オーストラリアが安全保障上のパートナーとして日本を選ぶのはなぜか
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外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が10月24日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。オーストラリアと日本の関係について解説した。
似たところの多い日本とオーストラリア
飯田)岸田総理とアルバニージー首相による日豪首脳会談が週末(22日)に行われました。宮家さんの産経新聞のコラムを拝見しますと、宮家さんも少し前のタイミングでオーストラリアに行かれたのですね。
宮家)たまたまですけれどね。オーストラリアと日本の関係で言うと、昔は良好な経済関係もありましたが、1度は戦争もし、いろいろと難しい問題があった。ですが、この15年で確かに関係は大きく変わったと感じていました。
飯田)この15年で。
宮家)オーストラリアも対中関係では、政権交代のたびにいろいろ揺れていました。それは日本も同じです。1972年に(中国と)国交正常化したのも日本と似ているし、戦後、軍事にはお金をあまり使わず、経済中心でやってきたところも似ています。
オーストラリアの対中政策の厳しさは後戻りできないほど強い
宮家)似たところも多いのだけれど、最近のオーストラリアは対中関係が厳しくなったと言われているものの、「本当だろうか」というのが実は正直なところだったのです。それをこの目で確かめてみようと思って行きました。結論から言うと、オーストラリアの対中政策の厳しさは不可逆的な、「後戻りできないくらい大きく変わった」という印象をオーストラリアの識者から直接聞いて感じました。
飯田)後戻りできないくらいに。
宮家)中国との関係が決定的に悪くなったのは2017~2018年です。そもそも中国はオーストラリアを小国として下に見ていたのです。そして、ついにルビコン川を渡ったという印象を受けました。
オーストラリアの安全保障を考えると日本は欠かせないパートナー ~海洋国家同士の協力の枠組みが広がっている
宮家)それに比べて、オーストラリアは日本との関係はとてもいい。オーストラリアの立場も確かに西側ではあるのだけれど、どちらかというと中国とは是々非々でやってきたでしょう。アメリカもウクライナ情勢で忙しいし、中東にもまだテロが残っている。ヨーロッパがわざわざ南太平洋まで来てくれる可能性も少ない。そこでオーストラリアの安全保障をどうするか考えたときに、近くを見回してみたら「日本がいるではないか」となるのですよ。
飯田)いちばん近いのは日本だと。
宮家)南太平洋は、いままでは「太平」だったわけです。ところが中国が南シナ海まで下りてくると、「太平」ではなくなったのです。インドネシアの南はオーストラリアですから。
飯田)そうですね。
宮家)オーストラリアも海洋国家だと私は思っているので、その意味では、危機感を日本と共有するようになった。その意味では「フラフラしなくなっているのだな」と思いました。今回の共同宣言は、2007年以来15年ぶりのものです。2007年というと安倍さんが行った年でしたね。
飯田)第1次政権。
宮家)私も付いて行ったのを覚えています。
飯田)そうでしたか。
宮家)当時の共同宣言はそれなりに歴史的な意味があったと思いますが、今回は「新たな」という言葉が入っています。安全保障に関して、緊急事態のときにどう対処するかまで踏み込んでいるという意味では、安全保障上の協力と呼ぶのか、準同盟と呼ぶのか、まあ、呼び方はいろいろあると思いますが、やはり海洋国家同士の協力の枠組みが広がっているという印象を受けました。
海洋国家同士のつながりが大切
飯田)オーストラリアも政権が変わったばかりで、もともとは保守連合(自由党、国民党)だったのが労働党に代わった。
宮家)そのときに若干心配しました。アルバニージーさんは左ではないけれど、どれくらい変わるかと思っていたら、何と首相になった翌日ぐらいに日本に来ました。
飯田)そうでしたね。
宮家)「日豪関係は変わらないのだな」という印象を持ちました。
飯田)宮家さんはコラム「宮家邦彦のWorld Watch」のなかでも指摘されていますが、日本はやはり海洋国家同士のつながりが大事だと。
宮家)やはり大事です。シーレーンは南シナ海を通り、オーストラリアの近くを通ってインド洋まで行き、ペルシャ湾に行くわけですから。日豪共通の利益ということだと思います。
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