東京都医師会理事で「かずえキッズクリニック」院長の小児科医、川上一恵氏が3月9日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。小児のワクチン接種について語った。
多くの地域で95%を下回ってしまった麻疹・風疹ワクチンの接種率
新行市佳アナウンサー)新型コロナウイルスのワクチン接種ではなく、小児接種や予防接種と呼ばれるワクチンの接種率が低下していると聞いたのですが、詳しく教えていただけますか?
川上)令和3年度の子どもたちのワクチン接種率、特に麻疹・風疹ワクチンやBCGの接種率についての報告が上がりました。それによると令和2年度までは、麻疹・風疹ワクチンに関して、特に1歳児が受ける分については95%以上の子どもが受けていたけれど、令和3年度は多くの地域で95%を下回っています。
新行)95%以下になっている。
川上)95%という数字は、日本が麻疹排除国の認定を維持するために必要なレベルなのです。このまま下がり続けてしまうと、コロナが落ち着いてきて国が空港を解放し、海外からのお客様を多く受け入れるようになったとき、海外から持ち込まれた場合、ワクチンを受けていない子どもたちがターゲットになってしまうのです。
新行)ワクチンを受けていない子どもたちが。
川上)麻疹は昔から「命定め」と言われるくらい重くなる病気ですから、ワクチン接種率が95%を切ってしまったのは心配な点です。
麻疹・風疹ワクチンの接種率が低下した理由
新行)接種率が95%を切ってしまった原因は何なのでしょうか?
川上)コロナ禍で医療機関に行くと、コロナをうつされてしまうのではないかという恐れがあったのではないでしょうか。
新行)コロナ禍で病院へ行く際に。
川上)また、新型コロナワクチン接種が始まるときに、皆さん「ワクチンとは何なのか」を考えたと思います。特に新型コロナはmRNAタイプのワクチンであり、「ワクチンが怖い」という印象を持ってしまった方が増えたのではないかと思います。
麻疹・風疹のワクチン接種を逃した場合でも申請すれば無料で受けることができる地域も
新行)麻疹・風疹ワクチンの接種機会を逃してしまった場合は、どうすればいいのでしょうか?
川上)麻疹・風疹に関しては国をあげて大切な疾患として扱っていますので、多くの地域では申請すれば無料で受けられるような「キャッチアップ接種」の制度があります。うっかり機会を逃してしまったという方は、役所に相談してみてください。
新行)逃してしまったからもうダメだ、ということではなく、キャッチアップしてくれる制度があるのですね。
川上)また、もし制度がない地域だとしても、自費で受けることは可能です。
生後2ヵ月からの小児ワクチン接種
新行)小児のワクチン接種にはどんなものがあるのか、基本的なところを教えてください。
川上)現在は生後2ヵ月からB型肝炎ワクチン、四種混合(DPT-IPV)ワクチン、BCG、麻疹・風疹混合ワクチン、おたふくかぜワクチン、日本脳炎ワクチンなどが月齢ごとに順次行われています。
新行)母子手帳を見ると、子どものころにたくさん打ったのだなと思います。
川上)特にここ20年間で子どもたちの定期接種は増えました。諸外国に比べて遅れていた日本の予防接種体制が、ようやく追い付いてきたのです。
新行)遅れていたのですか?
川上)そうですね。
任意接種のなかで注目される「おたふくかぜワクチン」
新行)任意接種ではどのようなものがありますか?
川上)任意接種のなかでクローズアップされているのは、おたふくかぜワクチンです。外国に行くと、飲み水などの衛生環境によっては、A型肝炎のワクチン接種が必要な国もあります。海外へ転勤や長期旅行などに行かれるときは、任意接種のなかから必要なものを受けていただくことになります。
新行)海外旅行に行くときは、予防接種も大切になってくるのですね。
川上)そうですね。
番組情報
医師が週替わりで登場。
飯田浩司アナウンサーと新行市佳アナウンサーが、健康に関する疑問や予防法、症状、治療法などを聞きます