新政権が発足するまでは会わないのが「常識」  なぜ岸田総理は韓国代表団と面会したのか

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数量政策学者の高橋洋一が4月27日、ニッポン放送「飯田浩司のOK!Cozy up!」に出演。4月26日に行われた岸田文雄総理と韓国代表団との面会について解説した。

新政権が発足するまでは会わないのが「常識」  なぜ岸田総理は韓国代表団と面会したのか

政治 会見する岸田文雄首相=2022年4月26日午後、首相官邸 写真提供:産経新聞社

岸田総理、韓国代表団と面会

岸田総理は4月26日、総理官邸で韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)次期大統領が派遣した政策協議代表団と面会した。面会は約25分間、非公開で行われた。代表団は尹氏の親書を手渡し、岸田総理はウクライナ情勢や北朝鮮問題を踏まえて日韓関係の改善が急務だとの認識を示している。

尹政権が発足するまでは会わないのが常識 ~親書を受け取るだけでよかった

飯田)元徴用工による訴訟問題についても対応を促したということです。

高橋)私のツイッターで「外交の常識を知らない人たちだ」と批判してしまったのですが、代表団とはいえ、まだ政権ではないのです。5月10日に尹政権が発足しますが、それまでは普通の人です。まだ会う必要はありませんし、会わないのが普通です。

飯田)通常であれば会うことはない。

高橋)私が外務大臣だったら、親書は誰かが受け取る。そのときに、「韓国から外務大臣が政権発足以降に訪日するので、会ってください」という意向を誰かが聞くレベルだと思います。

韓国からの代表団に会わなかったアメリカ政府

高橋)会いたいのであれば、新政権が発足してから来ればいいのです。こういうやり方は常識です。外務省の幹部が、「会わなければ外交的に日本が批判される恐れがある」と語ったそうですが、これは外務省にやられた感じがありますよね。

飯田)外務省に。

高橋)韓国が重視しているのはアメリカと日本ですが、アメリカにも同じ代表団が行っているけれど、アメリカ政府は会っていません。

飯田)政府側としては会っていない。

高橋)当たり前の話で、どこでもそうです。「必要であれば、新政権ができてから会いに来い」と言えばいいことです。そうしないということは、外交の常識からかなりずれているし、非常識なやり方を取ったということになります。今後の交渉に差し障るのではないでしょうか。これは一定のルールですから。新政権発足まであと2週間くらいでしょう。

飯田)5月10日には発足しますからね。

高橋)「それから来てくれ」と言えばいいのです。

尹次期大統領が来るのであれば例外として岸田総理が会うこともあり得る ~代理に会うことはない

飯田)立場は逆ですが、アメリカ大統領選でトランプ前大統領が勝ったときに、安倍晋三元首相が会いに行きました。あれも本来であれば、外交的には違うのだと当時は言われていました。

高橋)あのときは安倍さんが自分のリスクで行って、かつ本人同士で会いました。本人同士であれば「例外として扱う」という説明ができますが、今回は本人でもありません。本人が来るのであれば、意気込みを感じて会うということはあるかも知れませんが。

飯田)尹次期大統領であれば。

高橋)外交の常識から考えると、本人が来れば例外もあり得るとは思いますが、今回は代理です。おまけに政府の人は誰もいないでしょう。だから会う必要はないですし、外務省の方がレセプションをしているのはおかしいです。

新政権が発足するまでは会わないのが「常識」  なぜ岸田総理は韓国代表団と面会したのか

2018年6月7日、日米首脳会談~出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/201806/usa.html)

元徴用工問題の解決には法律が必要 ~ねじれ国会の韓国では野党の協力が必要で難しい

飯田)次の政権幹部に会うという感じで、自主的に外交がスタートしているように見えますが、権限はないわけですね。

高橋)また、徴用工の話などには法律が必要だけれど、韓国では(次期与党の国会議席は3分の1くらいしかないので)議会は「ねじれ」です。次の総選挙は2年後なので、2年間はねじれが続くのです。その間に徴用工の話などが進展するはずはありません。

飯田)議会では野党の協力が必要になる。

高橋)ほとんどの案件は法律などが必要なので、多くの話はできません。レーダー照射問題に対しての謝罪ということであれば、行政府でできると思います。そういうものを先にやるのであれば、多少意味があるのだけれど、今回は何もないでしょう? だから何のために会ったのかわかりません。

閣僚が会うだけ日本にはいろいろなことが不利になる

飯田)閣僚などとも昨日(26日)は会っています。

高橋)まずいですね。

飯田)林芳正外相、萩生田光一経済産業相、岸信夫防衛相とも会談しています。

高橋)会うだけ不利になります。

飯田)岸さんと会ったときに、関係改善という話は向こうから出たようですが。

高橋)しかし、謝るのが先です。文政権のときにいろいろなことがありましたが、すべてのボールは韓国にあるわけですから。軍事情報包括保護協定(GSOMIA=ジーソミア)の破棄なども含め、すべてそうです。

岸田総理の「関係改善」はお得意の「検討する」ということ

飯田)昨日の総理会見のなかで、韓国との関係についても質問が出ていました。「国と国との約束を守ることは国家間の基本であると考えています」とおっしゃっていますが、基本的には、関係改善にとても前向きであるように感じました。

