ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(12月9日放送)にジャーナリストの鈴木哲夫が出演。12月8日の衆議院本会議で行われた各党の代表質問について解説した。
衆議院代表質問が開始 ~新型コロナ対策などで論戦
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泉代表)この臨時国会で補正予算を提出するというのは、あまりにも遅すぎたと思いませんか?
岸田首相)総額55.7兆円の大規模な対策によって、日本経済を1日も早く回復軌道に戻し、コロナ後の新たな社会を切り開いてまいります。
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12月8日の衆院代表質問で岸田文雄首相は、新型コロナウイルス対応や経済対策に関する答弁では安全運転に徹する一方、安全保障や憲法については意欲的な姿勢を際立たせた。
立憲民主党・泉氏の「代表デビュー」となる代表質問
飯田)泉さんの代表質問について、“ムラキ”さんという方から、ツイッターのご意見をご紹介します。「非常によかった。岸田総理の懐に巧みに入り込む冒頭の発言から、提案型の質問は、これまで激昂し罵倒するだけだった党のイメージが変わった印象を受けました。今後も政策を提案するなどしてアピールを続け、正当な対立構造を築き上げていただきたいです」といただきました。泉さんの代表としての国会デビューとなります。
鈴木)私たちはこれまでも取材しているから、彼がどういう人かということはわかるのだけれど、リスナーの方は、「どんな人なのか」というのがわからなかったのですよね。それがやっと表舞台に出て来たから、「ようやくスタート」という言い方もできる。新鮮なイメージというか、いままで立憲民主党に抱いて来たイメージが、いい意味で変わる節目かも知れません。
飯田)そうですね。
鈴木)リスナーの方がおっしゃっているように、何を提案するのか。現実主義も取り入れながら、しかし、「絶対に自民・公明を倒すのだ」というしたたかさを持っての駆け引きが必要です。政策的には、自民党にはできないものを「どう提案するか」ということでしょうね。
「10万円は現金でもいい」と言い出した岸田政権の迷走ぶり
飯田)12月8日の代表質問のなかでは、18歳以下への10万円相当の給付金について言及がありました。5万円を現金、5万円をクーポンとすると「事務が煩雑になる」と地方自治体から上がっていた声も含めて質問し、「10万円は現金でもいい」という言葉を引き出した。
鈴木)岸田政権の迷走ぶりが目立ちますよね。そもそも10万円を5万円ずつに分けたことについても議論があったのです。しかし、その方向で進んでいたのが、クーポンの事務作業を含めると967億円かかるということが出て来た。確かにとんでもない額です。それでまた揉めました。
飯田)967億円もかかるのかと。
鈴木)もっと問題なのは、いまの現状です。自治体の判断によって、「5万円ずつクーポンと現金ではなく、ぜんぶ現金でもいい」と。ここまで来てしまうと、私はおかしいと思います。そもそもこの10万円は何のための10万円なのかということが、もうわからなくなってしまったでしょう。
何のための10万円なのか
鈴木)いろいろな解釈はあったけれど、コロナ禍があり、特に子育てをしている家庭は大変でしょうと。学校に行けないということになって、お母さんがパートに行けず収入が減ったとか、子どものストレスがあるなど、いろいろな問題がある。単に「社会で子どもを育てましょう」というものではなく、ここには新型コロナが絡んでいます。コロナ禍による困窮で大変だから、「そこに対して10万円を」ということだと思っていました。そういう建て付けだと。
飯田)そうですよね。
鈴木)そのための10万円であれば、貯金してもいいではないですか。私が知っているご家庭もそうだけれど、母子家庭で、お母さんの収入が減ってしまったので、貯金を切り崩して生活しているわけです。
飯田)既に。
