ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月10日放送)に自民党・甘利税制調査会長が出演。日本の未来についての提言をテーマにしたインタビューに回答した。
なお、このインタビューは菅総理が総裁選出馬断念を表明する前に行われたもの(9月1日収録)で、ここではマイナンバーカードのデジタル活用、また将来へ向けた日本の技術のグローバル化についての話が中心となっている。
日本には個人を証明する公的な仕組みがない
飯田)コロナ禍において、給付金を出そう、マイナンバーを使おうという声が上がりました。しかし、「法律でこっちには使えないから」などと、ある意味での使い勝手の悪さが露呈しました。その辺り、甘利さんも感じるところがあるのではないですか?
甘利)とても感じますよ。私はマイナンバーカード担当大臣でしたから。
マイナンバーカードがなぜ必要か~個人を証明できるものがなければキャッシュレス社会は動かない
甘利)マイナンバーがなぜ必要かと言うと、日本には自分を証明する公的な仕組みがないのです。郵便局に行って書留を受け取るときに、「免許証を出してください」と言われたとします。私は免許証を持っていますが、免許証を持っていない人は何を出すのでしょうか?
飯田)「免許証を」と言われると困ります。
甘利)マイナンバーカードというのは、全国民が、日本国政府が、「これは私です」という証明書ですから、それを全国民が持つということは当たり前のことなのです。データ社会やデジタル社会の「一丁目一番地」というのは、「私以外私ではない」ということを証明できることなのです。それがなければ電子社会、キャッシュレス社会は動きません。
ようやくマイナンバーカードに保険証が搭載へ
甘利)ところが野党は理屈をつけて反対して、その結果が現在の状況ではないですか。「給付金が届かない、けしからん」ということは、上を向いて言ってください。自分に返って来るからと。「私が担当大臣でどれだけ苦労したのか知っていますか」ということです。
飯田)俺の苦労を知っているのかと。
甘利)当時から、「マイナンバーカードを普及させるために、キラーコンテンツを載せろ」ということが言われていました。キラーコンテンツというのは、絶対に必要なコンテンツです。いちばんいいのは、保険証と免許証です。保険証と免許証がデータに載っていれば、いつも持って歩くでしょう。ようやく2021年10月から保険証が搭載されるようになります。免許証も遅れて来ます。日本の官庁というのは、「所管は自分のものだ」と離さないのです。免許証は警察庁が手放したくない。保険証は厚労省が手放したくない。
創薬大国であった日本がなぜ新型コロナワクチンを開発できないのか
飯田)世論調査を見ても、日本を取り巻く環境が厳しくなっているなかで、甘利さんは次の世代にどのような日本を残そうと考えているのでしょうか?
甘利)「日本はこんなものではない」という思いをずっと持っています。新型コロナワクチンで日本が後手に回って叩かれています。私がTPPをやったときに、バイオ医薬品の特許期間の問題で、「期間をどれくらいにするのか」ということについて、最後までまとまらなかったことがありました。
飯田)TPPのときに。
甘利)薬をつくっている国からすれば、開発資金を回収できるので、特許期間が長い方がいいのです。しかし、薬をつくる力のない国は、早く特許が切れてくれた方が、薬を使えます。特許期間を長く持ちたいのと、「できるだけ短くしてくれ」という意見の戦いなのです。
飯田)相反する立場の。
甘利)TPPのなかで創薬力がある国は、アメリカと日本だけだったのです。「そんな創薬大国の日本で、なぜワクチンができないのだ」ということが、私のフラストレーションでした。自分はTPPで創薬側に回って調整をしていたのに、この現状はどうしたのだと。
技術で勝ってビジネスで負ける日本の「負のお家芸」~インターネットと携帯をつなげたのも日本の「iモード」
甘利)私がずっと思っていたことは、「世界を変えたようなものは、もとを正せばすべて日本ではないか」ということです。最近の例ではスマホです。携帯電話とインターネットを世界で最初につなげたのは日本なのです。NTTドコモの「iモード」です。あれは限定的なつながり方でしたが、世界で初めて、電話とインターネットをつなげたものです。他にも、「もとを正せば日本なのではないか」ということはたくさんあります。
ジャパン・アズ・ナンバーワン・アゲインを実現してみせる
甘利)昔から言われていますが、技術で勝ってビジネスで負ける。これは日本の「負のお家芸」なのです。発想して理屈を発表しながら、ビジネス化で負ける。それをわざわざ使っている。技術開発、イノベーションだって「こんなものではないぞ」という思いで、野党のときから10年間かけて仕組みをつくって来ました。絶対に「“ジャパン・アズ・ナンバーワン・アゲイン”を実現してみせる」と言ってやっているチームがあるのです。産業政策に補助金をつければ、ということではありません。お金が活きるようにしなければいけないと思うのです。
飯田)お話を聞いていると、夢のようなものがうかがえます。
甘利)「日本はワクチン開発も含めてこんなものではないぞ」というのが、私のタイトルです。
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