らしい方だと思うのですが、お父さんとは少し違う。そしてハムザ王子とはお母さんが違うでしょう。アブドラ国王はイギリス人のお母さんです。一方、ハムザ王子は4人目のシリア系アメリカ人の奥さんがお母さんなのです。ですから、教育が違うのか性格が違うのか、どちらかと言うと「国民の声を聞きたい」という優しいのが、ハムザ王子です。ですから、反体制運動かどうかはわかりませんが、政府に厳しい人たちの集会に出たりしていた。それはそれでバランスが取れていいと思うのですが、それが国王の逆鱗に触れてしまったということでしょう。
飯田)なるほど。
宮家)結果的には、宮廷の一族ですから、話し合いでうまく解決したのだと思います。しかし、問題の本質は国民の苦しい生活です。それを改善して人々の不満を処理しないと、王政そのものが将来、大丈夫なのかと心配になります。ヨルダンが不安定な状態になれば、次には湾岸のアラブ諸国の中にも君主国家がありますからね。あちらはお金があるから、まだいいですけれども。
飯田)アラビア半島の真ん中ですものね。
宮家)という訳で、ヨルダンでは今回はこれで済んでよかったのですが、おそらくまだ国内にはガスが残っているでしょう。
飯田)失業率も高いですし。