警視庁の池田克史副総監が12月8日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。年末に増加する特殊詐欺被害の現状と対策について語った。
特殊詐欺被害に注意
飯田)特殊詐欺被害は、依然としてあとを絶たないと言われています。今年(2022年)の被害状況はいかがですか?
1日10件の特殊詐欺が発生
池田)10月末時点で警察が掴んだ特殊詐欺の被害件数は、2684件となっております。1年は約300日ですから、1日に10件弱は東京のどこかで発生していることになります。
飯田)1日に10件ですか。
池田)被害金額は約55億円であり、去年(2021年)よりも900万円ほど多くなっています。去年と比べると、今年の5月までは去年を下回っていたのですが、6月以降に去年を上回るペースで被害が出ており、現段階では去年並みとなっています。
「還付金詐欺」と「オレオレ詐欺」がそれぞれ、全体の4分の1 ~警察官や金融機関、区役所の職員に成りすましてカードを盗み取る「キャッシュカード詐欺盗」も
池田)手口を申し上げますと、4分の1が還付金詐欺です。「医療費や保険料が返ってきますよ」と言ってATMにお年寄りを誘導し、逆に現金をATMから送金させてしまうという還付金詐欺が、4分の1くらいを占めています。
飯田)還付金詐欺が。
池田)それと同じくらい多いのが、昔からありますけれど、オレオレ詐欺です。親族や子どもに成りすまし、対面で現金を脅し取る。同じように4分の1くらいあります。
飯田)オレオレ詐欺。
池田)それから、やや少ないのですけれども、「キャッシュカード詐欺盗」があります。警察官や金融機関、区役所などの職員に成りすまして、対面でカードを盗み取る。「あなたのカードが不正に使われていますよ。ちょっと預からせてください」というようなことを行う詐欺で、これも4分の1弱あります。
複数で詐欺を行う
池田)コンビニなどのATMでお年寄りがお金を下ろそうとしていると、詐欺グループの別の人間が、コンビニに対し「お宅の店で買った商品に異物が混入していた」などと電話でクレームを入れる。そうするとコンビニの店員さんがATMへ行けず、電話対応で時間がとられてしまうではないですか。
飯田)クレームに対応して。
池田)そのなかで店員に気付かれずに、ATMからお金を振り込んでしまう。そういう連携プレイもあると聞いております。
飯田)1人~2人ではなく、組織で行われているということですか?
池田)そういうことです。電話を掛けるのもそうですし、振り込んでしまったお金を別のATMから出す、いわゆる「出し子」。またキャッシュカード詐欺盗などのように、実際に現場へ行ってお年寄りから受け取る「受け子」も、それぞれ上とは切り離されています。おそらくその上には、全体の画を描いているような人間もいるはずです。
警視庁による「ストップ!ATMでの携帯電話」運動
飯田)警視庁はどのような対策をなさっているのでしょうか?
池田)いま警視庁では、「ストップ!ATMでの携帯電話」運動を昨年(2021年)4月から行っています。
飯田)「ストップ!ATMでの携帯電話」運動。
池田)詐欺グループは被害者をATMに誘導し、電話越しにATMでの操作方法を指示するわけです。
「マナーとしてATMでは携帯電話を使わない」を定着させる
池田)その際、ATMで携帯電話を使わせないためにどうするかを考え、社会のルール、マナーとして「ATMでは携帯電話で通話しないことを定着させていきましょう」という試みを行っております。
飯田)マナーとして、ATMでは携帯電話を使わないようにと。
池田)その際に注意していただきたいのは、高齢者の方に「それは詐欺ではないですか?」と言ってはいけないのです。
飯田)詐欺ではないかと聞いてはいけない。
池田)高齢者の多くの方は、「自分は絶対に騙されていない」と思っています。逆に「還付金が返ってくるのですよね」とか、「お手伝いしましょうか?」と言うと、「そうなのですよ」という感じで、一旦会話を止めるわけです。
飯田)そこで会話を止める。
池田)そこから店員さんにお願いする、あるいは110番するなど、声掛けのときにもプライドを傷つけないように言っていただければと思います。「ストップ!ATMでの携帯電話」運動を大々的に推進しておりますので、ぜひよろしくお願いいたします。
「騙されるかも知れない」という危機意識を持っている人は騙されない
飯田)最後に池田副総監から、特殊詐欺に遭わないためのアドバイス、特殊詐欺撲滅に向けたメッセージをお願いします。
池田)特殊詐欺の被害は身近なところで起きています。詐欺に遭われた方のほとんどは、「自分や自分の家族は騙されない」と思っている方です。逆に言うと、「騙されるかも知れない」と思って日ごろから危機意識を持ち、いろいろな情報を集めている方は騙されません。
飯田)危機意識のある方は。
池田)まず「騙されない」という根拠のない自信を捨てていただき、警戒意識を持っていただければと思います。
飯田)警戒意識を持つ。
池田)その上で、固定電話を常に留守番電話に設定し、メッセージを確認して必要な電話にだけ折り返す。そして、ご自身も周りの方も「ATMでは携帯電話を使わないようにする」というマナーを定着させ、声掛けを行うなど、実践していただけるとありがたいです。そうすれば、特殊詐欺の被害はもっと減っていくと思います。
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