「記憶力」を維持するために一番いい習慣とは 脳科学者が解説
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1月4日(水)、東北大学加齢医学研究所の瀧靖之先生が、ジャーナリストの笹井恵里子がパーソナリティを務めるラジオ番組「ドクターズボイス〜根拠ある健康医療情報に迫る!〜」(ニッポン放送・毎週水曜21時~21時20分)にゲスト出演。「脳」をテーマに、どうすれば脳の若さを保てるのか、脳の萎縮を抑える習慣などを紹介した。
『年を取ってから新しいことを始めるのは遅い』と思っていないだろうか。東北大学加齢医学研究所では、体質や生活習慣との関わりで、脳がどのように変化していくかについての多くのデータを収集。瀧先生はこれまで16万人におよぶ脳のMRI画像を調査し、例えば、同じ60歳でも身なりがきちんとしている人は脳に若さが保たれている一方で、よれよれの格好の人は実年齢より「脳萎縮」が見られる傾向にあり、「見た目の印象と脳の健康度は一致していることが多い」という。どうすれば、いつまでも健康な脳を保ち続けることができるのか、瀧先生に聞いた。
■「脳の若さ」を保つ努力はいつから始めても意味がある
笹井:以前、瀧先生に取材した際「18歳までに多くの体験をすることで、脳にさまざまな道ができ、頑強な脳となる」とうかがいました。
瀧先生:そうですね。
笹井:認知症とは、例えるなら脳の道がなくなっていくことなので、強い脳であれば多少の「道がなくなる」リスクは超えていくことができる、と。
瀧先生:はい。
笹井:ただ、そう聞くと『中高年はもう遅いのか』と思われがちですが……。
瀧先生:そんなことは決してないです。全くそんなことはなく、私たちの脳には“可塑性”という「変化する力」があります。つまり、いつから何を始めても、それを獲得する力があると言われています。楽器演奏や勉強、言語習得など何でも、いつから何を始めても遅いことはありません。
笹井:ただ、何か新しいことを始めるのは、ハードルが高く感じてしまいます。
瀧先生:「楽しいことを楽しく始める」、それだけでいいんですよ。音楽鑑賞、外国語の習得、手芸、囲碁、将棋、書道など、日常生活の中で楽しく、ちょっとしたことを始めるだけで大丈夫です。
笹井:そのちょっとしたことで、脳が変わるのですか?
瀧先生:そうです。例えば、カラオケが好きな方が得意な曲だけでなく、あまり歌ったことがないような曲に挑戦するとか、あまり今までやったことがないことを楽しく始める、それだけで十分です。
■「楽しい」「ワクワク」で脳の萎縮を抑えられる
笹井:そのように好奇心を保ったり、やりたいことをやったりすると、脳は具体的にどう変わるのですか?
瀧先生:まず、脳は「楽しい!」「ワクワクする!」ということで記憶力を高めることが分かっています。また、知的好奇心を持っていろんなことに取り組むと、脳の可塑性、変化する力も高くなります。
笹井:実際に先生の研究グループで、約400人の方を8年間追って、脳がどのように変化したかを調査されたのですよね。
瀧先生:はい。私達は「楽しい」「ワクワクする」「興味がある」「行きたい」「食べたい」など、こういう好奇心は脳にとって凄く大事で、知的好奇心レベルの高い方々は、そうではない方々に比べ、考えたり、判断したりするような高次認知機能を担う領域「側頭頭頂接合部」の萎縮が抑えられます。
笹井:なるほど。
瀧先生:つまり、好奇心レベルが高いと脳の萎縮が抑えられるのです。判断したり、考えたり、記憶する力が保たれるということが分かっています。
笹井:毎日単調なことを繰り返しがちですが、そうすると脳の働きが低下してしまいがち、ということですね?
瀧先生:ただ、実際に何か新しいことを始めるのは、決してハードルが低いことではなく、大変なことだとは思います。ハードルが低くて始められることは、昔はやっていたけど今はやっていないこと。例えば、ピアノ、囲碁、将棋、麻雀、子どもの頃にやっていたことを再開するのもお勧めです。
笹井:先生も電子ピアノを弾いているそうですね?
瀧先生:私も子どもの頃にピアノを少しやっていて、20数年のブランクを経て再開し、今もピアノを習っています。『ピアノをまたやりたいな……』という思いが募り、ある時「えいっ!」と始めたのですが、もう10年以上続いています。
■「運動」が健康的な脳をつくる
笹井:健康的な脳をつくるのに良い習慣はあるのでしょうか?
瀧先生:やはり運動です。運動が一番です! 例えばウォーキング、ジョギング、可能であれば水泳など、息が少し弾むような有酸素運動を続け、それを習慣化することが一番いいです。
笹井:なぜ運動が一番いいのでしょうか?
瀧先生:運動をすることで、特に有酸素運動をすることで「脳の神経細胞のエネルギー源」とも言われている脳由来の神経栄養因子「BDNF」、脳をより健康的に保つような物質が、有酸素運動によって体の中に出てきます。
笹井:はい。
瀧先生:この、脳をより健康的に保つような物質が、記憶に関わる脳の「海馬」の神経細胞を新しく生まれる手助けをしたり、海馬の機能を高めたりします。結果的に、海馬の最も重要な機能である「記憶の維持」に有効なんです。有酸素運動をすることで、海馬の脳の重要な領域に働きかけ、「記憶力を維持する」「記憶力を少し向上させる」ということが分かっています。
この他にも番組では、脳が衰えやすい3つの注意点、子どもの脳にいいこと、なども紹介している。
Podcastでの聴取はこちらから。
番組情報
「週刊文春 老けない最強食」の著者・笹井恵里子がパーソナリティを務める番組「徳洲会グループpresents ドクターズボイス〜根拠ある健康医療情報に迫る!〜」
この番組は「生命(いのち)だけは平等だ」の理念のもと全国70以上の医療機関を有する徳洲会グループのサポートでお送りします。
毎週ホットなテーマを設け、各専門分野のドクターをゲストに迎えて、そのメカニズムや対処法を分かりやすく伝えていきます。
番組では、感想や取り上げて欲しいテーマなどお待ちしております。