「円安は日本経済の危機」の『嘘』 高橋洋一と青山繁晴が解明
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作家で自由民主党・参議院議員の青山繁晴と、数量政策学者の高橋洋一が10月19日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。円安のいま、日本政府がするべきことについて解説した。
円安のいまはサプライチェーンの担い手を中国から奪うチャンス ~円安を逆手に取り、これまでにない日本経済のあり方を探るべき
飯田)株と為替の部分ですが、為替について、1ドル=149円台まできています。1990年以来、32年ぶりの安値と言われていますが、どう見たらいいのでしょうか?
青山)私は自由民主党のなかでも、「この円安を逆手に取って、いままでの日本経済の思い込みを脱する機会だ」ということを何度も申し上げています。
飯田)円安を逆手にとって。
青山)国会の外で申し上げているのは、いままでは1ドル=100円で日本国内で部品をつくっていた。それを海外に出すときには当然1ドルになるわけですが、いまは150円ぐらいかけても、外に出したときは同じ1ドルになるのです。
飯田)そうですね。
青山)その差で賃金を上げてもいいし、コストをかけてもいい。明らかに有利になったのです。いままでは中国にサプライチェーンを奪われていましたが、中国もコストが上がっているので、日本が奪い返せるのです。「最終製品をつくれなければダメだ」という思い込みをやめて、いま世界経済は統合されていく時代なので、サプライチェーンの担い手を中国から奪ってしまうのです。
飯田)サプライチェーンの担い手を日本が奪ってしまう。
青山)そのためには、この為替は絶対に有利なのです。逆に、円高では、それができるはずがありません。いまほどよい機会はないのです。
飯田)円安のいまが有利。
青山)岸田総理以下がいままでの思い込みを捨てなければいけません。安倍さんを失ってから、岸田総理は財務省に近付いている感がありありとしているので、むしろ為替を逆手に取り、財務省の考え方とは違う、いままでにない日本経済のあり方を探っていくべきなのです。
飯田)これまでにない日本経済のあり方を。
青山)おそらく敗戦後の日本経済で、これほど円安に振れたことはいままでありません。経済学的に不正確な言い方ではありますが、逆にそのようなラフな見方がいま必要ではないかと思っています。
円安は経済成長率に2%の下駄を履かせてもらうようなもの ~円安の何が悪いのか
飯田)円安について、高橋さんのお考えはいかがでしょうか?
高橋)「円安の何が悪いのか」と私はいつも言っています。経済学で言うと、自国通貨安は「近隣窮乏化政策」というもので、自国はいいけれど他国は悪くなるという状況です。
飯田)近隣窮乏化政策。
高橋)今回の円安によって、日本の経済成長率は2%ほど下駄を履かせてもらっている感じなのです。
飯田)2%の。
高橋)「1990年以来、32年ぶり」とよく言われますが、1990年の経済状況はどうだったかと言うと、名目経済成長率が大体8%ぐらいで、実質経済成長率が5%でした。失業率が2%で、インフレ率が3%でした。何が悪いのか……。「32年前に戻れるならいいではないか」というぐらいです。
飯田)そうですね。
高橋)みんなこれを「悪い」と思っていますが、すごくいい状態なのです。近隣窮乏化というのは、普通は他の国から文句が出るのですが、いまは文句がこないのでラッキーです。
青山)それは初めてですよね。
飯田)それどころか、バイデン大統領はドル高容認と言っています。
高橋)IMFの世界経済見通しでも、来年(2023年)の日本は先進国のなかでも高い成長率が予測されています。これは下駄を履かせてもらっているということなのです。そして、日本回帰の絶好のチャンスでもあります。
「サプライチェーンを中国から奪う」という時代に
飯田)サプライチェーンの見直しというのは、まさに経済安全保障の議論のなかでずっと言われていたことですが、ここまでの為替水準になると、いろいろなものを持って来られますし、実際にそのような企業もあります。
青山)経済安全保障推進法などは、高市さんなどとも連携して実際に法律になっていますが、あの考え方も「中国からサプライチェーンを奪う」というところまではいっていません。現実が追い越してしまったので、法改正はもちろんのこと、追い付かなければいけません。
飯田)現実に。
青山)「サプライチェーンを奪う」という時代になっているのです。あの法律は、「なるべく中国に獲られないようにしましょうね。でもサプライチェーンの中軸は中国なので、防ぎましょう」という考え方の法律に留まっています。
飯田)経済安全保障推進法は。
青山)前に進まなければいけません。自ら法改正をしないといけないのです。自らつくった法律は、自ら変えないといけません。
中国から日本に戻りたいという企業も少なくない
高橋)安倍さんは(中国から)戻ってくる企業に補助金を出しましたよね。今度の対策で補助金はあるのでしょうか?
