元航空自衛官で評論家の潮匡人が10月10日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。北朝鮮の一連の弾道ミサイル発射を受けて、日本がとらなければいけない対応について指摘した。
飯田)朝鮮中央通信の報道で先週あたりからの一連の発射は戦術核運用部隊の発射訓練だったということを言っていますけれども、これの意味するところはどう捉えたらいいのですか。
潮)基本的に弾道ミサイルというものは核兵器を含めたいわゆる大量破壊兵器を弾頭に搭載するというものですので、もともと特に今回のような短距離のものについてはいわゆる戦術核を搭載するという目的でつくられているものをずっと撃ってきたわけです。基本的にはもともと戦術核のための部隊だったということですので、改めて北朝鮮としてそのことを認めたという意味になると思います。
飯田)このところは発射についてあまり北朝鮮国内に報道していなかったなどという指摘がありましたけれども、今回は久しぶりに出してきましたね。
潮)そうですね。いろいろな見方があったわけですけれども、やはり北朝鮮の国内の経済などが相当疲弊をしているということもあったので、わかりやすく言えば「こんなことをやっても税金の無駄遣いではないか」というような批判も、大きな声としては出てこないでしょうけれども、当然くすぶっているという。そういうこともあってなかなか発表してこなかったのだという見方が、おそらく1つの側面としてはあったのだと思いますが、今回は直近の発射は彼らにとって成功だという認識でしょうから、それを受けていままでのこの一連の動きは全部そうだったのだというかたちでまとめて発表したということなのだろうと思います。
飯田)本当に時間もバラバラだし、距離も日本を飛び越えるようなものも含めてというのは、こんなに持っているのだということを見せたいのですか。
潮)そうですね。多種多様なものを持っているのだということを誇示したというのは1つあるのだろうと思います。また直近のものについては真夜中という時間帯でもありましたし、今朝(10日)の労働新聞には水中から発射している写真なども掲載されています。いわゆるSLBM、つまり潜水艦から発射される弾道ミサイルであった可能性が考えられるわけですけれども、そうなりますと海中からいつ撃ってくるか、どこから撃ってくるかわからないという状態です。我が国としては24時間365日常に警戒監視を行いつつ、いつでも迎撃できる体制をとらなければいけないという現実を改めて突き付けられているということになります。
潮)少し余計なひとことかもしれませんが、いわゆるイージスアショア、陸上型で24時間いつでも多くの人手をかけずに警戒をしていざというときに迎撃できるシステムを河野氏が防衛大臣のときにやめてしまいました。しかしもしいまからでも間に合うのであればそのことを真剣に検討するなどといったような抜本的な対策をとらないと海上自衛隊の疲弊はますます高まるだろうなと思います。
前日本銀行政策委員会審議委員・PwCコンサルティング合同会社チーフエコノミスト 片岡剛士)いまのお話からすると非常に北朝鮮のミサイル発射能力というのが高まっている一方で、日本の防衛というのが非常に脆弱というか、なかなかアンバランスというか、対応できていないような気がします。現状の日本の能力でミサイル発射に対して対応できないのかできるのか、その辺りをどのように考えたらよろしいのでしょうか。
潮)一般的に申し上げますと、例えば1発あるいは2発といったような小規模なミサイル攻撃ということであれば、現状のいわゆるミサイル防衛網で迎撃は十分可能だというように私は思います。ただよく言われているように同時に多数のミサイル攻撃が行われるいわゆる飽和攻撃ということになってくると、こちら側が迎撃できる能力にも限界がありますのでそれを突破して着弾してくる可能性があります。着弾してくるものの弾頭にもしいわゆる戦術核が搭載されているということになれば、都市部であれば万単位以上の犠牲が発生するでしょうからそこが厳しいという。つまり北朝鮮がどのような撃ち方をするかということによって答えは変わるというように思います。
片岡)なるほど。
飯田)そうすると撃たせないためにどうするかなどということも議論しなくてはいけないということになりますよね。
潮)そうですね。もちろんそのことも大切ですし、相手に対する実効的な抑止力を高めるという意味ではいわゆる敵基地攻撃能力といったようなものも十分検討に値すると思います。しかし同時に今回の発射で示されたようにやはりいつ撃ってくるかどこから撃ってくるかわからないという状態ですので、24時間の警戒監視がより可能な陸上型のイージスアショアのようなものも含めていわゆる盾の力も高めつつ、攻撃力などの矛の力も同時に整備していくという両面が必要だというように思います。
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