「対中国・ロシア」というなかでのIPEFの目的と日本の役割

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東京大学先端科学技術研究センター特任講師の井形彬が9月7日、ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」に出演。西村経済産業大臣が出席するIPEF閣僚級会合について解説した。

中ロ首脳会談=2019(令和元)年6月5日、ロシア・モスクワ(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

西村経済産業大臣きょう渡米、IPEF閣僚級会合に出席

西村経済産業大臣は9月7日~11日までアメリカを訪問する。ロサンゼルスで開かれるアメリカ主導の新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の閣僚級会合に出席するためで、会合は現地時間8日~9日の2日間の予定で行われる。IPEFは5月に枠組みを立ち上げてから初めての対面開催となる。

新行)IPEFは米通商代表部のタイ代表とレモンド米商務長官が主催するもので、韓国やインド、東南アジア諸国など全14ヵ国が集まります。対面での開催は初めてということですけれども、ポイントはどんなところになるでしょうか?

井形)IPEFという枠組みについて、当初は「どれくらいの国が参加するのだろう」と懸念していた方々もいると思います。

14ヵ国が「具体的にどういう協力をするのか」が今後のポイント

井形)アメリカが本当はCPTPPという多国間の貿易枠組みに入ってくれれば済むはずだったのに、国内の状況でアメリカが抜けてしまった。でもアメリカとしては、この地域で経済活動を一緒に協力していきたいということで、 苦肉の策としてつくったのがIPEFです。

新行)苦肉の策として。

井形)ただ、ふたを開けてみると14ヵ国も入りました。東南アジアの国々もかなり入っていますし、出だしは成功したと言えるのではないでしょうか。14ヵ国が一緒に席に着きましたが、「では具体的にどういう協力をするのか」というところが今後のポイントになります。

サプライチェーンや経済安全保障について多国間で協力する枠組みはなかった

新行)14ヵ国が参加した理由は何でしょうか?

井形)アメリカ主導の新しい枠組みのなかに我々も入っていかないと、将来、不利になってしまうかも知れないという見方もあると思います。また、タイミングもよかったのではないでしょうか。

新行)タイミング。

井形)これまではサプライチェーンや経済安全保障について、多国間で協力できる枠組みはなかったのです。そこでアメリカは協力関係を進めようと、IPEFを立ち上げた。しかもサプライチェーンの協力やクリーンエネルギーについて一緒に話そうという新しい枠組みであり、各国も「ならばやろう」と考えたということです。

4つの柱の好きなところにだけ入ることが可能なIPEF

新行)IPEFには4つの柱がありますが、4つの柱すべてに合意するということではないのですか?

井形)そうではありません。IPEFというのは、4本柱それぞれについてみんなで議論し、もちろん全部に参加してもいいのですけれども、最終的に出てきた柱に対して「うちは1番と3番をやります」、「2番だけやります」というように、基本的には好きなところにだけ入るという「つまみ食い」ができる枠組みです。

新行)「できるところからやる」ということなのですね。

井形)本来、最も重要だと思われるサプライチェーン(供給網)の協力においては、「これは中国をサプライチェーンから外そうとしている試みだ」と中国から見られてしまう。そこに東南アジアの国が参加してしまうと中国から睨まれることになり、それは嫌なので「サプライチェーンの協力には入りません」というようなことが、今後はあるかも知れません。

安定的な供給を続けるために中国やロシアに依存しすぎている部分をどうするか ~今後のサプライチェーンのシフトをIPEFで話し合う

新行)そう考えるとIPEFという枠組みは、「対中国」というような意味合いではないということですか?

井形)国によって違います。オープンに「これは対中政策です」とはどこの国も絶対に言いませんが、対中政策の側面がないかと言えば、それはあります。

新行)対中政策の側面はある。

井形)特にサプライチェーンにおいて、なぜ「みんなで協力しよう」という話になるかと言うと、現状に問題があるからです。

新行)問題がある。

井形)現状の問題としては、グローバルなサプライチェーンを見ると、特定の物資、例えば半導体やレアアース、重要鉱石。電気自動車に必要な新たなバッテリーや、マスク、ワクチンなど医薬品の一部を中国に依存しすぎてしまっているということです。中国はこれまで、外交上で何か問題があると「レアアースを止めます」、「半導体を止めます」ということをやってきています。

新行)外交上で問題が起きると。

井形)つまり安定的に供給を続けるためには、中国からどこかに移さなければならない。あるいはロシアからどこかに移さなければならないということになります。では、「それをどうやるか」ということを話すのがIPEFなのです。

新行)供給網を拡大していく、選択肢を増やしていくということですよね。

井形)まさに多様化です。場合によっては「自国で代わりに生産しよう」ということもできるのですけれど、これまで中国やロシアに依存していたものを自国でつくろうとすると、無駄になってしまう。そこで全部自国でつくるのではなく、信頼できる国があれば、そこから輸入する形に変えればいいではないかと。サプライチェーンのシフトを今後、この枠組みで話していくのではないでしょうか。

IPEFのなかでの日本の役割はアメリカと東南アジアの緩衝材

新行)IPEFにおける日本の役割は何ですか?

井形)アメリカだけだと東南アジアの国々がついていきにくいところはあると思います。いまのバイデン政権は、かなり中国に対して強硬政策を取っています。そのアメリカが引っ張って対中強硬派的な色彩が強い政策を取ってしまうと、東南アジアとしては「どの柱にも入れないな」となってしまう可能性があります。それに対して、日本はもう少しバランスを取ろうとしているのです。

新行)その間に入って。

井形)中国あるいはロシアを刺激しすぎない形で、でも「意味のある協力をしたい」とアメリカを抑えつつ、東南アジアに対しても「だから協力しようね」と対応する。IPEFのなかの「接着剤」のような役割でしょうか。

新行)緩衝材というか。

井形)緩衝材ですね。その役割を果たせるといいのではないかと思います。

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