鈴木)そこを埋めてもいいではないですか。コロナ禍で子どもの将来のための貯金ができていなかったから、貯金しましょうと。そういう使い道は自由なはずではないですか。でも、その10万円を半分に分けて、半分はクーポンというのは、どちらかと言うと経済対策でしょう。
10万円のなかで「経済対策と貯金してもいいお金」を分けた
鈴木)市場にお金を回して行くための対策です。そこで「10万円とは何だったのか」ということが分かれてしまったわけです。財務省がお金を出したくないのだなと。10万円のなかで、「経済対策と貯金してもいいお金を分けたのだな」と思いました。
今度は「10万円はご自由に」と
鈴木)そこで走るのかなと思ったら、「これは不平等だ」など、いろいろな声があって、各自治体が「独自にやる」と言い出した。大阪市や群馬県太田市、静岡県島田市など。そういう自治体はこれからも増えますよ。
飯田)増えますね。
鈴木)そうしたら今度は「ご自由に」と。これは政策の建て付けとしてどうなのでしょう。最初から両幹事長に建て付けも含めて指示をして、「やってくれ」としていたのか、それとも現場任せだったのか。ここへ来てフラフラしているけれど、これでいいのでしょうか。
飯田)きちんと指示したのか。
鈴木)私はこの10万円というのは非常に象徴的で、その辺りの政策の建て付けができなければ、経済対策全体もそうだし、外交安全保障もそうですが、理念や建て付けがなければダメでしょう。今回の10万円の問題が象徴的に表している気がします。
新型コロナワクチン3回目接種の「8ヵ月」前倒し問題 ~菅政権との違い
飯田)新型コロナワクチンの3回目接種についても、「8ヵ月経った人から」と突っ張っていたのが、短縮するという話が出て来ました。
鈴木)これも象徴的なのだけれど、菅政権と非常に対照的だと思います。
飯田)岸田政権は。
鈴木)菅政権のときにも、「ここまでにはできる」とか「できない」とか、在庫のことなど、いろいろな話がありました。主体的に決めて、実際に動くのは厚労省ではないですか。ここが「これしかできません」と言ったら、ワクチンに命をかけると言っていた菅さんは「何をやっているのだ」と。「ダメだ」と言います。それをワクチン担当だった河野さんがあの調子で言う。動かさないけれど、調整役として「ビシッ」と言う。
飯田)そうでした。
鈴木)しかし岸田さんの場合、取材したのですが、厚労省が「在庫も含めて8ヵ月くらいは必要」と言っている。それを岸田さんが受けて、「8ヵ月」と言っている気がします。菅さんであれば「8ヵ月」と言われたときに、「なぜ6ヵ月にならないのだ」と、もう1回返すと思います。その作業を岸田さんはやっているのか、やっていないのか。
飯田)「本当に8ヵ月間も抗体が持つのか。持つならそれでいいけれど、持たないなら前倒ししなければいけないだろう」という。
鈴木)その話で2週間くらい膠着状態が続いているのです。つまり、何も動いていなかった。「8ヵ月」という期間のまま。地方自治体を取材したら、その辺りのせめぎ合いがあったらしく、地方自治体側は早く打ちたかったのだけれど、「できません」と言われたそうです。
飯田)8ヵ月だと。
鈴木)聞く耳を持つことはいいのだけれど、その先の指導力の問題です。菅さんは官僚や役所に対して怖いくらいだったのかも知れませんが、そういう政治主導の部分です。この辺りが、ワクチン前倒しの問題でも不安を感じます。
飯田)厚労省側は混乱してはならないということで、余裕をつくりながら「8ヵ月で」と言っているのではないかと。
政治主導で「俺が責任を取るから」と岸田首相が言えるかどうか
鈴木)モデルナとファイザーの分量があるでしょう。おそらく、「前倒して早く」ということになると、ファイザーを打つという人が多いから、モデルナが余ってしまったり、ファイザーが足りなくなる可能性がある。役所はその辺りの調整についても、平等になるよう考えるので、そこは動けない。
飯田)役所の立場では。
鈴木)そこを政治主導で「気にするな。俺が責任を取るから早くやれ」と言う。その気概が岸田さんにあるのかどうかが、いま試されているということです。
飯田)危機においては、そういう政治が求められるわけですよね。
鈴木)安全保障などは、特にそうでしょう。
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