法人税収の増加には、物価高が寄与している

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ジャーナリストの佐々木俊尚が7月6日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。過去最高を2年連続で更新した国の税収について解説した。

法人税収の増加には、物価高が寄与している

「価格の優等生」タマネギ、モヤシの価格が上昇=2022年6月6日午後、東京都千代田区 写真提供:産経新聞社

67兆378億8500万円

財務省が7月5日に発表した2021年度の一般会計決算概要によると、国の税収は67兆378億8500万円となり、過去最高だった2020年度の税収(60兆8216億400万円)を更新した。更新は2年連続で、コロナ禍からの世界的な景気回復や円安による企業収益の増加で法人税収が伸びた。

飯田)税収は景気のいい話ですね。

景気がよくなり、企業の業績が上向くことによって税収が増えることが本筋

佐々木)よく「K字回復」と言われていますが、すべてが回復しているわけではなく、企業や分野によって、かなりバラつきがある。落ち込んでいるところはそのままだけれど、上がっているところは上がっている。二極化が進んでいるというのは問題があるのかなと思います。

飯田)二極化が進んでいることは。

佐々木)ただ、基本的に税収が増えるというのは、決して増税や消費税ではなく、景気がよくなり、企業の業績が上向くことによって税収が増えるというのが本筋だと思います。

飯田)企業の業績が上がることで。

佐々木)消費税を下げることによって、みんながものを買うようになって経済が回る。それによって税収が上がるというサイクルの方が正しいということです。

飯田)そうですね。

佐々木)どうしても緊縮派の人たちは、「増税して財政を立て直せ」ということを盛んに言いますが、そうではないということをもう1度言っていかなければならない気はします。

「財政健全化」と言っている人たちは、税収が増えていることをどう見ているのか

飯田)去年(2021年)から比べても6兆円強、7兆円弱くらい増えているということは、それだけで、単年ですが消費税2~3%はいけるのではないかという感じですよね。

佐々木)「財政健全化」と言っている人たちに、税収が増えていることをどう見ているのか問い詰めたいですね。

飯田)であれば、やはり経済を回した方がいいではないかという方向に。

物価が上がれば、「きょうのうちに買っておいた方がいい」と消費を刺激する

佐々木)経済を回すところで最近、気になっているのは、いまコストプッシュでインフレが起きているではないですか。エネルギー危機や食料品の値上がりで。

飯田)そうですね。

佐々木)物価が上がれば、明日の物価がきょうよりも高くなる。そうすると、「きょうのうちに買っておいた方がいい」と言って、みんながものを買うようになる。物価が上がるということは、消費を刺激することになるのです。

物価が上がっても、日用品は買わざるを得ない ~インフレが起きるとお金を使い、最終的には景気が上向く

佐々木)一見すると、物価が上がればみんな買わなくなると思うのだけれど、贅沢品は買わなくなるかも知れませんが、日用品は買わざるを得ないのです。日用品を買わざるを得なくなったときに、「きょうよりも明日、自分の持っているお金の価値が下がる」という予測ができると、「きょうのうちに使ってしまおう」という意識が働くので、インフレが起きると必ずお金を使うようになる、ということが経済学の世界でも言われています。コストプッシュインフレであっても、お金が回るようになるので、最終的に景気が上向くことにつながるのです。

飯田)最終的には景気が上向くことに。

佐々木)しかも、みんながお金を使うようになれば、企業の業績も上がる。今回、法人税収が増えているのは、企業の業績が上がっているからです。物価高が寄与している部分もかなりあるわけです。

ある程度は物価高を許容しないと景気は回らない ~いまのコストプッシュインフレはマクロの視点で見れば許容した方が景気回復につながる

佐々木)ある程度は物価高を許容しないと、景気は回らなくなるということです。逆に言うと、平成30年間のデフレ時代は物価がどんどん下がってしまい、景気も下に向いてしまった。そうするとますますデフレマインドが広がって、みんながものを買えなくなる。どうせものが安くなるのであれば、自分の手元のお金を大事にした方がいい。さらにデフレが起こると、たくさんお金を持っている高齢者の人たちの価値が下がらないから、世代間の交代が起きないなど、いろいろなことが言われていたわけです。

飯田)世代間の交代も。

佐々木)だからいまのコストプッシュインフレは、ミクロの視点で見ると「物価が上がって大変だ」ということはわかるのだけれど、マクロ視点で見たら、許容した方が景気回復につながるのではないかと思うのです。しかし、なぜかそこの視点が欠落している議論が多い。「物価が上がってけしからん」という意見一色になってしまっているのは、どうなのだろうと思います。

次に「賃金が上がるかどうか」がポイントとなる

飯田)あとは賃金が上がればという話にもなってきます。その部分が最後の1ピースと言われていましたけれども、なかなかこない。

佐々木)先日、日銀の黒田総裁が「家計の物価許容度が緩くなっている」というようなことを言って炎上していましたけれども、確かにその通りで、物価が上がり、ようやくこれが第一歩であるということです。

飯田)第一歩であると。

佐々木)黒田総裁はそう言っているのだけれど、第二歩として、ここで賃金が上がるかどうかを注視していかなければならない、ということをおっしゃっていましたが、まさにその通りです。

飯田)第二歩として。

佐々木)次の段階がくるかどうかが、いまの肝なのではないでしょうか。マクロの視点で見ると、注目度としては、物価は上がりました。ただ、これはコストプッシュインフレであって、現状では賃金に回っていない。しかし、それによって刺激されて企業の業績が回復してくれば、「次に賃金が上がるかどうかがポイントですよ」というところです。メディアも「そこを見ていきましょう」ということを議論すべきだと思います。それがないのが残念ですね。

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