安倍前総理に訊く~なぜ憲法改正が必要なのか
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(6月18日放送)に安倍晋三前総理大臣が出演。総理大臣在任時に悩み、実行したさまざまな事柄について語った。
なぜ憲法改正が必要なのか
安倍前総理が特別インタビューとして6月14日(月)~18日(金)のニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に毎日出演。ここでは憲法改正について訊いた。
飯田)憲法改正について、伺いたいのですが。
安倍)私は憲法改正について、平成29年に「9条の2項を残しつつ自衛隊を明記する」という改正案を世に訴えたわけです。いまは自民党が党内で議論をした結果、4項目のイメージ案をつくりました。そのなかで2項を残すということで、9条については自衛隊を明記しようということになりました。このコロナ禍にあって、自衛隊の皆さんはワクチンの大規模接種においてもテキパキと頑張ってくれています。評判はとてもいいと思います。また災害のときも命がけで頑張ってくれる。
飯田)そうですよね。
安倍)そして、日本という国は、日々、中国とロシアの両方の国から防空識別圏への侵入を受け、スクランブルしているわけです。中国とロシアの両方の国へスクランブルしている国は世界でも日本だけですから、大変なのです。命の危険もありますし、実際に命を落とした人もいます。百里基地から自衛隊機が飛び立って行きます。百里基地の滑走路の横に、「自衛隊は憲法違反」と書かれた看板が立ててあります。これは9条を守ろうという人々がやったことなのですが、まさにこれから命を懸けて飛び立って行こうという横に、そんな看板がある。この看板は自衛隊員の子どもたちや家族も見るのです。見て悲しい思いをします。
飯田)家族も。
安倍)なぜそういうことが起こっているかと言えば、憲法学者のなかで、「自衛隊は合憲」だと言い切ることができる人は3割前後しかいないのです。この状況に私は終止符を打たなければいけないと思います。教科書にも、「自衛隊の違憲論がある」ということが載るわけです。この状況に終止符を打たなければいけない。
飯田)そうではないと。
安倍)自衛隊はいまや、国民から最も信頼されている日本の組織になっています。「だから憲法改正など必要ないのではないか」と言う人もいます。しかし、それは自衛隊の皆さんが長い間、血のにじむような努力をして、彼らが勝ち取った信頼なのです。「いいではないか」と言っている人たちは、実は20~30年前は批判をして来た人たちが多いのだと思うのです。ですから今度は政治家がその責任を果たす番だろうと、この論争に終止符を打つべきではないかと思います。
国民投票法の改正案が成立
飯田)11日、憲法改正の手続きを定める国民投票法の改正案が成立しました。いよいよ中身に入らないといけないというところです。野党のなかには、「安倍さんが総理のうちは」とおっしゃっていた方もいらっしゃいました。
安倍)子どもっぽい主張だと思いますけれど。しかし、その主張もいまは使えなくなりましたよね。私は総理大臣ではないのですから。
飯田)ということは、平場できちんと議論をしてと。
安倍)そのために憲法審査会があるのです。税金を使って、議会の予算を使って存在するのですから、きちんとした仕事をするべきだと思います。
緊急事態では「私権の制限もあり得る」ことを明確にすべき
飯田)世論調査を見ても、「議論はするべき」という意見が多くなって来ています。
安倍)圧倒的だと思います。
飯田)憲法9条に関するものもあれば、このコロナ禍において「私権の制限が一切できない日本の憲法とはどうなのだ」という声も上がっています。そこはやはり使い勝手は悪かったですか?
安倍)いまおっしゃったように、私権を制限する上において、憲法上は公共の福祉に反するかどうかということを引きながら判断するわけです。ですから、ここから解釈を引いて来るということになります。そうすると、どうしても政府の法制局でも、いろいろな議論になります。与党内でも、大きな議論になってしまうのですね。公共の福祉に反するかどうかで読めるのか。
飯田)これだけの広範囲を「外にもう出るな」というようにロックダウンできるのだと、本当にそう読めるのかということですね。
安倍)そういうことです。もちろんあの当時は、野党は反対でしたから。いまは違うことを言っていますけれどね。当時は私権の制限などダメだと。この前の党首討論でもそう言っていましたよね。全員にPCR検査をするべきだなどと言っているけれど、「あなたたちは私権の制限になるからと反対していたのではないか」と。
飯田)菅さんが、おっしゃいましたね。
安倍)きちんと言いましたね。ですから、こういう緊急事態では、国民の生命安全を守るためには、「私権の制限もあり得る」ということを明確にすべきではないかと私は思います。
衆議院選挙を前に出ている安倍待望論
飯田)衆院選も近いということになります。安倍さん待望論も出ていますけれども。
安倍)もちろん衆議院選挙は、菅総理を中心に戦い抜かなければいけません。そう簡単なことではないと思います。やはり4年間、長かったですから。現在のコロナ禍の状況において、いろいろな不安や不満を持っておられる方もたくさんいらっしゃると思います。その方たちと政権与党は向き合わなければいけない。難しい選挙になると思いますが、コロナ禍を克服し、日本がV字回復し、アフターコロナの新しいあるべき姿をつくりあげて行く上においても、選挙は何としても勝ち抜かなければいけないと思っています。
飯田)いろいろな議連が立ち上がっています。安倍さんはいろいろなところで最高顧問などをやっていらっしゃる。アフターコロナを睨んで政策をきちんとするというところもあると思いますが、いろいろな場所で名前が出ると存在感も出て来ますけれども。
安倍)そういう年齢に達したのかなと思います。
飯田)そういうことですか。
安倍)いろいろなことで議連をつくり、政策を推進して行くテコにしようという皆さんに対して、お手伝いが少しでもできればと思います。
主要国で何十年も憲法改正をしていない国はない
飯田)核心の部分は、憲法についてというところでしたけれども。
外交評論家・宮家邦彦)これだけの大きな主要国で、何十年も憲法改正を1度もしていない国などないわけです。世の中は変わるから、当然どの国も憲法を変えて行くわけです。日本で変わらないのはなぜなのだろう。それを議論すべきだというのは、正論中の正論だと思います。逆に言うと、そういう議論をしなくても平和だったのです。
飯田)いままでは。
宮家)安保政策のパラドックスという言葉があります。安保政策が成功すればするほど、その必要性が理解されにくくなることです。結局、今の日本はそうした状態で、議論は全部入り口論ではないですか。けれど入り口論で済む時代が終わってしまったと考えたのなら、「こんなことでは、とてももたない」という危機感を持つ人が出るのは当然だと思います。私もその1人です。
戦争を起こさないために、必要であれば憲法も変えなくてはいけない
飯田)宮家さんにお話を伺って、地球全体で見たところのホットスポットがどこかというところで、かつて冷戦時代は欧州が正面であった。そこから中東に移った。その正面がまさにいま東アジアに来ようとしている、あるいはもう来ているのかも知れない。そう考えると遠くに正面があったときには、この体制でよかったかも知れないけれど、いまは変わらなければいけないかも知れない、ということです。
宮家)そういうことです。私は中東が長かったので、戦争がどういうものかわかっているつもりです。理屈ではない酷いものですよ。
飯田)理屈ではない。
宮家)ああいうことを絶対にもう1度起こしてはいけないからこそ、我々は必要な力を持って抑止をしなければいけない。そのためには、必要であれば憲法も変えなくてはいけない。当たり前のことだと思うのですけれど、何十年も、それが当たり前ではないのです。改正を決めろと言っているのではなく、「議論をしましょう」と言っているのですから、議論くらいしてください。
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