超高齢社会を迎える日本では「総合診療医」の育成が急務
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東京都医師会会長の尾﨑治夫氏が5月11日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。超高齢社会に向け、総合診療医の育成が必要な理由について語った。
専門医のなかに総合診療医が加わる
飯田浩司アナウンサー)イギリスやオランダでは、総合的に診ることができる能力を持った人たちで家庭医を構成しているということですが、日本で総合的に医療を教えるということはあるのですか?
尾﨑)今回、専門医制度が改革されて、「日本専門医機構」というものをつくり、内科も外科も全部そこで管理し、責任を持って養成していこうということになりました。各科の専門ではなく、総合的に診られる総合診療医も専門医の1つに加えようということになったわけです。
飯田)日本でもようやく始まった。
尾﨑)これからの超高齢社会を迎えるにあたって、「私は心臓しか診ることができません」という方では、ご高齢の方でいくつも病気を抱えていたり、障害を抱えたりしている人たちに対応できないですよね。今後は、いろいろな科のこともわかっていて、認知症や介護、在宅医療のこともわかっているような方が必要になります。
飯田)そうですね。
尾﨑)そのように広く診られる専門の人も養成しなければいけないということで、総合診療医が専門医のなかの1つに今回、加わったわけです。
総合診療医になりたい学生は200人~300人
飯田)いままでは、すべて学会にぶら下がるような形で細分化されてきた部分もあったわけですか?
尾﨑)そうです。
飯田)それでは、カリキュラムづくりから手探りという感じですか?
尾﨑)各大学には通常、「総合診療科」というものがあるのですが、その科で養成していくという建前になっているのです。ただ大学は大学で、専門の内科なら内科で分かれて、細分化した専門の教授がたくさんいるわけです。
飯田)内科のなかでも細分化している。
尾﨑)そういうなかで、学生さんの方は地域で貢献しようという気持ちで、卒業時に研修を始める人は多くいるのです。その際、研修でいろいろなところを回ります。そのときに教授から「君はどうするのだ」と聞かれ、「いろいろなものを診られるドクターを目指しています」と言うと、「君ね、広く浅くやっても使い物にならないよ。専門のところを追求してやった方がいい」という話を、いろいろな科に行ってされるのです。
飯田)教授から。
尾﨑)その結果、総合診療医を目指す人が最初は3~4割くらいいたのが、研修が終わったあとは1割以下になってしまう。
飯田)そうなのですね。
尾﨑)それが現状です。いま総合診療医になりたいというコースに行く人は、200人~300人くらいしかいないのです。日本には約80ヵ所の大学がありますから、8000~9000人が卒業するわけです。
飯田)そのなかで200人。
尾﨑)数千人というレベルでそういう人たちが出てこないと、将来の地域医療のなかで活躍してもらうには足りないわけです。
大学の教授が専門医を勧める理由
新行市佳アナウンサー)大学の教授が「専門家にならないか」と勧誘する理由は何ですか?
尾﨑)その科にとっては、専門領域の研究者を増やしていかないと成り立たないのです。大学としても、「こういう教授がいて、こういう研究やこんな最新治療ができます」というのを売りにしているところも多いですから。専門を極めていくということも大学にとっては必要なのです。しかし大学だけに任せておくと、総合診療医的な人材を養成できる環境ではなくなってしまうと思います。
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飯田浩司アナウンサーと新行市佳アナウンサーが、健康に関する疑問や予防法、症状、治療法などを聞きます