1世帯が1年間に捨てている食べ物は「6万1000円」

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黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「あさナビ」(7月6日放送)に食品ロス問題ジャーナリストの井出留美が出演。日本における「食品ロス」の問題について語った。

減らそう食品ロス コンビニ弁当などの廃棄食品 2020年07月15日 写真提供:共同通信社

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黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「あさナビ」。7月5日(月)~7月9日(金)のゲストは食品ロス問題ジャーナリストの井出留美。2日目は、世界が、そして日本が抱える食品廃棄物の問題について---

黒木)世界では食品ロスはどのくらいになっているのでしょうか?

井出)世界では13億トンの食品が毎年捨てられています。これは、つくっている量の3分の1を捨ててしまっている状況です。

黒木)日本ではどのようになっていますか?

井出)日本では1年間で600万トンなのですが、東京都民が1年間に食べる量だと言われています。

黒木)捨てられているということに関して、どのように受け止めればいいのでしょうか?

井出)日本のなかにも、世界のなかにも、食べたくても食べられない人がいます。お金がないと、食べ物は手に入れられません。そのようなことに思いを馳せるということでしょうか。2021年の秋にノーベル平和賞を受賞した「国連WFP」という団体があるのですが、彼らが1年間に寄付をしているのが420万トンです。ということは、世界の人たちに寄付している量の1.5倍を日本のなかで捨てているのです。

黒木)600万トンの食品ロスは意味がないですよね。

井出)現在、日本の食料自給率が38%です。地球上の遠くの国からも食べ物を運んで来ています。お金をかけて、エネルギーもかかりますし、環境にも負担をかけている。それでいて捨てているということです。

黒木)本末転倒な話ですね。

井出)これはとても恥ずかしいことです。「もったいないの国」だったはずなのですが、そのような現状になっています。

黒木)やはり食品ロスというのは、世界的な問題になっているのでしょうか?

井出)そうですね。SDGsということで、スーパーやコンビニなど、そして家庭で捨てるものを、「2030年までに半分にしましょう」という目標が定まっています。

黒木)家庭からの食品ロスについては、「出している」という意識がないのですが。

井出)意識はなくても、意外と出しているのです。京都市には「始末する」という、「ものを大切にしてお金を使わない」という風土もあって、全国の政令指定都市のなかでも最も家庭ゴミが少ない都市です。そこでも、1世帯が1年間にどれくらいの食べ物を捨てているかというと、平均で6万1000円捨てているのです。

黒木)少ないところでも。

井出)最も少ない京都でも。食べ物を処理するのにもお金がかかるので、6万5000円分捨てていることになって、もし、それが仮に日本中で起こっていたら、11.1兆円捨てているということになります。それも家庭だけの話なので、企業も足したらもっと膨れます。

黒木)そうなのですね。一言では言えないと思いますが、大きな原因となっているのはどのようなことがあるのでしょうか?

井出)法律ではないのですが、1つ挙げるとすると、欠品が許されないということです。商品メーカーが品切れを起こすと、コンビニやスーパーの方が「おたくのメーカーとは取引を停止しますよ」ということになってしますので、多めにつくらなければならない。それがまず1つ背景としてあります。

黒木)欠品しないために。

井手)家庭で言えば、安売りにつられて買ってしまったとか、食べられるのに捨ててしまったということがあります。私も長らくやっていたのですが、ナスを切るとき、まな板の上に置くではないですか。そして垂直に包丁を入れる、ということをやっていたのですが、ある料理研究家の方に聞いたら、ゴボウのささがきのような感じで、斜めに身に沿わせてヘタを取れば、食べられる部分が多くなるのです。そのようなことを「過剰除去」と言って、食べられるのに捨ててしまっていることが案外多いのです。

黒木)大根の葉っぱのような。

井出)大根の葉っぱも、刻んで炒めれば美味しいのですが、捨ててしまったりしてしまう。いまのコロナ禍ですと、買い溜めをする人が増えたので、たくさん買ってしまって食べきれないので処分してしまうということがあります。

1世帯が1年間に捨てている食べ物は「6万1000円」

井出留美(いで・るみ)/ 食品ロス問題ジャーナリスト

■株式会社office 3.11代表取締役。
■奈良女子大学食物学科卒。博士(栄養学/女子栄養大学大学院)修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。
■ライオン、青年海外協力隊を経て、日本ケロッグ広報室長などを歴任。
■東日本大震災での食料支援で食料廃棄に衝撃を受け、自らの誕生日であり、東日本大震災の発生日でもある3月11日を冠した「(株)office3.11」を設立。食品ロスの問題を訴え、2019年施行の「食品ロス削減推進法」成立に協力。
■政府・企業・国際機関・研究機関のリーダーによる世界的連合Champions12.3メンバー。
■食品ロスを全国的に注目されるレベルまで引き上げたとして、第二回食生活ジャーナリスト大賞食文化部門、Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018、令和2年度 食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞を受賞。
■著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか』『捨てられる食べものたち 食品ロス問題がわかる本』など。

番組情報

黒木瞳のあさナビ

毎週月曜〜金曜 6:41 - 6:47

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毎朝、さまざまなジャンルのプロフェッショナルをお迎えして、朝の活力になるお話をうかがっていく「あさナビ」。ナビゲーター:黒木瞳

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