フィリピン・マルコス新大統領にある「複雑なアメリカへの気持ち」

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外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が7月1日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。フィリピンの新大統領に就任したフェルディナンド・マルコス元上院議員について解説した。

2022年6月30日、マニラで、フィリピン大統領に就任し演説するマルコス氏(共同) 写真提供:共同通信社

フィリピンでフェルディナンド・マルコス氏が大統領に就任

フィリピンで約20年間の独裁体制を敷いた故マルコス元大統領の長男、フェルディナンド・マルコス元上院議員(64)が6月30日、大統領に就任した。アメリカと中国がマルコス氏への接近を図り、外交競争を繰り広げるなか、日本は林芳正外務大臣を派遣。南シナ海で軍事活動を強める中国をにらみ、マルコス新政権との関係を重視する姿勢を示した。

飯田)お父さんのやってきたことや、お母さんのことなどが思い出されますが。

フィリピンにとって愛憎関係にあるアメリカとの関係

宮家)アメリカとフィリピンの関係はいろいろな見方があるのですけれども、私の見るところは、結局、愛情と憎悪の関係なのです。もちろんアメリカだけの問題ではなく、その前に支配していたスペインとの問題もあります。

飯田)スペインの問題も。

宮家)フィリピンというのは、スペインとアメリカの悪いところが残ってしまった国、と言ったら失礼ですが、とにかく国としては難しい状況にあった。マルコス氏のお父さんのことを厳しく批判するのは簡単ですし、彼の統治は間違っていたとは思いますけれども、同時にお父さんはナショナリストだったのです。彼なりにフィリピンのことを考えて、旧支配体制だと言われればそれまでなのですが、この国を何とかしようとしていたところもあった。しかし、最後は反対派を力で抑えてしまったために、あのような結果になってしまいました。

故マルコス元大統領の失脚以来、親米ではないフィリピン ~米軍のいないところに中国が

宮家)1986年に彼は失脚したのですが、その後、フィリピンは基本的に決して親米ではありませんでした。アメリカに対する愛憎の「憎」の部分が残っていたと思います。そう考えてみると、1991年にピナトゥボ火山が大噴火して、米軍基地が使えなくなった時、そのときはアメリカに対する反発が強かったものだから、フィリピンの上院がアメリカとの基地提供協定の自動延長をしなかった。それでアメリカ軍はフィリピンから1回出ていくわけです。

飯田)スービックとクラークという大きな基地ですね。

宮家)その結果、南シナ海に真空が生まれて、そこに中国が入っていったわけですよ。その意味では、全てはマルコスさんのお父さんのせい、という訳ではないのだけれども、長い歴史のなかで、またあのマルコスの息子が帰ってきたというのも実に象徴的ではないでしょうか。

中国に対して揺れていたドゥテルテ前大統領 ~マルコス新大統領にはフィリピンの国益のためにもアメリカとの関係を正常化して欲しい

宮家)息子のマルコスさんの本音では、反米ではないかも知れないけれど、決して親米だとは思わないという複雑な気持ちがあるはずです。前のドゥテルテさんだって国内問題ではかなり厳しくやったけれども、中国に対してはかなり揺れていましたよね。

飯田)揺れましたね。

宮家)あのような揺れが、中国にとっていちばんありがたいことなのです。マルコスさんは、お父さんのことなど、いろいろな経緯やしがらみはあるけれども、フィリピンの国益を考えてアメリカとの関係を正常化しなければいけないということは考えて欲しいですね。

飯田)アメリカとの関係を。

宮家)その前提で、今回の日本の対応を見ていると、やはりフィリピンにフラフラしてもらっては困るという気持ちがあるような気がします。フィリピンはしっかり我々と一緒にいて欲しいと思いますね。

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