東京都医師会理事で順天堂大学総合診療科教授の小林弘幸氏が5月27日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。サイトカインストームを防ぐことにつながる、免疫力アップのための仕組みについて解説した。
飯田浩司アナウンサー)先生はコロナで注目されている肺を、いまこそ鍛えるということを提唱されていて、アスコムから『最高の体調を引き出す超肺活』という本を出されていらっしゃいます。肺を鍛えるのは、いろいろなメリットがあるのですか?
小林)そうですね。基本的には血液の質がよくなりますので、全身の健康状態にも影響を与えます。血液の質がよくなると、自律神経も整って来ます。バランスが整えば、そこでまた血流がよくなって、全身の免疫力が高まるということです。今回は免疫について、皆さんに簡単なお話をさせていただければと思います。
体によくないものが入って来ると、まず初めに「自然免疫」チームがやっつけに行きます。そのうちだんだんと情報が入って来るので、こちらの防御機構が、(最初の一撃を入れる)ミサイルだけでなく、後ろに作戦部隊も出て来ます。それが「獲得免疫」チームになります。免疫細胞たちは何をしているかと言うと、そういうものが来て、お互いに知らせ合ったり相手を攻撃したりするときに、「サイトカイン」という物質を出すのです。そのように連絡を取り合っています。この連携がうまく行っているときは、免疫力が高いのです。
ところが、サイトカインがきちんとした量ならいいのですが、嘘の情報、または情報過多になると、免疫細胞自体が活性化し過ぎたり、勝手なことをしたりします。そうすると、体のなかで炎症が起きてしまって、いわゆる「サイトカインストーム」が起こります。皆さんもコロナ禍で聞いたことがあるかも知れませんね。亡くなるときにサイトカインストームが起きるというのは、免疫細胞の暴走が起きてしまっているのです。ですので重症化する方は、サイトカインストームが実際に起きてしまっていると考えてください。
飯田)暴走させないためには、どんなことをすればいいのですか?
小林)免疫力が高い方だと、サイトカインストームは起きにくいです。そのときに、初めて聞く言葉かも知れませんが、「制御性T細胞」というものがあります。「regulatory T cell」……専門家の間では「Tレグ」と呼ぶのですが、この細胞はみんなをうまくコントロールして、過剰反応を起こさないようにしてくれているのです。Tレグが減る要因としては、高齢、肥満、糖尿病、高血圧などがあります。これらに一致していることは、腸内環境が悪いのです。制御性T細胞は腸内にたくさんいるので、腸の環境が悪いとどんどん減ってしまって、免疫機能が不完全な状態になってしまうのです。
飯田)そうすると、腸内環境を整えなければいけない。そのためには、きれいな血液が必要だということですね。
小林)そうです。腸内環境の話なのですけれども、実は肺に結びついて来ます。腸内環境をよくするためには、質のいい血液を流さなければいけません。酸素が十分含まれている血液が流れて、初めて腸の活動ができるので、肺がよくない状態であれば、腸内環境も厳しくなるということです。
番組情報
医師が週替わりで登場。
飯田浩司アナウンサーと新行市佳アナウンサーが、健康に関する疑問や予防法、症状、治療法などを聞きます