新型コロナに「神経質過ぎる部分」が日本の経済的な活力を削いでいる

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(12月7日放送)に地政学・戦略学者の奥山真司が出演。岸田総理大臣の所信表明について解説した。

新型コロナに「神経質過ぎる部分」が日本の経済的な活力を削いでいる

New COVID-19 variant Omicron=©Luz Garcia/VW Pics via ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ

岸田総理大臣の所信表明演説

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岸田総理)感染防止に万全を期す観点から、既存ワクチンのオミクロン株への効果等を一定程度見極めた上で、優先度に応じ追加承認されるモデルナを活用して、8ヵ月を待たずに、できる限り前倒しします。

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岸田総理は新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」について、ワクチンの効果は見極めた上で、3回目の接種を、8ヵ月を待たずにできる限り前倒しすると述べた。

飯田)きょう(12月7日)の一般紙は6紙とも、東京最終版の各紙1面が所信表明についてです。

世界各地でワクチン接種を拒否する人による暴力的なデモが発生

奥山)各新聞社の注目点が如実に表れています。各社の違いが見えて面白いのですが、私はワクチンの話が気になります。日本はワクチン接種に関してもそうなのですが、「いい国だな」と改めて思うのです。海外の情報を見ていると、ワクチン接種を「する、しない」というところで、暴力的なデモがオーストラリアなどでも起こっています。「我々にワクチンを強制するな」という動きが出ている。

接種拒否する人を差別しない日本

奥山)国がワクチン接種を強制しているところが増えて来ています。例えばシンガポール政府はワクチンを打たない人に対して、今後の医療費を国が負担しないと言っています。しかし、日本はそういう区別をしません。そういうところを曖昧にして、社会的な摩擦を生まないようにしているという点では、「日本はいい国だな」と改めて思います。

飯田)曖昧にして。

奥山)「接種拒否している人を差別してはいけない」というところが日本はあります。欧米の国々では、接種した人間は特権階級だと。ある意味、猫の話で例えると、飼い猫ではないけれども、地域に居る「地域猫」にはワクチンを打って、エサもやってと。

飯田)不妊治療もやって。

奥山)そういう形の地域猫状態にするのか、あるいは未接種の人たちを野良猫扱いにして区別するという動きが各国で出ています。日本はそうではないけれども、接種している人としていない人をしっかり線引きして、「区別しましょう」という動きが世界的に起こっているのです。

飯田)接種していない人を。

奥山)それに対して、接種していない人たちの反乱が起こっているのですけれども、日本はその辺を曖昧にしているからこそ、うまく統治できているのだと思います。

ワクチン接種しない人でも社会活動ができるようにする日本

飯田)今回の所信表明のなかでも、接種しない人や体質などの問題で打てない人に対し、検査を無料で受けられるようにして、陰性が証明できれば普通に社会活動を行えるような形にする、ということも盛り込まれています。

奥山)日本は、あえてそこで荒立てない。そういう意味では、うまくやっているのだと思います。

新型コロナに「神経質過ぎる部分」が日本の経済的な活力を削いでいる

変異株「オミクロン株」=2021(令和3)年11月27日、ボスニア・ヘルツェゴビナ(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

日本でのワクチン接種の成功に対して正しい評価がされていない

奥山)一方で日本のリベラルな方々は、政権がうまくやっていないということを前提としていて、「ワクチン敗戦」などという言葉を使う人たちがいます。しかし、「世界的に見ても、日本は成功していますよ」と思うのです。この辺の現実の認識が全然違うなというのは、常に情報を見ていて思うところがあります。

飯田)そうですね。

奥山)韓国などでも、死者はそれほど出ていませんが、過去最多レベルまで感染者も重症者も増えているではないですか。それに対して、日本の感染者は東京でも20人前後で、大成功しているのです。

飯田)1日の感染者数が。

奥山)菅さんの功績ですけれども、日本がワクチン接種をやったということに関して、正しい評価がされていないところがあります。いちばん酷かったときの記憶を引きずったまま世間が議論しているのは、私はフェアではないなと思います。

菅前総理の失敗を見て、迅速に国境封鎖した岸田総理 ~神経質な部分が日本の経済的な活力を削いでいる

飯田)ワクチン接種に関して、菅さんが「1日100万回」の目標を掲げたときには、「1日に100万回打つなんて無理だ」とみんな言っていたけれども、それどころか。

奥山)160万回くらいまで行きましたからね。よくやってくれたと思うのですけれども、なぜか我々は評価しなかった。8月~9月ごろは確かにデルタ株で急激に感染者が増え、そのときの嫌な印象が残っている。それもあって今回、岸田さんは必死に抑えたいということで国境封鎖、鎖国というところまで行きました。

飯田)対応は早かった。

奥山)岸田さんとしては、菅さんのときに失敗したところを見て、「すぐにやらなくては」と思い、劇的な国境封鎖という対応になったのでしょう。しかし私は逆に、神経質になり過ぎている部分が日本の経済的な活力を削いでいるのではないかと、少し残念に思っているところもあります。

「コロナと一緒に生きて行く世界」に合わせ過ぎる日本 ~「絶対にコロナ前の経済状態に戻してやる」という強い意志を感じる欧米

飯田)アメリカのファウチ氏はオミクロン株について、警戒すべきだけれども、重症化や死亡率を見ると、それほど警戒し過ぎることはないと。

奥山)欧米各国の報道を見ていると、スポーツの試合でも誰もマスクをせず、「絶対にコロナ前の経済状態に戻してやる」という強い意志を感じるのです。日本にはそれがないではないですか。

飯田)そうかも知れません。

奥山)完全に行動変容してしまっている。例えば「マスクをいつ外すのか」というタイミングの議論がされていない。我々日本人だけが「コロナと一緒に生きて行く世界」に合わせ過ぎてしまって、以前のようなマスクを外して元気に生きていた時代に戻ろう、という意思を感じないのは残念ですね。「2019年の時代に戻ろうよ」と旗振りしてくれる人を政治側に求めたいところではあります。

飯田)「正しく恐れる」という意味で言えば、感染予防はすべきなのだけれども、マスクを外せるところでは外すというメリハリがつけばいいし、それが許容できるような社会になればいい。

奥山)エネルギーレベルが下がっているわけではないのですけれども、前に戻ろうよということを誰も言わない。メディアも含めて、それを積極的に言っていただきたいと思います。

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