「駅弁」食べ歩き20年・5000個の放送作家・ライター望月が、自分の足で現地へ足を運びながら名作・新作合わせて、「いま味わうべき駅弁」をご紹介します。
平成11(1999)年から磐越西線・新津~会津若松間で運行されている快速「SLばんえつ物語」号。普通車に加え、グリーン車や展望車が連結されたバラエティ豊かな編成が魅力の1つです。会津若松行の始発駅・新津では、列車の発車に合わせ、いまも駅前に工場を構える駅弁屋さんが立ち売りを行い、大いに賑わいます。なかでも人気は「SLばんえつ物語」の名を冠した駅弁。2021年秋、新津のSL駅弁に待望の新作が登場しました。
懐かしいSLの旅で味わう新作駅弁(第2回/全3回)
新潟都市圏の一部・五泉市内を流れる早出川を、磐越西線の「SLばんえつ物語」号が渡って行きます。快速「SLばんえつ物語」は、例年、春から秋の週末を中心に、磐越西線の新津~会津若松間を1日1往復しています。C57形蒸気機関車の180号機が、レトロ調にリニューアルされた7両の12系客車を牽引する様子は、いつ見ても美しいもの。架線のない非電化区間を走るのも、空が広く、すっきりとした風景で旅情を誘いますね。
「SLばんえつ物語」の車窓の友は、何と言っても阿賀野川(阿賀川)。列車が運行されている磐越西線・新津~会津若松間には、「森と水とロマンの鉄道」という愛称があり、いっぱい水を湛えた川を横目に、深い森のなかを煙を上げて、蒸気機関車が力強く走り抜けて行く風景は、鉄道旅のロマンをかき立ててくれます。新津から会津若松まで乗り通すと、3時間半のゆったりとした汽車旅が楽しめるのも嬉しいですね。
列車の運行開始以来、SL駅弁を作り続けている新津駅弁・神尾弁当部が、今年(2021年)9月1日から新たなSL駅弁を登場させました。その名もスバリ「SLばんえつ物語」(1480円)。新たに作られたSLの釜をイメージしたという黒い円筒形の容器には、C57形蒸気機関車の180号機の写真が入った帯が掛けられています。神尾弁当部によると、旅の思い出に持ち帰って再利用してもらえるよう、容器にはこだわったと言います。
【おしながき】
・酢飯(きゃらぶき、山せり)
・鮭の塩焼き
・鶏の照り焼き
・いくらの醤油漬け
・錦糸玉子
・煮物(雪国まいたけ、椎茸、筍、人参)
・大根漬け
・蓮根酢漬け
黒い円筒容器の蓋には「SLばんえつ物語」のヘッドマークが印刷されていました。当初はシールの添付も考えましたが、家に持ち帰って何度も使えるよう印刷にしたのだそう。実際、食洗器で洗っても耐えられる他、くるくる回して開けるねじ蓋になっているので、弁当箱等で再利用した際、多少傾げても中身がこぼれにくくなっているのが有難いものです。従来の「SLばんえつ物語弁当」(引き続き販売中)で人気の食材を使いながら、ご飯はきゃらぶきと山せりを混ぜ込んで、ひと手間かけた酢飯としたのが特徴。塩鮭や鶏肉、雪国まいたけの煮物などのおかずと一緒に、どんどん箸が進みます。
会津の山々をあとに力強く新津へ戻って行く「SLばんえつ物語」号。SLの旅は煙の匂いと、心地よい揺れが旅情を誘ってくれます。新作駅弁「SLばんえつ物語」は、新潟駅構内、SL運行日の新津駅立売の他、現在開催中の「駅弁味の陣2021」にも“出陣”しており、東京駅等での販売もあります。実際にSLの旅を楽しみながら、あるいは、懐かしの旅を思い浮かべて、コロナ禍に負けず開発された新作駅弁を味わってみてはいかがでしょうか。
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連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/