中国はロシアのウクライナ侵攻から何を学んだか
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前国家安全保障局長の北村滋が6月27日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。米哨戒機の台湾海峡通過に対する中国の反発について解説した。
米軍の哨戒機が台湾海峡を通過、中国が反発
米軍のP8A哨戒機が6月24日、台湾海峡を通過したことを受け、中国軍東部戦区は25日の報道官談話で、「アメリカ側の行為は故意に地域情勢を破壊し、台湾海峡の平和と安定を危険に晒している」として「断固反対」を表明した。
飯田)台湾海峡をめぐる話題で、台湾について取り上げていきたいと思います。アメリカのバイデン大統領が来日したときに、「軍事的な対応はあるのか」という質問に対して「イエス」と答えたことがニュースになりました。アメリカの台湾情勢に対する関わり方は、どういうものであると思えばいいでしょうか?
北村)アメリカとしては、あの発言の後も米国の中国政府への対応は変わらないという形で言っていましたけれども、バイデン大統領のあの発言は実質的には3回目で、海外では初めてということです。私は現下の情勢から言うと、大きな抑止力になったのだろうと思います。
ロシアによるウクライナ侵攻を注意深く観察する中国
北村)長期的な観点では、2019年1月に習近平国家主席は台湾の再統一について、「軍事力の行使の可能性を排除しない」ということを明言しています。2021年の党創立100周年記念の演説においても、「台湾再統一に向けた我々の意志を過小評価する気はない」と言っています。
飯田)そうですね。
北村)長期的には、現在、中国の台湾統一に向けた意志は固いというように見ていいのだろうと思います。もちろん国際法上の地位や状況において、台湾とウクライナでは異なりますが、オペレーションとしての今回のロシアによるウクライナ侵攻については、その在り方を含めて、かなり注意深く観察しているのだろうと推測しています。
中国の台湾侵攻の隘路となるもの ~ロシアのウクライナ侵攻と比べ
飯田)ウクライナに関してはキーウを落として、短時間でウクライナを無力化するということが言われていましたけれども、結局それはできなかった。台湾に引き比べて考えると、斬首作戦のようなことも言われます。これは難しいということを理解しているのですか?
北村)それだけではないと思いますけれども、今回のロシアによるウクライナ侵攻は、大体20万人の兵員が投入されたと言われています。台湾を軍事的な形で侵攻する場合においては、いくつかの隘路(あいろ)もあるでしょうし、そういったものも含めて検討していると思います。それから、今回のロシアによるウクライナ侵攻における情報についての重要性も再認識したのではないでしょうか。
飯田)北村さんがいまおっしゃった隘路は、中国が台湾に攻め込もうとしたときのいろいろな障害として考えられることですが、海を越えていくのは1つの隘路、障害だと思います。他にはどのようなことが考えられますか?
北村)バイデン大統領の発言もそうだと思います。米国の介入の可能性があるのだということを認識したと思いますので。
習近平国家主席はどのような戦略で台湾統一を考えているのか
飯田)他方、台湾情勢に関しては、軍事的なオペレーションの部分がよく報じられたり議論されたりしています。北村さんはご著書のなかで、中国のそもそもの考え方として「戦わずして勝つ」ということを、孫子の言葉などを引き比べながら言及されています。その意味で言うと、戦わずして台湾の体制を崩壊させることも中国は考えているのでしょうか?
北村)いまの習近平さんは、「韜光養晦(とうこうようかい)」という鄧小平時代の路線を捨てたというように言われていますので、政策としては、むしろわかりやすい形なのだろうと思います。ただ、わかりやすい形が、先ほど飯田さんがおっしゃったような結果をもたらすのかどうかは別の話だろうと思います。
飯田)なるほど。
北村)例えば香港国家安全維持法の制定に向けた一連の取締りの動きも、台湾の総統選挙の年に行ったようなこともあります。どのような戦略で進めているのかということは、私も詳らかではないですけれども、わりと直截な形で政策が進められるのではないでしょうか。
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