「サハリン2」の日本企業の権益 再契約には厳しい条件を突きつけられる可能性も

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国際政治学者で慶應義塾大学教授の神保謙が8月5日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。「サハリン2」の権益について解説した。

「サハリン2」の日本企業の権益 再契約には厳しい条件を突きつけられる可能性も

ロシア・サハリン州の液化天然ガス基地(上)から運搬船に延びるパイプ=2009年(共同) 写真提供:共同通信社

サハリン2の権益について

飯田)日本は「サハリン2」について、石油と天然ガス事業の権益を有しています。「新しい運営会社設立をロシアが決定」というニュースが入ってきました。このままいくと、取り上げられてしまうことがあるのでしょうか?

神保)そうならないよう、経済産業省と日本企業が交渉しようとしているのだと思います。ロシアは新しい会社によって、いま出資している外国企業との再契約を果たすかどうか、1ヵ月以内に迫るということです。

再契約にはロシアが厳しい条件を突きつける可能性も ~出資比率の増資、ルーブル建てでの支払いなど

神保)現在、日本は三井物産が12.5%、三菱商事が10%出資しています。ガスはそのままだとパイプライン以外では持ち出せないので、一旦、液化天然ガスに変えて持ってくることになります。

飯田)液化天然ガスで。

神保)日本はガス消費量全体の9%弱ぐらいをロシアに頼っています。なかなか大きい割合だと思います。再交渉がなされるときの最大の懸念は、ロシアが厳しい条件を突きつけてくるのではないかということです。例えば「出資比率を上げろ」とか、出資の条件として「ルーブル建てで払え」などということです。

日本がロシアからのLNG輸入を断れば価格高騰のきっかけにも

神保)「世界的な経済制裁のなかでも、日本は俺たちを切れないだろう」ということで、交渉上、ロシアが日本に対して優位な形で進めてくるのではないかという懸念があります。

飯田)ロシアに有利な形で。

神保)もし日本が受け入れられないような条件になった場合、本当に日本がロシアからのLNG輸入を断って、他の国に代替する戦略を取ると、いまスポット価格でものすごく価格が上昇してしまっているため、価格高騰のきっかけになりかねません。

飯田)他の国から買うとなると。

神保)それをロシアは知っているので、日本に対して相当厳しい条件を突きつけてくる可能性があります。日本は難しい選択を迫られることになりそうです。

中東などの天然ガス産出国から買うことはヨーロッパの影響もあり厳しい選択に

飯田)液化天然ガスのスポット価格上昇の部分は、ロシアからの天然ガスが入ってこないヨーロッパ側が引き合いを強めているということです。ロシアとしても売り先がないなかで、「どちらが先に降りるか」というチキンレースのような状況になっているのですか?

神保)本来であればカタールなど、いくつかの中東における天然ガスを産出する国々との長期契約を含めて、分散させておくというのがリスク管理上では重要なのですけれども、ヨーロッパも同じことを考えているわけです。

飯田)ヨーロッパも。

神保)そうすると少ないパイをめぐって取り合いになるから、どうしても価格は急騰します。産出国に関して言うと、なるべく高く売りさばきたいので、スポット買い、短期契約にして売りさばくということになります。特に冬に向けて、どのような形で天然ガスを調達するのかは、かなり厳しい選択になると思います。

ロシアへの制裁を行いながら石油・天然ガスの安定的な調達をしなければならない ~原発の再稼働も進まず

飯田)だからといって、日本が制裁から大きく抜け出すわけにはいかないですよね。

神保)その通りです。日本はかつてない規模の制裁をロシアに対して行っています。他方でエネルギー安全保障という視点から、石油・天然ガスの安定的な調達をしなければいけない。もしこれで、原子力発電所の再稼働のようなことが進めば、少し日本にとっての交渉力が増していくことになるのですが、そのスケジュールもなかなか定めることができないという難しい情勢です。

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