ウクライナ・キーウ出身の国際政治学者グレンコ・アンドリー氏が5月24日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。今後のウクライナ情勢について語った。
ウクライナのゼレンスキー大統領が「ダボス会議」でロシアへの制裁の最大化を求める
ウクライナのゼレンスキー大統領は5月23日、スイスで開催中の「世界経済フォーラム(WEF)」の年次総会(ダボス会議)でオンライン演説し、ロシアに対して最大限の制裁を科すよう国際社会に求めた。具体例としてロシア産石油の輸入禁止や、すべての銀行の国際金融からの遮断、貿易停止などを挙げた。
ロシアがウクライナに侵攻して3ヵ月が経過
飯田)きょうは5月24日です。2月24日にロシアがウクライナに侵攻してから3ヵ月が経ちます。この3ヵ月、どうご覧になってきましたか?
アンドリー)ロシアは当初「電撃戦」と言って、同時に多方面からウクライナを攻撃し、一気に制圧しようと考えていました。ウクライナからは大きな抵抗はないと見込んで作戦を行ったのですが、実際のところはウクライナが必死に戦い、電撃戦では制圧できないことが明らかになりました。
飯田)そうですね。
アンドリー)1ヵ月半くらい経ったころから、ロシアは逐次制圧に作戦を切り替えました。地方ごと、町ごとにウクライナの国土を破壊し、少しずつ国土をロシアに併合するという非常に野蛮な作戦に切り替えて、その作戦はいまも実行中です。
ウクライナ人にとっては、ウクライナ民族の生存を懸けた戦い
飯田)それに対してウクライナ側の戦い方ですが、西側の支援なども受けながら、粘り強くやっていくという形になりますか?
アンドリー)この戦争に敗北すれば、ウクライナ民族自体が絶滅させられることになります。ですので、生存を懸けた戦いです。これは比喩ではありません。もしウクライナの国土がロシアに征服されれば、抵抗するウクライナ人は全員殺されますし、抵抗していないウクライナ人も徹底的に洗脳され、意識はロシア人につくり変えられるのです。そうなれば、ウクライナは巨大な強制収容所になります。これはウクライナ人にとって、生存を懸けた戦いなのです。
飯田)グレンコさんご自身は、ウクライナにお住まいのご家族とは連絡を取られていますか?
アンドリー)取っています。キーウなのですが、キーウはいまのところミサイルが着弾している場所以外は安全なので、ミサイルさえ当たらなければ普通の生活です。普通ではありませんが、普通に近い生活ができています。
西側からのさらなる武器支援で変わるウクライナ軍の展開
ジャーナリスト・有本香)先日、駐日ウクライナ大使にも直接お話を伺いましたが、「今後はさらに西側諸国からの武器支援を得て戦っていく」とおっしゃっていました。今後、西側からの軍事支援を見込んでいるということですが、具体的にはどのような展開に変わるとお考えですか?
アンドリー)最近アメリカで「武器貸与法」が可決され、それによってアメリカ大統領は原則、無制限に必要なだけ武器を提供できるのです。いままでと違い、躊躇なく、最大限の武器供与が可能になります。それに合わせて、400億ドルの支援法案が可決されましたので、武器供与が最大化されることになります。
有本)そうですね。
アンドリー)主に陸戦なので、必要なのは榴弾砲や戦車、ロケットランチャー(ロケット砲)のような、こちらから領土を奪還するための武器です。ロシア軍は長期戦になることを見込んでいるので、彼らは彼らなりに占領地を要塞化しようと考えます。その要塞化されたところを、これらの武器で破壊する必要があるのです。
パトリオットの供与が可能になれば、空における形勢が逆転する可能性も
有本)初期のころからミサイル防衛のシステムが課題だと言われていますが、いかがでしょうか?
アンドリー)防空システムであるパトリオットの提供が行われると言う専門家もいますが、アメリカ当局は「パトリオットを送る」とは言っていないのでわかりません。もしパトリオットの提供が可能になれば、現在、ロシアの制空権はありませんが、空におけるロシアの優勢は逆転できるので、1つの大きな布石になると思います。
ウクライナが今回の戦争で勝たなければならないもう1つの理由
有本)駐日大使も、ゼレンスキー大統領が「我々はすべてのウクライナの領土・国土を解放していく」という意志を表明したことを強調されていました。グレンコさんがおっしゃったように、これはウクライナ民族としての存亡を懸けた戦いで、国民の皆さんもその共通認識を持っているということでしょうか?
アンドリー)そうですね。ゼレンスキー大統領はハト派なので、彼個人の考え方では、どこかで和平に持っていきたいはずなのです。
有本)もともとリベラルな人ですよね。
アンドリー)そうです。しかし、ここまで酷いことをするロシアを国民が許しません。大統領が和平に持っていきたくても、国民がそれを認めない。大統領も国民の気持ちに合わせて「領土解放まで戦おう」と言わざるを得ないのです。
有本)なるほど。
アンドリー)1つ大事なのは、どこかで和平交渉が成立しても、それはあくまでも戦争の延期になるだけだということです。今回はたまたまロシアの計画が甘かったのですが、次回はどうなるかわかりません。次は周到に準備してくるでしょう。犠牲者の数を最小限にするには、あくまでも今回の戦争で勝たなければならないのです。
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