【Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね　第1084回】

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信する「Tokyo cinema cloud X（トーキョー シネマ クラウド エックス）」。

今回は、11月11日公開の『あちらにいる鬼』と『すずめの戸締まり』をご紹介します。

画像を見る（全15枚） 『あちらにいる鬼』

映画館で観たい！『あちらにいる鬼』　～瀬戸内寂聴さんをモデルにした傑作小説が、待望の映画化！

原作は、直木賞作家・井上荒野による同名小説。父である作家・井上光晴と母、そして瀬戸内寂聴さん。実在した男女3人をモデルに、彼らの特別な関係を創作した物語が、待望の映画となりました。

倫理や常識さえも超えた、三者三様の“愛の形”とは……。

『あちらにいる鬼』

『あちらにいる鬼』のあらすじ

1966年、人気作家の長内みはるは講演旅行をきっかけに、戦後派を代表する作家・白木篤郎と出会う。それぞれに妻子やパートナーがありながら、2人はやがて男女の仲となる。

一方、白木の妻である笙子は、夫の奔放な女性関係を黙認。夫婦として平穏な生活を保っていた。

肉体だけの関係に終わらず、“書くこと”を通じてつながりを深めていく、みはると白木。そんななか、みはるは白木に、ある決意を告げる。

「わたし、出家しようと思うの」

『あちらにいる鬼』

『あちらにいる鬼』のみどころ

主人公の長内みはる、後の寂光を演じたのは、寺島しのぶ。得度式のシーンでは、自身の髪の毛を剃髪。文字どおり、体当たりでこの役に挑みました。

激しい恋愛模様、出家に至るまでの心の移り変わり。その激動の半生を、時に無邪気に時に狂おしく体現し、まさに“役を生き抜いた”という表現がぴったりの熱演をみせています。

そして白木篤郎役には、豊川悦司。嘘つきでどこか捉えどころのない、艶やかな色男ぶりは必見。

また白木の妻・笙子を演じたのは、広末涼子。穏やかな表情の奥底に激情を滲ませる好演には、これまでの出演作とは違った魅力を堪能することができますよ。

さらに高良健吾、村上淳、丘みつ子、蓮佛美沙子、佐野岳、宇野祥平といった実力派俳優たちが脇を固め、みはると白木夫妻を取り巻く人間模様を紡いでいます。

『あちらにいる鬼』

共犯とも連帯とも捉えられる不思議な空気感に包まれた人間関係が、ドラマチックに展開される本作。その底辺からは、作家としてのお互いへのリスペクト、男女の情愛、そして女性同士の信頼といった“魂の結びつき”が感じられ、いわゆる“不倫もの”とは一線を画した濃密な人間ドラマとして、魅了される人も多いことでしょう。

偶然にも、本作は、2021年に寂聴さんの訃報が発表された日と同じ11月11日に封切りされました。生前の寂聴さんは、はるみ役を寺島しのぶが演じることを、とても喜んでいらっしゃったとか。

お空の上で、本作をどのようにご覧になっているのか。それもちょっぴり、気になるところです。

『すずめの戸締まり』

映画館で観たい！『すずめの戸締まり』　～扉の向こうにあるものは……

全世界待望！　新海誠監督最新作。日本各地の廃墟を舞台に、災いの元となる“扉”を閉めていく少女・すずめの成長を描いたロードムービー。

旅の青年、白い猫、小さな椅子、そして扉の鍵。4つのキーワードとともに驚きと困難が続く、すずめの旅。それでも勇敢に、前へ前へと進んでいく彼女の姿に、一筋の希望の光を見出す人も多いはず。

本作が声優初挑戦となった原菜乃華、松村北斗による、瑞々しい声の演技にも注目ですよ。

『あちらにいる鬼』

『あちらにいる鬼』

2022年11月11日（金）から新宿ピカデリーほか全国ロードショー
出演：寺島しのぶ、豊川悦司、広末涼子、高良健吾、村上淳、蓮佛美沙子、佐野岳、宇野祥平、丘みつ子、夏子、麻美、高橋侃、片山友希、長内映里香、輝有子、古谷佳也、山田キヌヲ

監督：廣木隆一
脚本：荒井晴彦
原作：井上荒野「あちらにいる鬼」（朝日文庫）
音楽：鈴木正人
製作：中西一雄、小西啓介、津嶋敬介、池邉真佐哉
企画・プロデュース：井上竜太
プロデューサー：小室直子、小西啓介
ラインプロデューサー：湊谷恭史
エンディングテーマ曲：「恋ごころ」浜田真理子（美音堂）
製作幹事：カルチュア・エンタテインメント
企画・制作：ホリプロ
制作協力：ダーウィン
配給・宣伝：ハピネットファントム・スタジオ
(C)2022「あちらにいる鬼」製作委員会
公式サイト　https://happinet-phantom.com/achira-oni/

『すずめの戸締まり』

『すずめの戸締まり』

2022年11月11日（金）から全国東宝系にてロードショー
声の出演：原菜乃華、松村北斗、深津絵里、染谷将太、伊藤沙莉、花瀬琴音、花澤香菜、神木隆之介、松本白鸚

原作・脚本・監督：新海誠
キャラクターデザイン：田中将賀
作画監督：土屋堅一
美術監督：丹治匠
音楽：RADWIMPS、陣内一真
主題歌：RADWIMPS「すずめ feat. 十明」「カナタハルカ」
配給：東宝
(C)2022「すずめの戸締まり」製作委員会
公式サイト　https://suzume-tojimari-movie.jp/