ジャーナリストの有本香が10月25日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。コンサート会場に大規模空爆を行ったミャンマー国軍について解説した。
ミャンマー国軍がコンサート会場に大規模空爆
ミャンマーの独立系メディアによると、ミャンマーで実権を握るミャンマー国軍は北部カチン州で10月23日、対立する少数民族組織「カチン独立機構」の創立記念日を祝うコンサート会場に大規模な空爆を行った。犠牲者にはアーティストや市民も含まれ、これまでに少なくとも60人以上が死亡、100人以上が負傷している。
飯田)カチン州というと、ミャンマーのかなり北の方です。
有本)いちばん北ですね。
飯田)中国と国境を接している部分でもあります。
少数民族の武装勢力地域にミャンマー軍による大規模な空爆
有本)このところミャンマー軍による数十人が亡くなるような大規模な空爆が、少数民族の武装勢力がいる地域で行われています。私がミャンマーに関して一緒に活動させていただいている方のなかに、井本勝幸さんがいらっしゃいます。井本さんはタイとミャンマーを拠点に、政府開発援助(ODA)も含む農業支援をされているのですが、いまや逃れてくる難民の方々を手弁当で支援しているのです。
飯田)そうなのですか。
有本)「井本さんのやることだったら応援しよう」と、日本から寄付を送ってくれる人たちがいるのですが、本業そっちのけで難民の方々を助けています。というのも、ミャンマーのカレン州には日本の支援でできた街があり、そこで農業支援をしていたのですが、ここも空爆を受けて本来の活動ができなくなってしまったのです。
ミャンマーからタイに逃れてくる難民を支援する井本氏 ~国軍側と少数民族の武装勢力を和平のテーブルにつかせた
有本)国境を越えてタイに逃れてくる難民の人たちを、一生懸命支援している毎日のようです。数ヵ月前までは井本さんのFacebookなどに「難民キャンプ、いまはこんな感じですよ。決して環境がよくありません」というような情報が伝えられていたのですが、最近は全然上がらなくなってしまった。
飯田)そうですか。
有本)井本さんは人道支援活動をしていて、ここ10年ぐらいは向こうで活動されているのですが、その途上で内戦していた少数民族の武装勢力の人たちとミャンマー国軍……これはいまの国軍というより、前体制のときなのですが。
そんな井本氏でもSNSの発信ができない2つの理由
有本)テインセイン政権までのときですね。その国軍側と少数民族の武装勢力を、民間人にも関わらず、和平のテーブルにつかせたという人なのです。両方に人脈があるのですよ。その井本さんでも、ここのところFacebookなどに状況を出すのははばかられるようなのです。それには2つの理由があって、1つ目は悲惨さが増しているということです。それこそ足のない方々などが普通にいる。
飯田)ケガをされて。
有本)もう1つは、国軍からの締め付けが非常に厳しくなっているようです。人脈を持っている井本さんでも、たくさん発信しているとどうなるかわからないという状況なのでしょう。
中国が資本を出している地域は空爆されない ~ロシア・中国とミャンマー国軍の関係が問題
有本)もう1つ、日本にとっての問題は、日本が支援した地域は空爆で人が入れなくなってしまったのですが、実はタイとの国境に中国が資本を出し、中国のお客さんが多いカジノがあるのです。昔からあって、私も行ったことがありますけれど、ここは空爆されていません。
飯田)そうなのですね。
有本)ミャンマーに関して言うと、軍が頼りにしていたのはむしろロシアだったのですが、ロシア・中国とミャンマー国軍との関係が非常に問題である。
飯田)むしろテインセイン政権のときには、「そこも見直そうか」という気運があったと思います。
有本)それで民政移管していくという流れだったのですが、そのころの国軍とは完全に変わってしまったのです。中国の権益の部分だけ守られているという不思議な状況です。さらに中国は、ミャンマーの港を押さえていますよね。
飯田)そうですね。
有本)中国はここからパイプラインを引っ張っています。ただ、ミャンマー国軍側もそこを押さえてしまっているため、中国もミャンマーに対して好き勝手できないという状況ではあります。
タイ国境に逃げる現地協力者を助ける動きが日本にない ~日本の政治家は現地に飛んで救い出すべき
有本)では日本というプレイヤーがどこにいるのかというと、日本が支援した地域は空爆され、日本の要人が向こうに行ったときに通訳などを務められたような現地協力者は、着の身着のままでタイ国境に逃げてきています。
飯田)そうですか。
有本)この協力者の方々を日本が助けられないのです。去年(2021年)、アフガンのときも言われたのですが、法律上の制約で自衛隊が助けられないという問題以前の問題です。ミャンマーからどんどん逃れている人がいて、そのなかに現地協力者がいたら、隣国タイの大使館から動いてでも日本人が助けなければいけない。
飯田)助けが必要な日本の協力者の方を。
有本)あるいは、日本で「ミャンマー関連のことをやっています」という政治家は、場合によっては現地に飛んででも、国境地帯から救い出さなければいけないのです。そうしなければ、二度と日本に協力する人は出てこなくなります。しかし、何も動いていないのです。この辺りの状況だけは、非常に生々しいところも含め、永田町と積極的に情報共有していこうと思っています。
飯田)ここで、ことなかれ主義に陥ってしまってはいけませんね。
有本)それと縦割りなのですよね。「ミャンマーのことはミャンマーでしょう」というような。
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