政治ジャーナリストの田崎史郎氏は9月29日、ニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」(スペシャルパーソナリティ:吉田尚記アナウンサー)に電話出演し、自民党総裁選の結果と今後についての分析を語った。
おととい岸田氏や安倍氏と会った二階氏が、河野氏に行くはずの票を流した
菅総理大臣の後継を選ぶ自民党総裁選挙は今日9月29日投開票が行われ、岸田文雄氏が決選投票の末、河野太郎氏を破り、自民党新総裁に選出された。
吉田)今日1回目で1票差で岸田文雄さんが1位だったではないですか。そして2位が高市(早苗)さんで、3位が河野さん、4位が野田(聖子)さんという結果になって、この瞬間が今日のハイライトだったといいますか、みんながわっ!と思った瞬間だと思うのですが、田崎さんのこの時のご感想はいかがなんでしょうか。
田崎)岸田さんの国会議員票が多くて河野さんの国会議員票が少なかったんですね。高市さんも多かったんです。20票から30票が動いているんです。河野さんから岸田さん、あるいは高市さんに。これが何なのかってことなんですね。
吉田)これは何ですか。
田崎)二階派の動きじゃないかなと思いますね。
吉田)それはどんな動きなんでしょうか。
田崎)二階派は、当初河野さんに投票する人が多いだろうと思われたんですけれども、その河野さんに行くべき票が岸田さんあるいは高市さんに流れたんじゃないかと思われますね、これは。
吉田)選挙のことだけ考えると国民の人気の高い河野さんの方がいいんじゃないかと言われていたわけじゃないですか。でもこれから選挙を迎える議員たちが岸田さんや高市さんに流れた理由は何ですか。
田崎)確かに河野さんの人気は高いんですけれども、この自民党総裁選を行ったことによって、自民党の支持自体が広がっている。増えているんですね。そうすると、河野さんでなくても、他の方でも自民党の議席がやっぱり伸びるんじゃないかと思う人が多かったんですね。総裁選を行うことによって自民党の支持率が上がった。それによって河野さんでなければならないというものが、比較的小さくなったんじゃないかと思います。
森田耕次解説委員)二階(俊博)さんは、岸田さんが党改革を訴えましたので、当初は岸田さんだけは何としても落とすと言うような方向だったんですが、ここが変わってきたということですよね。
田崎)そうです。今取材中なんですけれども 一昨日の時点で 二階さんが岸田さんらと会った、また二階さんは安倍(晋三)さんらとも会ったというんですね。その中で、感情的なものではなくて「勝ち馬に乗る」ことを優先したんじゃないかなと思いますよ。
吉田)確かに今回、政策論争っていうのをオンラインでちゃんと見られたのって、歴史上初めてじゃないかなと思うんですね。
田崎)そうですね。
吉田)見ると「なるほどこんなこと考えてるんだ」って4人それぞれについて結構思いましたから。
田崎)そうですね。その点では、やっぱり自民党のPR効果……私はこれ、総裁選というのは自民党を再活性化させる巨大な装置だということをかねてからずっと申し上げているんですけれども、それに自民党は成功したんですね。成功した結果、河野さんでなければならない理由も小さくなっていた。二階さんにすれば、岸田さんにはさせたくない、自分を追い落とした岸田さん許せないという気分だったんですけども、その感情を優先してますと非主流派になって、ポスト面で冷遇される可能性があるわけですよね。それならば、最後の最後は勝ち馬に乗って主流派として活動しようと、おそらくそういう話し合いが一昨日行われたんじゃないかと思われます。
人事で「新しい自民党」を出せないとかえって苦しくなる
吉田)党役員人事は、田崎さんはどうなると思われますか。
田崎)まずこの今回の人事は、党役員人事を週内に行って週明けの4日に閣僚人事、組閣が行われるんですが、まず岸田さんが他の候補者3人をどういうポストで処遇するか。これは4人とも処遇するってことを言われてたので、そこで幹事長、政調会長、総務会長あるいは選対委員長でその2人を処遇するのか閣内で処遇するのかってことになりますよね。
森田)選挙が近いですから、明日の執行部の人事の幹事長で二階さんの代わりに誰を充てるのかというのはおそらくかなりポイントだと思うんです。例えば幹事長代理の林幹雄さんは二階派ですから、二階さんに近い人をそのまま幹事長にしてもうすぐ選挙だと言うような形にするのか 、あるいは国会対策委員長も森山裕さん、石原派ですが二階さんと近い森山さんをそのまま残すのか、その辺ちょっと注目じゃないですか。
田崎)それは、今の執行部の人たちよりもやっぱり、「刷新した」と、「変わった」と。「新しい自民党、岸田自民党の姿はこうなんだ」ということを示すようになるだろうと思います。
森田)そこをやっぱり変えていかないと、新しさを出せないと。
田崎)総裁選で、自民党、確かに盛り上がりました。ただ人事で結果を出さないと、今度は自民党はかえって苦しくなりかねないので、やっぱり刷新感を強く出す人事になるだろうと思います。
吉田)では、刷新感は出すだろうというその先には、衆議院議員選挙があるわけなんですけれども、岸田さんになった自民党の選挙のポイントってどこなんですか。
田崎)どれくらいの議席取れるかってことですよね。菅さんがああいう形で事実上の退陣をせざるを得なかった背景には、8月21~22日で自民党が内々に行った選挙情勢調査がありまして、それによると自民党は単独過半数233を割るどころか200議席を下回って公明党を足しても過半数を取れないんじゃないかと、そういう厳しい結果だったんです。それが今回の総裁選でガラッと雰囲気変わりまして、単独過半数くらいは取れるんじゃないかという見方に変わってきているんです。人事で「これは変わったんだな」と、「岸田自民党はこういう形なんだ」と思わせることができれば、議席はもうちょっと伸びる可能性があります。国民がこの関心を持って見た総裁選が終わって じゃあこれが具体的にどんな形になって現れるんだろうというような目で見ているんですね。それに岸田さんがどういう球を打ち込むかなんです。
吉田)田崎さんが思われる、どんな方が入ったらいいと思われる条件のようなものはありますか。
田崎)条件は、やっぱり「あ、変わったな」という感じを与えられる人です。
吉田)今までの人ではないぞという。
田崎)そうです。幹事長に二階さんや二階さんに近い人を充てるとかそういうことではなくて、まったく新しい人を据えるようになるだろうと思います。
増山さやかアナウンサー)リニューアル感がある感じで。
吉田)そう考えると、今この瞬間、その候補になっている人たちは今一番やきもきしているんでしょうね。
田崎)もしかしたら、もうその人のところに話が行っている可能性もありますけどね。
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[アシスタント]増山さやかアナウンサー(月曜日~木曜日)、飯田浩司アナウンサー(木曜日のみ)