あけの語りびと

退職後に262曲を作曲! 「淡路島には歌がない」と言われ……「それなら俺が」

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それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。

退職後に262曲を作曲! 「淡路島には歌がない」と言われ……「それなら俺が」

シンガーソングライター・柏木英樹さん

兵庫県・淡路島は、瀬戸内海では最大面積の島で、13万人ほどが暮らしています。温暖な気候であり、タマネギ栽培などで知られていますが、最近では人材派遣大手「パソナ」が本社機能の一部を移転するなど、移住する人も増えているそうです。

淡路島で生まれ育ち、定年後はシンガーソングライターとして、淡路島の魅力を歌い続けている人がいます。柏木英樹さん・72歳。

子どものころは大人しく、教室の隅にいるような目立たない生徒でした。高校のときに同級生がギターを弾いているのを見て、「かっこいいな」と思うようになり、「大学に入ったらギターをやろう!」と決意します。

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学生時代の柏木さん

淡路島を出て、大阪の桃山学院大学に入学し、下宿生活が始まります。下宿に暮らすほとんどの学生がギターをやっていたので、先輩たちに教えてもらいながら、ギターが上達して行きました。

大学の1年先輩には、あの谷村新司さんがいたそうです。ただ、谷村さんは「ロック・キャンディーズ」というフォークグループを結成し、すでにプロのような活動をしていたので、大学で姿を見かけることはなかったそうです。

当時は“関西フォーク”が旋風を巻き起こしており、岡林信康さん、高石ともやさん、加川良さん、高田渡さんなどの影響を受けた柏木さんは、オリジナル曲『流れ作業ブルース』を発表します。

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イベントでの歌唱風景

この歌が注目されたことで、思わぬ話が転がり込んで来ました。柏木さんが大学3年生のとき、大阪府立青少年会館で開催された、吉田拓郎さんのコンサートの前座で歌うことになったのです。

「スポットライトを浴びた瞬間、頭のなかが真っ白になって、何も覚えていないんです。初めて見る吉田拓郎さんは、前日にお酒を飲んで誰かと喧嘩したらしく、目のまわりを青く腫らしてやって来たんですよ。それでも堂々と歌っている姿を見て、さすがプロだなと感心したことだけは覚えていますね」

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地元・タイヨー珈琲でのライブ

「働きながらフォーク歌手を目指す」と決めていた大学4年生のとき、正月に淡路島の実家へ帰るバスのなかで、中学校の恩師に偶然出逢います。

「大学を出たらどうするんだ?……フォーク歌手になる? 馬鹿やろう、お前は長男だろう。淡路島に帰って来い!」と、こっぴどく叱られたという柏木さん。恩師の忠告を聞き入れ、小学校の臨時教師になったそうです。

いわゆる“でもしか先生”になった柏木さん。ところが教師になってみると、思った以上にやり甲斐がありました。音楽の時間は得意のフォークギターを弾けるし、学級の歌や係の歌をつくって、好きな音楽の経験を活かすこともしていたそうです。

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教師時代の柏木さん

さらに、「落ちこぼれの子どもをどう前向きにさせるか」にも情熱を燃やします。柏木さんが子どもたちに実行させたのは、毎日の読書と日記でした。

「読書は知らない世界を知ることができるし、本が出会いのきっかけとなって、自分を変えられる場合もあります。そのため、1年間に100冊の本を読ませました。日記は書く力をつけさせるためで、世の中に出たとき、きっと役に立つはずだから……」

2010年、37年の教職生活を終えた柏木さんは、町内会長を頼まれ、地元の行事やお祭りなどに関わるようになりました。そんなある日のこと、淡路島出身の大学生から、こんな話を聞きます。

「淡路島には歌がない。知っているのは『ホテルニューアワジ』の歌だけじゃ、とバカにされた……」

退職後に262曲を作曲! 「淡路島には歌がない」と言われ……「それなら俺が」

海峡ライブ(後ろは明石海峡大橋)

それを聞き、カチンと来た柏木さん。「それなら、俺が淡路の歌をつくったろうやないか!」と、再びシンガーソングライターの魂に火がつきました。それ以来、淡路島の歌を中心に、身の回りで感じたことを歌にしています。

代表曲は、淡路市のゆるキャラ「あわ神(あわじん)」の公式テーマ曲『あわ神くんの歌』をはじめ、『年金人生』『幸せさがし』『ふるさといいところ』『今だけえじゃないか』『セカンドロード』などなど。10曲、20曲と増え、70曲を超えたあたりから拍車がかかり、ポンポンと歌詞が浮かび、曲ができるようになりました。

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みんなで歌おう会(歌唱指導)

退職後につくった歌は、何と262曲! 「とめどなく曲が湧いて来る」と言う柏木さんですが、最近は「量」よりも「質」にこだわろうと、淡路島に移住して来た若いアーティストたちの力を借りて、音楽配信サービスから新曲をリリースしています。

さらに、淡路島の風景をちりばめたミュージックビデオも制作。YouTubeで淡路島の魅力を、歌と映像で発信しています。

「若いころは淡路島から出たくて仕方なかったけれど、いまは淡路島を音楽で溢れる島にしたいですね。岡林さんや高石さんなど、フォークのレジェンドを呼び、『中津川フォークジャンボリー』のようなフェスを開くのが夢です」

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柏木英樹『ふるさといいところ』

■柏木英樹 公式ホームページ
https://www.tunecore.co.jp/artists/Hideki--Kashiwagi

■柏木英樹 公式YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCTDHVlqKV3amXMu1x4ObHYA

番組情報

上柳昌彦 あさぼらけ

月曜 5:00-6:00 火-金曜 4:30-6:00

番組HP

眠い朝、辛い朝、元気な朝、、、、それぞれの気持ちをもって朝を迎える皆さん一人一人に その日一日を10%前向きになってもらえるように心がけているトークラジオ

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