パワハラが起こらないために企業側がするべきこと
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東京都医師会広報委員で「石井メンタルクリニック」院長の石井一平氏が11月22日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。企業が行う「パワーハラスメント対策」について解説した。
パワハラの現場を録音したり、メモを記録して直接、労働基準監督署、または弁護士などに相談
飯田浩司アナウンサー)パワハラを受けた人は会社に訴えることが多いのでしょうか、それとも泣き寝入りしてしまう人が多いのでしょうか?
石井)パワハラを受けると、「自分が我慢しなければいけない」、「自分のやる気が足りないのか」と思う方もいて、とても我慢できずに退職する方もいらっしゃいます。
飯田)辞めてしまう人も。
石井)最近だと、上司に相談しても取り合ってくれない場合は、パワハラの現場を録音したり、状況を細かくメモに記録して直接、労働基準監督署、または弁護士などに相談して自己防衛する人が増えてきています。
飯田)自己防衛する人が増えているのですね。
大企業ではパワハラを防止することが義務化されている
石井)一方で、パワハラは精神障害をもたらしてしまうことが多くあります。昔は労働災害とは思われていませんでしたが、近年は労災と認められるようになりました。大企業ではパワハラを防止しなければならない義務ができています。
飯田)パワハラ防止が義務付けられている。
石井)そういうこともあり、パワハラ全体としては少しずつ減ってきております。
パワハラが起きやすい会社の特徴
飯田)パワハラが多い会社の特徴はありますか?
石井)厚生労働省などが公表していますが、上司と部下のコミュニケーションがあまり取れていない、「パワーハラスメントをしてはいけない」という防止規定を制定していない。また、仕事の失敗に関して強く責めたり許容度が低い、労働時間や残業が多く休暇が取りにくいような会社は、パワハラが起こりやすいとされています。
会社によるパワハラ対策
飯田)パワハラ対策として、会社は具体的にどんなことをするのでしょうか?
石井)「パワーハラスメントはどういうものであり、行ってはいけない」と周知すること、啓発することが1つですね。
飯田)周知し、啓発する。
石井)それから、先ほど申し上げた「コミュニケーションが少ない」というのはよくありません。なるべくコミュニケーションを取るように工夫することです。管理職がいろいろなことに気付けるような職場環境を整えていくことも必要です。
飯田)なるほど。
石井)健康診断で、5~6年前からメンタルヘルスのストレスチェック検査が導入されています。その検査をもとに職場全体の環境を社員本人が気付いたり、管理職が把握して対策を取る企業もあります。
飯田)メンタルヘルスの検査。
石井)最近は多くなってきていますが、残業制限を設ける。また、自由に有給が取れないような状況を意識し、十分な有給が取れる環境をつくることも、事業者ができる対策だと思います。
飯田)対策を取った会社はどうなのでしょうか? 「そんなことを言っても、人事はいろいろ窓口をつくるけれど機能しないではないか」と思う方もいらっしゃると思いますが、実際に上手くいった例はあるのですか?
石井)実際に対策を取っている会社と、そうでない会社では、パワーハラスメントなどを受けて休む人や退職してしまう人は(対策を取った会社の方が)ずいぶん減っていると思います。ただ、その年にいろいろな対策を取っても、すぐに(効果が)その場で現れるのではなく、数年かかってだんだんと改善していくという状況だと思います。
飯田)そういう制度がまず知られて、その上で使われなければいけないわけですね。
石井)そうですね。定着しなければ効果が出ないと思います。
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