アルコール依存症や極端な偏食でも「貧血」は起きる
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東京都医師会広報委員で「宇野医院」院長の宇野真二氏が2月2日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。病気が原因で起こる貧血について語った。
ビタミンB12や葉酸の不足から起こる「巨赤芽球性貧血」
飯田浩司アナウンサー)貧血が引き起こす病気について伺います。鉄が不足して起こる鉄欠乏性貧血ではなく、病気の場合もあるということですが。
宇野)ビタミンB12や葉酸が不足すると、造血作用のある骨髄での造血機能が影響を受けてしまい、赤血球の元の細胞である赤芽球が大きくなってしまうのです。その結果、貧血を引き起こしてしまう。このような貧血を「巨赤芽球性貧血」と言います。
飯田)巨赤芽球性貧血。
宇野)いわゆる赤血球の元の細胞で、だんだん分化誘導されて赤血球に成熟していくというものです。鉄欠乏性貧血のときは赤血球が小さくなるのですが、巨赤芽球性貧血の場合は赤血球が大きくなるのです。
アルコール依存症や極端な偏食も「巨赤芽球性貧血」の原因に
宇野)ビタミンB12は胃から吸収されるのですが、胃がんなどで胃を全摘した症例の場合、ビタミンB12が吸収されないために貧血を起こすことがあります。
飯田)吸収されずに。
宇野)または、アルコール依存症の方。アルコールを飲みすぎると葉酸の吸収が障害されてしまいます。極端な偏食や厳格な菜食主義の方も同様です。
飯田)アルコールの飲みすぎも。
宇野)胃の粘膜からビタミンB12を吸収するのに、もともと吸収障害がある方もいます。「悪性貧血」と言いますが、そういうものが挙げられると思います。
その他の貧血に関する病気
飯田)他にはどのようなものがありますか?
宇野)白血病や「再生不良性貧血」など、骨髄の病気、血をつくる機能の低下を引き起こす病気があります。また、腎臓からは赤血球の産出を促すエリスロポエチンというホルモンが出ているのですが、それが下がると貧血になります。膠原病である関節リウマチなども貧血を起こします。
飯田)膠原病も。
宇野)赤血球やヘモグロビンの構造異常、免疫異常によって、赤血球が通常より早く壊されてしまう「溶血性貧血」もあります。
遺伝性球状赤血球症
宇野)日本人には比較的多いのですが、「遺伝性球状赤血球症」という病気があります。赤血球は、もともと円盤状の形なのですが、それが先天的に丸い形になっていて、非常に壊れやすい方がいます。壊れると溶血発作のような発作を起こしてしまう場合があります。溶血性貧血は、赤血球の大きさを計算すると比較的正常であることが多いのですが、黄疸、またはビリルビンの値が上がったり、網赤血球が増加する特徴があります。
血液検査でヘモグロビンの値の低値が確認されたら、いろいろな症状と組み合わせて原因を突き止める
飯田)病気が潜んでいる貧血は、どのような症状なのでしょうか?
宇野)貧血の場合、初期症状は疲労感や倦怠感、顔面蒼白などの症状から始まるので、最初はなかなかわかりづらいところがあるかも知れません。
飯田)初期症状では。
宇野)貧血によっていろいろな症状があり、溶血であれば黄疸が起きます。鉄欠乏性貧血は爪に異常が出たり、舌が萎縮したりします。ひどくなると髪が抜けたり、肌が荒れる場合もあります。
飯田)なるほど。
宇野)巨赤芽球性貧血の場合は手足が痺れたり、ちくちくした痛みがあったり、進行すると記憶障害などの神経症状が加わることもあります。血液検査でヘモグロビンの値の低値を確認したら、どのような貧血なのか、いろいろな症状と組み合わせて鑑別し、原因を突き止めていくことが大切です。
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