青山)基本的にはあるのが前提です。
高橋)いまはもっと増えるはずです。実際、戻りたいという人も多いです。
青山)多いですね。
高橋)中国は安全保障上のリスクがあるし、コストを考えても戻りたいと。その政策が行われたら企業は戻るので、いまがチャンスだと思います。
中国はカントリーリスクの塊
青山)かつてアジア通貨危機のときに、「カントリーリスク」ということがずいぶん言われました。最近はやや死語のようになっていますが、中国はカントリーリスクの塊なのです。そのようなところにサプライチェーンを依存したくないという思いは、日本だけではありません。
高橋)カントリーリスクは日本貿易保険(NEXI)が発表しています。A~Hまでカテゴリーがあって、ロシアはHぐらいなのですが、確か中国はCぐらいでした。あり得ませんよね。
青山)甘すぎますね。
高橋)政府機関のなかで、そのように甘くしているということです。
飯田)技術を盗まれてしまうリスクもそうですし、罰金のようなものを科せられたり、人が拘束されるなど、いろいろなことが頭をよぎります。
青山)カントリーリスクとしては、アジア通貨危機のときに言われた諸国よりも根深いですし、いまの中国共産党大会を見ていても、改善される見通しがないどころか悪化しています。
飯田)中国は。
青山)ますます個人崇拝の道に進んでしまって、誰も何も言えなくなっている。そんななかで、経済だけがうまく資本主義で回るはずがありません。独裁の手助けをさせようとしているだけです。本来の「自由意志によって経済を司る」という考え方がまったくないので、巨大なカントリーリスクです。
飯田)巨大なカントリーリスク。
青山)アジアで本当に資本主義国として自立できる可能性があるのは、日本しかありません。円が安くなったと言ってもGDPは世界3位なのですから、発想の逆転が必要です。
飯田)発想の逆転が。
円安をネガティブに捉えるのはなぜか
青山)メディアはとにかくネガティブなことが好きで、私は作家でもあるのですが、本のタイトルをなるべくネガティブにして欲しいというデマンドがあるくらいです。77年間の敗戦国の考え方が根っこにあるのだと思います。
飯田)確かに、新聞を開けば「日本はダメだ」という報道をよく目にします。
青山)新聞だけでなく、本屋さんに行ってもネガティブな本は多いです。円安についても、すぐネガティブに考えてしまう。「安くなった=ネガティブ」ということは、本来の経済の考え方ではありません。
高橋)為替について、「円高のときにネガティブに考えるし、円安のときもネガティブに考えてどうするの?」といつも思います。
飯田)適正水準はどこなのだという話ですよね。
高橋)GDPが減ってしまうので、円高のネガティブはわかります。ただ、円安でネガティブになってしまったらいけないだろうと思います。
なぜ円安になるとGDPが伸びるのか
飯田)企業の実績を見ても、「税収は70兆円までいくのではないか」と言われていますよね。
高橋)いきますね。法人企業統計というものがありますが、あれでも企業の収益は過去最高です。「なぜ円安になるとGDPが伸びるのか」という説明もあまりされませんよね。
飯田)されませんね。
高橋)簡単に言うと、円安では輸出関連が有利になって、輸入関連が不利になります。世界で競争するので、輸出関連の方がエクセレント・カンパニーが多いのです。有利なエクセレント・カンパニーに他のデメリットを平均的に与えると、総合的にプラスになるというだけのことです。ですので、どこの国も実は自国通貨安の方がGDPは伸びるのです。これは輸出依存度に関係ない世界であり、常識です。もしこれを破ってくれたら、ノーベル賞を獲れると思います。
円安で最も儲けているのは日本政府
飯田)普通に生活していると、円安になった場合、特に輸入しているものの物価が高くなってしまうので、デメリットになります。そこは政策でカバーできるということでしょうか?
高橋)国全体がプラスになりますよね。大事なことは、「国のなかで誰が最もプラスになったのか」を探すことです。そうなると、日本国政府が最もプラスです。日本国政府は約180兆円の外債投資をしているので、含み益だけで40兆円ほどあります。小泉政権のときに、私はこれを埋蔵金と呼びましたが、今回もまた同じことを言っているだけなのです。
青山)高橋さんが小泉政権のときにあった埋蔵金は、60兆円ほどでしたか?
高橋)そうですね。それに外為も入っているのです。もちろん出しましたよ。当時はそこまで円安ではなかったので、あまり出せませんでしたが、今回はすごいですからね。
青山)いまでも40兆円ほどありますよね。
高橋)40兆円くらいあります。最も儲けているのは誰かということを議論すればいいのです。それは日本国政府なのですから。
円安を活用するためには、消費税減税も含めて、いままで財務省が否定してきた政策を取らなければならない
青山)当然、消費減税も考えるべきだと思います。岸田総理は「社会保障の財源ですから」と言いますが、私は安倍政権の時代に消費減税を主張し、安倍さんに「それは逆ですよ。目的税化してはいけません」といつも言っていました。
飯田)安倍元総理に。
青山)もともと竹下政権のときに、目的税にはしないという志があったのですから、そこから外さないといけないのです。円安を活用するためには、消費税減税も含めて、いままで財務省が否定してきた政策を取らなければいけません。そうしなければ岸田政権は反転攻勢もできないと思います。
高橋)心強いですね。
飯田)岸田さんにそれができるのかどうか。先ほど青山さんが指摘されましたが、「安倍さんが亡くなってから、より財務省に近くなっている」ということは、対応が難しくなっているのでしょうか?
青山)岸田さんが寄って行ったというよりは、財務省が「グッ」と身を乗り出してきた感じが明らかにあります。安倍さんを失って、急にせり出してきました。
飯田)防衛の話でいくと、法人税や所得税など、税金を上げる話にいつの間にかすり替わっているのは、まさにそういうところなのですね。
青山)そうなのです。
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