医師で医療ジャーナリストの森田豊氏が10月5日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。アニサキスによる食中毒について解説した。
アニサキスによる中毒症 ~発症が増加
新行市佳アナウンサー)秋の食中毒のなかで2番目に発症率の高い「アニサキス」による食中毒について伺います。
森田)アニサキスによる食中毒は「アニサキス症」とも呼びます。アニサキスという寄生虫の幼虫がいる魚介類を食べてしまうと、数時間後に幼虫が消化管の壁に食いつき、お腹の痛みなどを起こす感染症です。厚生労働省の統計によると、2006年には5件だった報告件数が、2016年には124件。2021年には344件に増加しています。
新行)どうして増えてきたのでしょうか?
森田)いくつか原因があると考えられています。1つは、医師や一般の方々がこの病気をよく知るようになってきたこと。さらに、診断に必要な胃カメラが普及したこと。また、保健所への届け出が必要なことなどが考えられます。
運送技術の発達によって生の魚を運べるようになったことも影響 ~95%が日本で発症
森田)最も多い原因として考えられるのは、冷凍せずに魚介類を運べるようになったことではないでしょうか。冷凍するとアニサキスは死ぬため、魚を冷凍して運搬していれば問題は起きなかったのです。しかし、運送技術の発達によって魚を生で運べるようになり、アニサキスも生きたまま魚とともに運ばれることになったのです。その魚の刺身などを食べ、食中毒になってしまう。
新行)生で運ばれることで。
森田)世界で起きているアニサキス症のうち、95%が日本で起きていると報告されています。刺身を食べる日本の生食文化が根付いているためでしょう。
森田氏もアニサキスによる食中毒を経験 ~取り除いてしまえば痛みは治まる
新行)森田さんも以前、アニサキス食中毒になったことがあると伺いましたが。
森田)数年前の真夜中、急に胃の辺りが痛くなったのです。翌朝、ニッポン放送の高嶋秀武さんの番組収録があったのですが、痛みをこらえて何とか収録を終えました。しかし、昼になっても痛みが変わらないのです。
新行)収録後も。
森田)そのとき、急に頭のなかに、前日に食べた肉厚のイワシの刺身が鮮明に浮かんできたのです。「この痛みはアニサキスだ」と自己診断して、すぐにかかりつけの消化器内科を受診し、「アニサキスですから取ってください」とお願いしました。
新行)自己診断して。
森田)胃カメラで見ると、案の定、アニサキスの幼虫が胃の壁に入り込んでいました。入り込んでいない幼虫の一部は、バタバタと暴れているような像が確認できました。
新行)アニサキスの幼虫が。
森田)胃カメラの管のなかに細い毛抜きのような器具を入れて、アニサキスを胃の壁から抜くと、すぐに痛みから解放され、午後には仕事に戻れました。
新行)取り除いてしまえば痛みはなくなるのですね。
森田)アニサキスの幼虫は2~3センチくらいで、肉眼でよく見えるのです。職業柄、きちんと記録に残そうと思って写真を撮りました。手元に写真があるのですが、半分くらいアニサキスの幼虫の頭が、胃の壁に入っているのが見えますね。
番組情報
医師が週替わりで登場。
飯田浩司アナウンサーと新行市佳アナウンサーが、健康に関する疑問や予防法、症状、治療法などを聞きます