ソルトコーディネーター・青山志穂さんが、上柳昌彦アナウンサーがパーソナリティを務める、ラジオ番組「上柳昌彦 あさぼらけ」内コーナー『食は生きる力 今朝も元気にいただきます』(ニッポン放送 毎週月・金曜 朝5時25分頃)に出演。現在、商品として販売されている塩は4000種類もあり、そのうちの1800種類も持っているという青山さんに、それぞれ味わいが違うことや、料理別での塩の選び方、世界にあるとても珍しい塩について聞いた。
青山さんは、一般社団法人日本ソルトコーディネーター協会の代表理事を務める塩の専門家で、全国を飛び回りながら、塩の基礎知識や使い方などに関する講座や講演、テレビやラジオ、雑誌への出演など、塩の啓蒙活動に尽力。有名シェフと「塩」をテーマにしたコラボレーションイベントや、食品メーカーの商品企画も手掛けている。
■料理によって塩を使い分ける
青山:塩は5種類ぐらい持っていると、食事をより楽しめると提案しています。
(1)バランスがいい、使い勝手のいい、ド真ん中の塩。何にでも使えるタイプの塩。
(2)牛肉のように味が強い食材に合わせる、しょっぱみが強くて粒が大きい塩。
(3)野菜に合わせる、しょっぱみが優しく、粒が小さめで馴染みのいい塩。
(4)揚げ物のようなものには、塩の粒が小さくて、かつ、しょっぱさがとても強い塩。
(5)白身の魚や鶏肉など、牛肉に比べると味が淡白で噛まないと味が出てこないものには、柔らかいしょっぱさで、ちょっと粒が大きい塩。
上柳:塩のしょっぱさは、数値で見ることもできるんですよね?
青山:はい。商品のパッケージ裏を見ると「栄養成分表示」があって、100グラムあたり何キロカロリーとか書いてあると思うんですが、あそこに「食塩相当量」も書かれているので、そこの数値が高ければ高いほどしょっぱさが強いです。
上柳:なるほど。
青山:「食塩相当量」の数値が低ければしょっぱさが弱めで、ナトリウム以外のマグネシウムやカルシウムといったミネラルが多く含まれている目安になります。塩を買う時はそこをチェックするといいと思います。
■塩にも「甘味」「うま味」などの味がある
上柳:塩には“6つの味”が含まれているそうですね。
青山:そうなんです。塩はしょっぱいだけだと思われているんですが、「甘味」「うま味」「酸味」「苦味」「雑味」という全部で6つの味が含まれているんです。ミネラルにもそれぞれ味が付いているので、塩の結晶の中にミネラルがどれくらいずつ含まれているかで味が決まるんです。
上柳:塩の中に、甘味を感じ取れるものなのですか?
青山:感じ取れるんですよ。明らかにうま味ではなく、甘いという感じがあるんです。塩は海水からできた「海水塩」。土の中から取れる「岩塩」などいろいろありますが、元々は全部、海水だったんです。海水には地球上の元素が全部入っていますよね。
上柳:はい。
青山:海水に含まれているミネラルが濃縮して結晶したものが塩です。海水の成分構成比としては、大体8割が「塩化ナトリウム」で、それ以外に「マグネシウム」「カルシウム」「カリウム」といったミネラルが主成分になっているんです。それ以外のほんのちょっとの割合に、ものすごいたくさんのミネラルがぎゅうぎゅうに詰まっているんです。
上柳:「塩化ナトリウム」「マグネシウム」「カルシウム」「カリウム」は全部ミネラルなんですか?
青山:はい。海水の主成分は塩の主成分でもあるので、いろいろなミネラルバランスの塩があるんです。例えば、ナトリウムしか入っていない塩でもミネラルの塊なわけです。
上柳:ナトリウムしか入っていない塩は、どんな味なんですか?
青山:ストレートにしょっぱい! という感じの味ですね。カルシウムが多いと、甘味を感じやすいですよ。
■ミネラルの働き
上柳:このミネラルですが人間の体にとって相当大事ですよね?
青山:はい。ミネラルは補酵素としての働きをすごくしてくれるので。
上柳:補酵素?
青山:酵素を元気に働かせるためのガソリンみたいな役割です。酵素を一生懸命取っても、ミネラルが足りていないと酵素は働けないので、ちょっと元気が無くなってしまうんです。
上柳:そのミネラルを手っ取り早く摂取するには、塩なんですか?