高橋)日本政府としては、(徴用工や慰安婦問題は)国際法違反であるという立場ですが、国際法違反の話についてはどう落とし前をつけるのでしょうか。岸田さんの言う関係改善というのは、ただ「検討する」ということなのではないでしょうか。

飯田)1965年の日韓請求権協定では、二国間で成立しているわけですから。

高橋)だから「文政権のときには非礼がいろいろあり、すべてお詫びします」と言えば済むのです。

アメリカ政府が韓国に「日本と話せ」と言った意味

飯田)韓国次期政権の政策協議代表団は先にアメリカに行きましたが、一部報道では、そこで「日本と話せ」とアメリカに促されたという話もあるようです。アメリカとしては、「日韓関係をある程度安定させたい」という意図があるのでしょうか?

高橋)もちろんあります。しかし「話せ」というのは、「新政権になったらきちんとやれ」という意味です。それはそうですよね、自分のところは会って話もできないのですから。新政権になったら外務大臣や大統領が訪日して、「礼を尽くせ」という意味だと思います。

新政権が発足するまでは会わないのが「常識」  なぜ岸田総理は韓国代表団と面会したのか

ニッポン放送「飯田浩司のOK!Cozy up!」

軍事情報包括保護協定(GSOMIA)が破棄された状態では韓国と軍事的な協力はできない

飯田)朝鮮半島情勢を睨むと、北朝鮮は昨日(4月26日)、軍事パレードを行いました。そのなかで、「戦術核の使用」を示唆しています。これはどちらかと言えば、韓国や日本に対してだと言われています。この辺りをどう備えるかということですが。

高橋)韓国の新政権が発足し、外務大臣なり大統領が来て、文政権の前に話を戻さないと、なかなかスタートにならないのです。文政権の間に韓国が一方的に日韓関係を変えたのです。それを前の状態に戻してから、どのような話をするのかという方向にスタートを切らないといけないのではないでしょうか。

飯田)日本の世論を見ても冷ややかな感じになっていて、韓国と一緒にというよりは、「日本は日本として備えなくてはならないのではないか」というような空気を感じます。

高橋)この状況で韓国と協調するのは、軍事情報包括保護協定(GSOMIA=ジーソミア)がない状態なので、やりようがないです。

飯田)どこの協力もできない。

高橋)トラブルはない方がいいと思いますが、日本は日本として防衛費などを増額したり、射程の長い迎撃ができる、反撃力のあるもので防衛力を高めるということです。

自民党安全保障調査会が提言案を了承

飯田)昨日、自民党安全保障調査会が提言をまとめました。今年(2022年)は国家安全保障戦略の見直しがあり、それに付随して「防衛計画の大綱(防衛大綱)」と、「中期防衛力整備計画(中期防)」も見直される予定です。その辺りを睨みながら、「敵基地攻撃能力」という言葉を使わずに、「反撃能力」という形でやっていくのだということです。ようやくこのような動きが出てきました。

高橋)「防衛計画の大綱(防衛大綱)」は当然、必要なのですが、それを見て来年度予算で要求するというより、今回は補正予算があったので、補正予算で手を打てばよかったのではないでしょうか。ほとんど要求は通っていないのですから、要求分を通すくらいの補正予算をやってもいいと思います。

飯田)提言のなかには、「国内総生産(GDP)比で2%を目指しながら徐々に増やしていく」ということが出ています。

高橋)しかも、「5年以内」と期限を区切っていますよね?

飯田)そうですね。

高橋)いままでは期限が入っておらず、2021年の総選挙では公約に入れることができなかったけれど、今回は「5年以内」という言葉が入れられたという話を聞きました。だから「当然ですね」と言いました。期限がなければ意味がないので。5年と言っていた人もいたし、元防衛大臣のなかには「積み上げでなくてはならない」と言う人もいました。

防衛費は「積み上げ」ではいけない

高橋)外交費、防衛費は海外との関係があるので、政治的にやるしかありません。積み上げではありません。

飯田)積み上げで行おうとすると、「去年はこの額だったから、例えば1割増で」というようなことになる。

高橋)それではいけません。なぜなら防衛費がアンバランスになると、戦争確率が高くなるのです。海外の防衛費が伸びているときは、目をつぶって伸ばすしか解がないのです。

自民・茂木幹事長、来年度予算の防衛費を6兆円台半ばに

飯田)昨日、茂木派のパーティーで茂木敏充幹事長が防衛費について、「来年度予算で6兆円台半ばを確保し、5年以内に対GDP比2%も念頭に、防衛力を抜本的に強化できる予算水準の達成を目指したい」と言っています。これは積み上げの部分に近いですか?

高橋)5年間、0.2%ずつ増やして、1兆円ずつ増やしていくという意味でしょう?

飯田)なるほど。計算としてはちょうど合うわけですね。5年以内、5年ギリギリのところで2%になる。

高橋)「ギリギリのところでやっていく」という意味で言ったのではないでしょうか。

飯田)しかし、それはGDPが伸びないのが前提ですよね。

高橋)少しかっこ悪いですね。

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