キャスターの辛坊治郎が9月5日、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」に出演。新型コロナウイルス患者の全数把握見直しについて、「本質的な議論がない」と苦言を呈した。
新型コロナに感染した人全ての情報を報告する全数把握の見直しが2日から、宮城、茨城、鳥取、佐賀の4県で始まった。発生届の対象を高齢者ら重症化リスクの高い人に限定し、感染者の情報を入力する医療現場の負担を軽減するのが目的で、政府は今後、原則として全国一律の運用に移行する方針を示している。
辛坊)そもそも感染症法上の発生届は何のためにあるかという認識が、いろいろな人に欠けているという気がします。感染症法上の発生届がなぜ必要かというと、重大な伝染病が発生した際に、どこで発生したか、その患者がどんな容体か、周りに病気を広げる状況かといった情報をいち早く把握するためです。つまり、感染を広げないためというのが、感染症法上における発生届の最大の目的なんです。
例えば、感染した人の半分くらいが亡くなってしまうエボラ出血熱のような病気は、いち早く患者を隔離し、感染を広げないという観点から、全数把握は必要です。新型コロナも当初は、どのような病気か分からなかったので、それだけの警戒をする必要があったことは否定はしません。しかし、エボラ出血熱のような死亡率の高い病気ではないことが分かってくるとともに、感染スピードが速く、なおかつ多くの人が無症状という中で、エボラ出血熱と同じようなやり方を当てはめるのは無理だし、意味がないと思うんです。
このことは私だけではなく、多くの人が気づいたと思います。しかし、この本質的な議論をどこかですべきだったにもかかわらず、「一度始めてしまったから、やめられない」というふうになってしまいました。感染者の把握は本来、やらなければいけないのであれば全国一律でやるべきだし、やる意味がないのであればさっさとやめたほうがいいですよ。必要なんだけれども、人手が足りないからやめますという性質のものではないはずです。必要があるなら人手を手配してもやらなければいけないですよね。
いずれにせよ、話は単純です。何度も繰り返しますが、やらなければいけないことならばやらなければいけないし、やらなくていいことならばやらなくていいというだけの話です。患者の全数を把握し、感染を広げないよう監視するためのシステムであるはずなのに、発生届の対象を重症化リスクの高い人に限定してしまっては、本来の目的とは違ってきてしまいます。また、感染を入力されているかどうかが重要なのではなく、入院しなければいけない容体になった際にすぐに対応してもらえることが大切なわけです。
「もともとの目的が機能しなくなっているならば、政府は何をやっているのか」というのが、私の正直な気持ちです。
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番組情報
辛坊治郎さんが政治・経済・文化・社会・芸能まで、きょう一日のニュースの中から独自の視点でズームし、いま一番気になる話題を忖度なく語るニュース解説番組です。
[アシスタント]増山さやかアナウンサー(月曜日~木曜日)、飯田浩司アナウンサー(木曜日のみ)