青山繁晴議員が指摘する「経済安全保障推進法案」の最大の課題
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自由民主党・参議院議員の青山繁晴が4月20日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。経済安全保障推進法案について解説した。
「経済安全保障推進法案」とは
飯田)昨日(4月19日)も国会で午前中、質問に立たれていましたけれども、予算のあとは「経済安全保障推進法案」が目玉の1つだと言われております。経済安全保障について、どういうものだとお考えですか?
青山)「安全保障」と聞くと軍事や治安、危機管理などについてのことだと思われる方が多いのではないでしょうか。
「マスク不足」への対策も安全保障の1つ
青山)ところが、経済のなかにも安全保障はあるのです。今回の「武漢熱」……私は新型コロナウイルス感染症のことを武漢熱と呼んでいますが、マスク不足になって、気が付いたらマスクはすっかり中国製品に頼っていた。その中国が輸出を控えたら、私たちは感染症流行の最中に、マスクも手に入らないという事態になってしまった。これも安全保障ですよね。国民の健康や命に直接関わることですから。
経済のなかにも安全保障はある
青山)それだけではなく、日本の中小企業が海外の企業に買収されることはよくありますが、中国に買収された場合、それだけでは済みません。技術者の方、あるいは技術そのものが中国に移ってしまい、そのあとに企業が潰れるという状況を間近にご覧になる方もいらっしゃいます。
飯田)技術者が流出して、そのあとに。
青山)また、かつては世界のマーケットで大きな力を誇っていた日本の半導体が、東芝が大変な苦境に陥っていることも含めて、どんどん小さくなっています。やがてなくなってしまうのではないかという状況にありますが、「経済のなかにも国民を守り、国益を守る安全保障があるのだ」という考え方がこれまでは弱かった、ということです。
「経済安全保障」とは経済においても国益を貫き、自国民を守り、世界の民主主義を支えること
飯田)いままでは自由にやって、自由な発想でお金儲けをするという方が先に立つようなところがあった。
青山)「経済と安全保障は別の話」だという認識が強かった。特に敗戦後、77年間の日本では、軍事や国家の危機管理は「少し変わった人がやることだ」という間違ったイメージがあって、経済と切り離していたのです。しかし、「まったく一緒のものだということをもう一度考えましょう」ということです。
飯田)経済と安全保障が一緒だということを。
青山)その上で、先日の参議院本会議では、岸田総理が答弁のなかで2回、「経済安全保障には明確な定義がない」とおっしゃっていました。私はそれを本会議場で聞いて、「これはいけない」と正直思いました。定義というと、学者がするようなイメージがあるのかも知れませんが、政治こそが国民にわかりやすく、定義を示さなくてはいけない。
飯田)わかりやすく。
青山)まず政府、政治が「経済安全保障はこういうものですよ」とはっきり示さなければいけないということを、昨日の質問の冒頭に申しました。それを言う以上は、私の定義を示さなければいけないので、このように申しました。「経済においても国益を貫き、自国民を守り、世界の民主主義を支える。それが経済安全保障です」と。
飯田)経済安全保障とは。
青山)「自国民」とわざわざ「自」がついているのは、経済安全保障は中国に限らず、諸国の国益がぶつかる場でもあるので、綺麗ごとを言っていては日本国民を守れません。だから「自国民」ということをはっきりさせる。同時にそれだけ言っていたら、紛争・戦争につながりかねないので、「世界の民主主義を支える」と申しました。民主主義は必ず平和とともにあるので、「それも含めて」ということです。小林大臣はもっと簡潔な定義をおっしゃっていて、昨日の小林大臣の答弁は全体的に率直であり、若き大臣として力を発揮されていたと思います。
この法案の課題
飯田)小林大臣もおっしゃっていましたし、青山さんも指摘されていましたが、全体の定義があって、今回の法案はそれを全部網羅するものではなく、いま喫緊にやらなければならない項目を4つに絞ったということでした。毎年ブラッシュアップするくらいのものになっていかなければなりませんね。
青山)私が昨日の質問の冒頭に申し上げたのは、法案における最大の課題として、この法案を国民の方が一生懸命読んでくださっても、仮に別の感染症が来たとして、マスクは絶対に大丈夫だとか、日の丸半導体が復活するとか、中小企業が中国に乗っ取られたりしなくなるとは思えないということです。
「セキュリティ・クリアランス」
青山)もう1つ、「セキュリティ・クリアランス(適格性評価)」という言葉があります。私は民間の時代から世界の原発や軍の施設を回ってきましたが、そのときには必ず「この人はこういうところに入れても大丈夫。機密情報を話しても大丈夫」だという証明が必要です。外国、つまり二国間以外に情報を漏らしたりしない、商売に使ったりしない、そういうことが公で確認されているものです。私の場合は日本政府による証明書を持って行ったわけです。
飯田)証明書を。
青山)日本政府としては、史上初めて発行したと思うのですが、民間人だけれども公のために仕事をして、利害関係はないと。そういう証明書を持って行ったりすることを「セキュリティ・クリアランス」と言うのですが、経済安全保障において、それが「いろはの“い”」であるはずなのに、かけらもありません。
飯田)セキュリティ・クリアランスについて。
青山)そういうところも考えて、小林大臣ご自身が質疑の冒頭に、この法案を「まずは不完全だ」とおっしゃったのです。私が政治記者だった時代も含め、こういう場でそのような発言は聞いたことがありません。まだ法案が成立していないのですよ。
飯田)そうですね。
青山)成立したら、「今度は改正ですね」と質問する側が言うことはあるけれども、大臣が言ったのはたぶん初めてではないですかね。
飯田)大臣が言ったのは。
青山)それは小林さんの、若いけれども懐の深さを語ると同時に、「経済安全保障の関連法案には課題がたくさんある」ということなのです。「この法案だけでは足りない」と大臣もおっしゃっているのだから、スパイ防止法も必要であり、当然ながらインテリジェンス、情報の支えがないといけない。経済安全保障と言っても、深い情報がなくてはなりません。
情報組織を1つにまとめた「戦略情報局」の設置
青山)日本は情報組織に関して、内閣情報調査室や公安調査庁、警査庁の情報部。新しいところでは国家安全保障局の経済班。それから防衛省の情報本部など、バラバラなのです。
飯田)1本ではない。
青山)これを統合するために、国家情報局……呼称については、私は「戦略情報局」でもいいと思っていますが、大事なことはいま、日本は車の片輪で走っているのです。安倍内閣のときに「国家安全保障会議」がやっとできて、経済安全保障も含め、一括してやりましょうと。情報の裏打ちがないとできないので、同じ総理官邸に国家情報局、あるいは戦略情報局を置くということになった。そして設置する法案を密かに準備していたのだけれども、国会に出せなかったのです。
飯田)出せなかった。
青山)「この通常国会で出そう」というところまでは行ったことがあったのですが、安倍さんは「政治的コストがかかると国政選挙で負ける」と、それをすごく考える人でしたから。逆に言うと、一度も負けなかったから長期政権になったのですが。
飯田)それをやるには政治的コストがかってしまうと。
青山)それでそのままになっているので、経済安全保障推進法案が出てきたならば、そういう法案も出さなければいけないということを申し上げました。小林大臣は「この法案は不完全です」という言葉以外は慎重にお答えになっていたのですが、全体としては、前に向いた議論ができたと思います。
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