「危機的状況の出生数」の背景にあるもの 「子育ては罰ゲーム」か
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地政学・戦略学者の奥山真司が11月29日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。危機的状況にある日本の少子化について解説した。
今年の出生数が過去最少ペース
厚生労働省によると、2022年9月までの出生数の速報値は59万9636人で、調査開始以来最も少なかった2021年と比べても4.9%下回っていると発表した。
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松野長官は、少子化の背景には「個人の結婚や出産、子育ての希望の実現を阻むさまざまな要因が複雑に絡み合っている」と述べ、結婚や妊娠・出産への支援、男女ともに仕事と子育てを両立できる環境の整備など、ライフステージに応じた総合的な少子化対策を進めるとの考えを示した。
年間の出生数が80万人を下回るペース ~人口のバランスも悪くなっている
飯田)このままだと、年間80万人を下回るペースではないかということです。
奥山)まさに危機的状況です。日本の戦略のもとは何かというと、国力ではないですか。私がお世話になっている方のなかに、イスラエルの国籍も持たれているエドワード・ルトワックさんがいます。彼は、「国力の基は子どもがどれだけいるかだ」と。「若い人たち、要するに子どもがいると国は元気だ」と言います。
飯田)そうですよね。
奥山)ただ、日本の人口動態を見ると、膨れているのは70代のいわゆる団塊の世代であり、そして団塊ジュニアの世代がいる。あとは先細り、人口のバランスが悪くなってしまっています。
「国力の源泉は子どもである」という認識が国内で持たれていない ~「子育ては罰ゲーム」か
奥山)しかし、「国力の源泉は子どもである」という認識が国内で持たれていないことが残念ですね。危機的状況だということは、社会のなかでは出ているのですが、危機感として表れていません。
飯田)そうですね。
奥山)SNSをよく見るのですが、翻訳家の仕事もしているので、同業の方をフォローしています。同業者のなかには、子育てされている世代の女性の方たちが多いのです。
飯田)翻訳されている方のなかには。
奥山)SNSをフォローしている方々を見ると、「子育ては罰ゲームだ」と言っている人がかなりいます。もちろん子どもは可愛いし、子育てすることで人間として成長できると言っているのですが、経済的なことや時間のことを考えると「デメリットでしかない」と発信されている方も多いです。
飯田)翻訳家というと、家で仕事をしながら子育ても両立させなくてはならず、家にいるから保育園などの利用も微妙な感じになっているし、いろいろあるのでしょうね。
奥山)昔であれば、地域で近所の方々が子どもを預かってくれることもありましたけれど、いまはそれがなくなっているではないですか。高齢者優先の社会になって、社会保障費が上がっている部分もあります。「子どもが日本の安全保障戦略の最大の基盤である」ということが忘れられている。なかなか厳しいと思います。
経済が回っていない状況のなか、将来への不安もあり、子どもを持つという気持ちになれない
飯田)制度的な面もありますし、お金の面でも子どもを育てるには負担が大きくなってくる。
奥山)教育費がとても掛かるということもあります。
飯田)そうですね。
奥山)イスラエルの話をルトワックさんに聞いたのですが、大学を出た女性、つまり高学歴の女性は、平均3人子どもを産むと言うのです。いまの日本だと「平均3人」とはならないですよね。2人もいかないという状況です。
少子化担当大臣だけでは何もできない ~全政府でまとめなければならない
奥山)「国力の源泉」としての人がいなくなってしまうことは、本当に危機的だと思います。だからと言って何かを無償化すればいいというわけでもない。少子化担当大臣が「対策を頑張ります」と言っても、あまりに複雑に絡み合っていて、少子化担当大臣だけでは何もできません。全政府でまとまらなければならないですね。
飯田)そのなかで現役世代の負担、社会保障費や税金も含めて、その部分の負担が大きい。結局、経済が回っていない状況で将来への不安があると、「子どもを持とう」という気持ちになりません。少子化の研究をしている東大の先生にお話を伺ったことがあるのですが、最後は「ステルス支援なのです」と。「あからさまに支援してもうまくいかないので、ジワジワと経済を温めることが実は効く」という話をされていました。
奥山)実は間接的なのです。
飯田)安全保障で増税などと言うと、「ふざけるな!」という話になりますよね。社会保障費だけでこんなに天引きされているのに。
奥山)未来の納税者をつくるという意味では、子どもを大事にしなければいけないと思います。
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