ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月26日放送)に政策研究大学院大学教授で政治学者の竹中治堅が出演。8月25日に行われた記者会見で、アフガニスタンに残る在留邦人や大使館職員に関して、安全な出国を最優先するとした菅総理の発言について解説した。
菅総理、アフガニスタンの在留邦人について、安全な出国を最優先と発言
菅総理大臣は8月25日の記者会見のなかで、アフガニスタンに残る在留邦人や大使館職員に関し、「安全な出国を最優先し、既に現地に派遣した自衛隊機を活用しながら対応して行く」と強調した。
自衛隊機のアフガン派遣~反発は野党からもなかった
飯田)日本時間25日夜に、自衛隊のC130輸送機2機がパキスタンの首都イスラマバードに到着しました。退避を求める人の輸送に当たるということです。どうご覧になりますか?
竹中)「やるべきことはやるのだ」ということで決めたのだと思います。また、興味深いのが、自衛隊をこのように使うことに対して、「国外に派遣するとは何ごとだ」という議論がまったく起きていないことです。我が国も普通になって来たなという印象がありますね。
飯田)かつてPKOでカンボジアに自衛隊を派遣するときは、港まで反対運動の方が押し寄せたこともありました。ここ20年~30年ほど、国際協力をどうするかという議論は続いて来たのですが、その辺がだいぶ浸透して来たという感じですか?
竹中)外国であれば、自国民の救出のときには、空軍機が行きます。湾岸危機のときは、日本は「出す、出さない」という議論になって、民間の日本航空にお願いする、しないと揉めていたことがありました。いまや「スッ」と出せて、オペレーションやマニュアルなどもしっかりとできていると思いますし、変わったなという気がします。それに対して野党の反発も今回はまったく聞かないですし。
海外への自衛隊派遣にある程度慣れて来た
飯田)アフガニスタンへの関わり合いという部分でも、テロや戦争があり、日本がどのようにアプローチするのかということも、既にあの当時から議論がありましたよね。
竹中)いまもソマリア沖の海賊対策に航空自衛隊も出ているはずですから、自衛隊を海外へ派遣するということに慣れて来ている。それでも、対テロ戦争に海上自衛隊の護衛艦や輸送艦を送ることに比べれば、リスクが低い話ですよね。その意味では、「ああそうなのか」という感じで皆さん、受け止めているような気がします。
飯田)ここも最高指揮官は内閣総理大臣で、という組織的な建て付けになっています。その間に防衛庁から防衛省に格上げになったというような組織の変更も一部あり、政府全体として安全保障の比重のようなものが高まって来ている部分があるのでしょうか?
竹中)そうですね。それから、意思決定がしやすくなっているのではないかと思います。内閣官房に国家安全保障会議(NSC)もできましたし、その下に国家安全保障局(NSS)ができた。そして、そこに防衛省と外務省の人が常に出向しています。事実上、総理と官房長官と外務大臣と防衛大臣が常に意思疎通をしているので、意思決定が昔に比べて遥かに決めやすくなっているのではないかと思います。
今回は「ただの輸送」ということで問題はない~どれほどのアフガニスタン人を国外移動させて、どのくらいの人を日本に受け入れるのか
飯田)あとは安全にというところですが、憲法の制約があるため、どこまで活動できるか、本当に現地が安全かどうかなどということが国会でも問題になる場合がありますが。
竹中)アフガニスタンに関しては、紛争が起きているわけではなく、「ただの輸送である」ということで問題はないと思います。アメリカなどは大量にアフガニスタン人を移動させています。ツイッターの写真でも、600人ほどアメリカの輸送機に乗せているのが話題になっていました。日本もどれほどアフガニスタン人を国外へ移動させるのか、また、日本国内にどれだけ受け入れるのかということが、今後の課題になるのではないでしょうか。受け入れたあと、その方々の処遇をどうするのかということは、大きな課題になるのではないかと思います。
日本に協力したアフガニスタン人を受け入れるべき~どのように生活基盤を用意するかは今後の課題
飯田)新しく、かつ古い課題だなと思うのは、ベトナム戦争のあとに「ボートピープル」という形で逃げ出した人たちを、「日本はどうするのだ」という話になりました。あのときは議論になったけれども、その後は沙汰止みになってしまった。日本はそれを繰り返している感じもありますが、やはり受け入れを人道的な面でもやるべきなのでしょうか?
竹中)彼らが恐れているのは、「外国に協力したので、タリバン政権に迫害されるのではないか」ということです。タリバンのスポークスマンは、「恩赦を出すから、気にしないで国内に残ってください」と言っていますが、あの空港への集まり方を見ると、カブールかアフガニスタン、他の地域の人もいるのだと思いますが、相当恐れていますよね。
飯田)そうですね。
竹中)日本も対テロ戦争でタリバンを攻撃する側に回ったので、日本に協力したアフガニスタン人は迫害される可能性もあります。日本がそのように見られているのであれば、「日本に協力したアフガニスタン人を見捨てるわけにはいかない」という道義上の責任があるので、受け入れる。受け入れたあと、どのように生活基盤を用意するのかということは、いままで大量に受け入れたことがないので、今後の課題だと思います。
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