【Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね 第1014回】
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。
今回は、9月10日公開の『浜の朝日の嘘つきどもと』と『先生、私の隣に座っていただけませんか?』をご紹介します。
映画館で観たい!『浜の朝日の嘘つきどもと』~小さな“嘘”をついてでも、オンボロ映画館と未来を守る!
実在する映画館を舞台に、古き良き名画座の存続に奔走する女性の姿を描いた映画『浜の朝日の嘘つきどもと』。
本作は、2020年10月に放送されたテレビドラマ版の、前日譚にあたるオリジナルストーリー。映画への熱い愛が、スクリーンを彩ります。
『浜の朝日の嘘つきどもと』のあらすじ
福島県南相馬市にある映画館、朝日座。100年近い歴史を持ち、主に旧作映画を上映する名画座として地元住民に愛されていたが、最近ではシネコン全盛の流れに逆らえず、経営は厳しくなるばかり。
支配人の森田保造はサイレント映画をスクリーンに流しながら、ついに閉館を決意する。しかし、35mmフィルムを一斗缶に放り込んで火を点けた瞬間、森田の背後から缶に水をかけて邪魔する女性が現れた。茂木莉子と名乗るその女性は、経営が傾いた朝日座を立て直すために東京からやって来たと言う。
朝日座の閉館はすでに決まっており、打つ手がないと話す森田。しかし莉子には、ここを決して潰してはならない“ある人との約束”があった……。
『浜の朝日の嘘つきどもと』のみどころ
主人公・茂木莉子を演じたのは、映画・テレビドラマ・舞台と幅広く活躍する高畑充希。大胆な行動とは裏腹に繊細な心情を併せ持つ人物像を、持ち前の演技力で丁寧に表現しています。
朝日座の支配人・森田保造役に人気落語家の柳家喬太郎、莉子の高校時代の恩師・田中茉莉子役に大久保佳代子を起用。高畑充希との息の合った芝居は必見ですよ。
メガホンを取ったのは、人間臭いキャラクターを魅力的に描くことで定評があるタナダユキ監督。映画館にまつわる人々の人間模様を、軽やかに、そして温かみのある描写で映し出しています。
劇中では、D.W.グリフィス監督によるサイレント映画『東への道』や、ホアン・シー監督の『台北暮色』をはじめとした映画本編の一部が使用されていたり、映画好きにはたまらない作品タイトルや俳優の名前が随所に散りばめられていたりと、映画ファンにとっては登場人物たちと“映画談義”をしているような気分を味わえるのも一興。
映画愛と、映画館愛と、人間愛に満ち溢れた、これぞスクリーンで堪能したい1作です。
コチラも映画館で観たい!『先生、私の隣に座っていただけませんか?』~驚きに満ちた、新たな夫婦映画の快作
主人公は、結婚5年目の漫画家夫婦。夫の浮気を見透かしたかのように“不倫”を題材としたコミックを描く妻。そして、そのコミックの存在を知ったことで精神的に追い詰められて行く夫。彼らの関係性をユーモラスに描いた『先生、私の隣に座っていただけませんか?』。
夫婦のウソとホンネが交錯する展開は、ミステリアスにしてスリリング。二転三転するストーリーに“振り回される”感覚が、何とも痛快! 新しいタイプの復讐エンターテインメントです。
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『浜の朝日の嘘つきどもと』
2021年9月10日(金)から全国ロードショー
出演:高畑充希、柳家喬太郎、大久保佳代子、甲本雅裕、佐野弘樹、神尾佑、竹原ピストル、光石研、吉行和子
脚本・監督:タナダユキ
音楽:加藤久貴
主題歌:Hakubi「栞」(unBORDE)
制作プロダクション:ホリプロ
配給:ポニーキャニオン
(C)2021 映画『浜の朝日の噓つきどもと』製作委員会
公式サイト https://hamano-asahi.jp/
『先生、私の隣に座っていただけませんか?』
2021年9月10日(金)から全国ロードショー
出演:黒木華、柄本佑、金子大地、奈緒、風吹ジュン
脚本・監督:堀江貴大
劇中漫画:アラタアキ 鳥飼茜
音楽:渡邊琢磨
主題歌:「プラスティック・ラブ」 performed by eill
配給:ハピネットファントム・スタジオ
(C)2021「先生、私の隣に座っていただけませんか?」製作委員会
公式サイト https://www.phantom-film.com/watatona/
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/