食中毒のリスクが潜む「2日目のカレー」
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医師で医療ジャーナリストの森田豊氏が10月7日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。2日目のカレーと食中毒について語った。
危険な2日目のカレー
新行市佳アナウンサー)秋に多い食中毒ですが、今回は意外な食中毒について教えていただけますか?
森田)よく1日常温でおいたカレーは美味しいと言われますが、聞いたことはありますか?
新行)「美味しい」というのは聞いたことがあります。
森田)でも、あまり食べない。
新行)常温では放っておかないですね。冷蔵庫に入れます。
森田)冷蔵庫に入れて、また加熱して食べるのですね。なるほど。2日目のカレーは確かに美味しいようなのです。野菜や肉などの具から流れ出す旨味のもとが増えたり、昆布の出汁などに多く含まれるグルタミン酸や果糖などがルーのなかに溶け出すのです。
新行)ルーのなかに。
森田)同時に、とろみを増すデンプンや繊維質もルーのなかに溶け出して、旨味やとろみを備えたマイルドなコクが生まれます。ただし、「食中毒予防」の観点から考えると、2日目のカレーは好ましくないという話です。
加熱しても死滅しない「ウェルシュ菌」
森田)多くの細菌は熱を加えることによって死滅するのですが、加熱しても死なない細菌があり、その代表例がカレーのつくり置きでしばしば問題になるウェルシュ菌です。
新行)ウェルシュ菌。
森田)これが食中毒の原因になると考えられています。ウェルシュ菌のなかには熱に強いものがあって、常温で増殖するのです。特に43度~45度くらいの、すなわち鍋を常温で冷ましている間に増殖しやすい。翌日再び加熱しても、細菌は死なないということです。
新行)加熱しても死なないのですか。
森田)ですからカレーは大量に調理するのを避け、調理後はなるべく早く食べてしまう。保存する場合は早く冷めるよう、容器に小分けして冷蔵庫に入れるということが大事です。
新行)冷やすことはいいのですね。
森田)43度~45度くらいで増殖しやすいため、この温度の期間をできるだけ短くすることが大事です。
食中毒を防ぐための3原則 ~菌を「付けない」「増やさない」「やっつける」
新行)改めて食中毒の予防について、気をつけなければいけないことを教えてください。
森田)さまざまな食中毒がありますが、食中毒を防ぐためには、菌を「付けない」「増やさない」「やっつける」という3原則が大事です。
新行)それが3原則なのですね。
菌を付けない
森田)菌を付けないというのは、食材をよく洗ったり、分けるということです。また、手にはさまざまな雑菌が付着していますので、調理や食事の前には十分な手洗いを行う。そして調理で使用したまな板などの器具は、きれいに洗浄することが大切です。
新行)菌を付けないために。
森田)生肉などの保管に関しては、菌が広がらないように他の食材と分け、密封できる容器に入れることが大事です。
菌を増やさない
森田)2つ目の増やさないというのは、低温で保存するということだと思います。細菌の多くは高温多湿な環境で増殖が活発になるのですが、10度以下では増殖が遅くなり、マイナス15度以下では増殖が停止します。
新行)マイナス15度以下で増殖が停止する。
森田)冷蔵庫に食材を詰め過ぎると冷えにくくなってしまうので、容量の7割くらいを目安に入れていただき、冷蔵庫内の通気をよくすることが大切です。しかし冷凍庫の場合は、冷凍された食材同士が他の食材を冷やすことが多いので、たくさん入れても大丈夫だと思います。
菌をやっつける
森田)3番目のやっつけるですが、これは原則、加熱処理です。ほとんどの細菌やウイルスは加熱によって死滅しますので、肉や魚はもちろんのこと、野菜なども加熱して食べれば基本的には安全です。目安としては、お肉は中心部を75度で1分以上加熱するということです。
新行)食欲の秋ですが、このようなポイントをしっかりと押さえて食を楽しんでいきたいですね。
森田)特に日本人は、生で食材を食べる文化がありますから、注意が必要です。ただ、知識をきちんと持っていれば、美味しいものを安全に食べられるのではないかと思います。
番組情報
医師が週替わりで登場。
飯田浩司アナウンサーと新行市佳アナウンサーが、健康に関する疑問や予防法、症状、治療法などを聞きます