林芳正氏 VS 河村建夫氏 ~衆院山口3区の“戦争”に安倍前総理が絡む歴史的な理由

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(7月15日放送)にジャーナリストの鈴木哲夫が出演。来年夏の参議院選挙の自民党の候補者決定について解説した。

林芳正氏 VS 河村建夫氏 ~衆院山口3区の“戦争”に安倍前総理が絡む歴史的な理由

参院本会議に臨み、林芳正農水相(左)と言葉を交わす安倍晋三首相=2014年5月14日午前、国会・参院本会議場 写真提供:産経新聞社

自民党、来年夏の参議院選挙の候補者46人を決定

自民党は7月14日、選挙対策本部会議を開き、来年夏の参議院選挙の第1次公認候補として、選挙区29人、比例代表17人の計46人を決定した。

飯田)参院選ももうすぐなのですね。

鈴木)もう1年前ですからね。本当なら「参院選に向けて1年を切った」と騒ぐところです。でもその前に、衆議院が任期ギリギリまで来て、そちらが先にありますから。

飯田)そうですね。

鈴木)しかもこの2つは連動します。自民党のなかで総選挙の結果がよくなければ、来年(2022年)の参議院に向けて体制を立て直すとか、党内政局で菅下ろしが始まるとか、そんな話になる可能性があります。

選挙区調整のため衆議院と参議院のバーターも

鈴木)小選挙区になってからですが、選挙区調整があります。そうなると、参議院のバーターのようなものが出て来るわけです。衆議院で「参議院に回ってくれないか」など。衆議院でうまく調整して、遠慮してもらった派閥に「参議院では手厚く」とか、そういうリンクもあるのです。

飯田)一帯での調整という。

鈴木)そう位置付けていい。今回の場合はより間が短いので、衆議院総選挙と参議院選挙でリンクする部分がいろいろ出て来ることになると思います。

候補者の調整では二階派がほとんど絡んでいる

飯田)候補者調整の部分で、いろいろな選挙区が取り沙汰されますが、だいたい幹事長派閥である二階派が絡んでいるという。

鈴木)ある二階派の候補のところに他の自民党の派閥が「手を挙げたい」と言うと、二階派が現職であれば「いやいや、現職が優先だ」と言う。二階派が現職でない場合は「いや、話し合おう」とかね。

飯田)あるいは公認せずに立てて、あとから勝った人を追加公認しますとか。

鈴木)「二階さんは、自分の派閥に都合のいいようにやっているのではないか」という批判が出ているということです。

小選挙区になって調整が必要になった

鈴木)古い話かも知れませんが、中選挙区時代には、自民党のある種の伝統がありました。あのころは中選挙区だから、派閥ごとに自民党の当選者がいたでしょう。「自民党の公認が欲しいなら、まず無所属からでも挑戦して来い」と。それで、下克上ですよ。「勝ったらお前が自民党だ」というような。それは健全な競争だと思います。そういう伝統が自民党にはあったのです。しかし、小選挙区になると、要するに1人でしょう。2人立ってもいいけれど、自民党で2人立ってしまうと保守票が割れて、野党がスッと上がって来るということになる。そうなるとやはり、各選挙区の公認は1人ということでやらなければいけない。小選挙区になってそういう調整が出て来て、これが厄介な感じになっていると思います。

林芳正氏 VS 河村建夫氏 ~衆院山口3区の“戦争”に安倍前総理が絡む歴史的な理由

記者会見で質問に答える自民党の二階幹事長(右から2人目)=2021年6月22日午前、東京・永田町の党本部 写真提供:共同通信社

山口3区~林芳正氏と現職の河村建夫氏の戦いになるが

鈴木)最大の注目は、「二階派の議員とそうでない人をどうするか」という見方もあるけれど、個人的には山口3区の林芳正さんが……。

飯田)参院から鞍替えで出るぞと。

鈴木)いまの現職は河村建夫さんですよね。

飯田)元官房長官。

鈴木)河村さんは二階派です。

飯田)二階派の重鎮でもあるという。

鈴木)現職、重鎮。そこに林さんが来る。「林なんか公認しないぞ。現職優先ではないか」という感じで二階さんは脅しをかけているわけです。でも、「二階派VS林芳正」に見えますが、林さんはもともと宏池会です。

飯田)もともと宏池会で、いまは岸田派ですね。

「林VS安倍」という伝統的な戦い~林芳正氏にとって総理を目指すラストチャンス

鈴木)そういう視点の対決ということではなく、私は林さんの選挙区の鞍替えというのは、「林VS安倍」だと思うのです。これは伝統的なのだけれども、私はテレビ西日本の記者をやっていたのですが、そのときは山口県を半分カバーしていたのです。

飯田)山口も入りますよね。

鈴木)当時はまだ中選挙区のころでしたが、選挙を山口で取材したとき、安倍さんのお父さんである「安倍晋太郎さん 対 林義郎さん」ですよ。林義郎さんは林芳正さんのお父さんです。地元を二分する、ものすごい戦いだったのです。本来そういう流れがあるなかで、林芳正さんは、もちろんお父さんである義郎さんの流れなのだけれど、参議院ですよね。そうすると、総理を狙えないわけです。

飯田)事実上ね。

鈴木)だから、「衆議院にいつか鞍替えする」ということがずっと頭にあった。ところが、安倍さんが強い。山口はそれほど選挙区は多くないのだけれども、他の選挙区は安倍さん側が獲っている。そういうなかで、なかなか鞍替えができなかった。公認されなかった。だから、林さんは河村さんに勝つとか、二階さんに勝つのではなくて、「総理を目指すラストチャンス」ということで決意したのだと思います。「河村 VS 林」という構図よりも、「安倍 VS 林」という構図で、党内のどのような力学が展開されるのかという、少し違う見方をしています。安倍さんは総理もやったのだし、これからいろいろな意味で活躍するのかも知れませんが、世代交代ということで考えると「次は、林さんが頑張れよ」となるのか、あるいは伝統的な「安倍家 対 林家」の……。

飯田)また争いがあるのか。

最終的に二階幹事長が調整をすることに

鈴木)それが続くのか。そこに二階派と河村さんが絡んで来る。河村さんはずいぶん骨のある人で、日韓議連でも裏方でやって来ているのです。

飯田)議員外交のようなところで。

鈴木)そういう意味では、河村さんも人材としてはいい。いろいろと調整が必要な選挙区があるけれども、やはり、最後に二階さんが調整するのではないかと思います。ポイントは、今回の国勢調査で、この次の次の選挙は選挙区が変わるのです。

飯田)そうですね。

鈴木)増えたり減ったりします。都市部は増えるのです。例えば、「今回は我慢してくれ」と。「今回は比例に回ってくれ。その代わり、次に選挙区が増えるので、そこでお願いするから」という可能性もある。そういうことも全部絡んでの調整を、二階さんが頭のなかでする可能性もあります。自民党は総選挙が厳しい流れとなっていますから。

飯田)そうですね。1議席でも守りたいという。守りの選挙だと。

鈴木)保守が強いところではあるけれども、保守分裂になるとわかりませんから。

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