1月25日(水)、日高徳洲会病院院長・井齋偉矢先生が、ジャーナリストの笹井恵里子がパーソナリティを務めるラジオ番組「ドクターズボイス〜根拠ある健康医療情報に迫る!〜」(ニッポン放送・毎週水曜21時~21時20分)にゲスト出演。「漢方」をテーマに、即効性のある漢方薬があること、花粉症、疲れ、寒い時期の痛みに効果的な漢方薬、西洋薬と漢方薬の役割についてなどを解説した。
■漢方薬には即効性のあるものも多い
笹井:漢方というと、「じっくり体質改善」というようなイメージがあるのですが、実は即効性のあるものも多いそうですね。
井齋先生:はい。まず、漢方薬が今の形になってきたのは、1800年前なんです。
笹井:1800年も前なんですね。
井齋先生:その頃は感染症で亡くなる方が7割ぐらいもいたので、その感染症をどうやって治療するか、ということを抗生物質無しでやるわけです。ですから、すぐに効かないと意味がない、そういう時代だったんです。
笹井:それが受け継がれて現在の形になっているんですね。
井齋先生:はい。ですから、基本は即効性なんです。
笹井:漢方薬はその効果について「信じる」「信じない」という、非科学的な議論になりやすいですが、先生はどう考えていますか?
井齋先生:漢方薬は一つの薬に、数千から一万種類以上もの成分が、少しずつ含まれます。
笹井:そんなにたくさんの成分が入っているのですね。
井齋先生:その成分が体の中に入って何をしているのかというと、自分の力で病気を治せるように、そういう力を引き出しているんです。それが漢方薬の効き方の基本です。ですから、西洋薬と漢方薬では立ち位置が全く違います。
■花粉症に効果的な漢方
笹井:これからの時期、花粉症に悩む方も多くなってきますね。
井齋先生:「小青竜湯」という漢方があるのですが、これはアレルギー性鼻炎にも効きますが、アレルギー性の花粉症に対してもほぼ同じような効果があります。ただ、「小青竜湯」は主に鼻の症状がある人に使われる薬です。花粉症はひどくなると目の症状、アレルギー性の結膜炎がひどくなるんです。
涙が止まらなくなるなど、そういう場合は「小青竜湯」だけではちょっと不十分なので、「越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)」という漢方薬を加えないと、目の症状が治らないです。
笹井:目の症状があったら「越婢加朮湯」も加えるといいのですね。
井齋先生:「小青竜湯」に「越婢加朮湯」を加えることで、目と鼻の両方に効果があるので、かなり症状が楽になると思います。
笹井:他にも、「大青竜湯(だいせいりゅうとう)」はどうでしょうか?
井齋先生:「大青竜湯」は、「麻黄湯(まおうとう)」と「越婢加朮湯」を合わせたもので、先ほどお話した「小青竜湯」と「越婢加朮湯」を合わせた時よりも、もう少し強くなります。症状が強い場合は、そちらを選んでもいいと思います。
■ちょっと疲れたな、という時に効果的な漢方薬
笹井:ちょっと疲れた時にいい漢方薬があるそうですね?
井齋先生:「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」というのが有名です。疲れた時でもいいですし、個人的には、インフルエンザなどの感染症が流行し始めた時に、自分の免疫力を上げるために、体がなんでもなくても、この「補中益気湯」を飲むということを、私はずっと前からやっています。
笹井:漢方薬は市販でも手に入るので、『ちょっと疲れたな』と思う時に飲んでもいいかもしれませんね。
■寒い時期の痛みに効果的な漢方薬
笹井:寒い時期、年を取ると膝などに痛みが起きやすいですが、そういったものにも作用する漢方薬があるそうですね?
井齋先生:寒い時期になると体を温めることがとても大事です。
笹井:そうですね。
井齋先生:「当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)」という、漢方で一番長い名前なのですが、この薬は熱を産生する力を上げますので、冷えることによってお腹が痛くなる、頭や腰が痛くなる、そういう人にかなり効果的です。
■漢方薬の役割
笹井:漢方の役割について、先生は「自分の治す力を引き出すもの」とお話されていましたね。
井齋先生:そうですね、漢方薬は体がもともと持っている病気に抵抗する力を、少しでも正常に近づけてくれる薬です。
ですから、その漢方薬と一緒に、細菌をやっつける抗生物質、がんをやっつける抗がん剤など、ピンポイントで攻撃する西洋薬をうまく組み合わせ、漢方薬と西洋薬の両方の長所を生かしていく、二刀流の治療法が理想的ではないかと、私は思います。
笹井:西洋薬は敵を攻撃するもので、漢方はその人自身の治す力を引き上げるのですね。本来、人は治す力がちゃんと働けば、病気になりにくいのではないか、ということですね。
井齋先生:そして、西洋薬と漢方薬の両方を、同じ医者が処方できるのは日本だけなんですよ。中国も韓国も免許が別なんですが、日本は医師免許で両方の薬を出せます。そういう意味では、非常に良い環境にあると思います。
この他にも番組では、元々は外科医だった井齋先生が漢方薬に携わるようになったきっかけ、中国で売っている漢方薬と日本の漢方薬の違いについてなども紹介した。
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番組情報
「週刊文春 老けない最強食」の著者・笹井恵里子がパーソナリティを務める番組「徳洲会グループpresents ドクターズボイス〜根拠ある健康医療情報に迫る!〜」
この番組は「生命(いのち)だけは平等だ」の理念のもと全国70以上の医療機関を有する徳洲会グループのサポートでお送りします。
毎週ホットなテーマを設け、各専門分野のドクターをゲストに迎えて、そのメカニズムや対処法を分かりやすく伝えていきます。
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