青山:もちろん、野菜や肉などいろいろな食べ物にも含まれていますが、日々の積み重ねと日常的に毎日必ず取るものを考えると、塩を活用しない手はないなと思っています。
上柳:「塩」と言うとすぐに減塩したり、いかに減らすかという風に考えがちですが、“適塩”が大事ということですね。
■世界の塩~ピラミッド形の塩
青山:形がちょっと珍しい塩があって、インドネシアのバリ島で作られている「ピラミッドソルト」。塩の形がピラミッドの形をしているんです。
上柳:あっ、本当ですね!
青山:すごくきれいなピラミッドの形ですよね。
上柳:しかもこれ、全部ピラミッドの形をしていますね! 何でこんな形になるんですか?
青山:これは、太陽と風の力でじっくり、海水の表面を揺らさないで育てられて、重力の力も使いつつ、条件が揃っていると自然とこういう形になるんです。
上柳:神秘的ですねぇ……。ということは、“うまくピラミッド形にならなかった塩”もあるということですか?
青山:あります(笑)
上柳:えっ、じゃあ、これを誰かがどこかで選別をしているということですか?
青山:そうです。収穫後に「ちゃんとピラミッドになっているか」を基本、手作業で分けていて。気が遠くなるような作業をされています。
上柳:信じられない作業ですね(笑)
青山:味は、ちょっとしょっぱみが強いのですが、突き刺さるようなしょっぱさではないです。
上柳:(試食してみて――)確かに、いつまでも口の中で味わっていたい感じですね。
青山:ナトリウム以外のミネラルが入っているので、突き刺さるようなしょっぱさではないんです。
上柳:これ、ガリガリ噛んだ時のサクサクした食感が非常にいいですね!
青山:例えばとんかつとか、もともと衣がサクサクしているような食べものに合わせると、さらにサクサクになるので凄く合いますよ。
■世界最古の塩田の塩
青山:スペインのバスク州にある世界最古の現存する塩田、「アニャナ塩田の塩」です。
上柳:世界最古の塩田ですか! そこには何か観光的な施設もあるんですか?
青山:あります。保存運動みたいな事が市民を中心に起こって、現地の星付きレストランのシェフ達も「この塩をちゃんと使う」ということで、みんなで支援をして復活させた塩田なんです。
上柳:では、ちょっと頂きますね。……ピラミッドソルトとは全然違う味ですね。重い感じが……。
青山:厚みがあって、重くて、ワインで言うとフルボディみたいな感じですよね。原料が地下から湧いてくる塩水なので、太古の海水が地中に閉じ込められて、それが土壌の影響も受けながら上がってきたものです。
上柳:ああ、この塩は僕に食べられるまでずっと閉じ込められていたわけですね。
珍しい青色の塩
青山:イランで取れる、すごく珍しい青色をした「ブルー岩塩」です。
上柳:塩の結晶にブルーの色が細かく、所々にありますね!
青山:この色もミネラルによるものです。味は、強いしょっぱさの後に、昆布の後味みたいなのを感じませんか? 昆布をペロッと舐めた時のあの味がちょっと後味にあるんですよ。
上柳:ほう。
青山:カリウムというミネラルが多いので、こういう色だったり味がする岩塩です。
なんとなく選んだ1つの塩を使う、という人がほとんどだと思うが、塩の選択肢が増えれば、味わい方の幅が広がり、いつもの料理を簡単にワンランクアップできる。また、食卓にいくつか珍しい塩を並べてみたら、「これは一体何?」「こんな色の、こんな形の塩があるんだ!」「この料理にはこの塩が合うよ」と、会話も広がるはず。
最近は「減塩」という言葉が流行ってはいるが、大事なのは“適塩”という考えで、塩には人間が元気に活動するための様々なミネラルが含まれている。こだわりの塩を調味料に追加してみたら、食生活がより豊かになるかもしれない。
塩の専門家・青山志穂さんと、上柳昌彦アナウンサーの詳しいトーク内容は、「食は生きる力今朝も元気にいただきます」特設コーナーHPから、いつでも聞くことが可能だ。
番組情報
「上柳昌彦 あさぼらけ」内で放送中。“食”の重要性を再認識し、「食でつくる健康」を追求し、食が持つ意味を考え、人生を楽しむためのより良い「食べもの」や「食事」の在り方を毎月それらに関わるエキスパートの方をお招きしお話をお伺い致します。
食の研究会HP:https://food.fordays.jp/