「酷い口内炎」などがん治療の副作用を避けるためには
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医師で医療ジャーナリストの森田豊氏が4月14日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。口のなかのケアと抗がん剤の副作用について語った。
抗がん剤治療を受ける患者の約40%に起こる口腔内の副作用 ~強い抗がん剤では約80%
飯田浩司アナウンサー)今回は、「がんの治療と口のなかのケア」について伺います。口のなかの状態とがんは、どんなつながりがあるのでしょうか?
森田)がんの治療中には、口のなかにもさまざまな副作用が高い頻度で出ることがあります。口のなかに生じる副作用は痛みが多く、患者さんもつらい思いをするのです。
飯田)副作用で。
森田)会話や食事に影響を及ぼしたり、口腔内の細菌による感染を引き起こすなど、がん治療そのものの邪魔をする場合もしばしばです。アメリカなどでは、がん治療を開始する前に歯科で口のケアを受けて、がん治療を円滑に進めるような方法が一般的になってきています。
最も多い副作用は口内炎
森田)アメリカの国立がんセンターの報告では、一般的な抗がん剤治療を受ける患者の約40%、また強い抗がん剤治療を受ける患者の約80%に、口に関する何らかの副作用が出たという報告もあります。いちばん多い副作用は口内炎です。
飯田)口内炎。
森田)口内炎は通常、抗がん剤投与から1週間~10日くらいで起こり、その後は自然に治っていくのですが、全身の状態が悪かったり、口腔内の清掃状態が悪いと細菌が多くなります。口内炎の傷から感染が起こり、重篤になったケースもあるということです。
飯田)抗がん剤を投与すると、なぜ口内炎の症状が出るのでしょうか?
森田)抗がん剤には細胞の増殖を妨げる働きがあるのです。がん細胞をやっつけてくれるのはいいのですが、同時に細胞の生まれ変わりが早い口腔内の細胞などには、悪影響を及ぼすのです。
飯田)生まれ変わりが早い細胞に。
森田)抗がん剤治療のあとに髪の毛が抜ける症状をよく聞きますが、髪の毛も細胞の増殖が激しいところです。また、爪が変形する症状が出る場合もあります。
がん治療の前に歯科医院を受診して口のなかのケアをする
森田)口のなかは、抗がん剤の副作用を受けやすい場所だと考えた方がいいでしょう。ですから手術を始める前、あるいはがんの告知をしたあとに、口のなかを歯科医院で見ていただくよう指導します。
新行市佳アナウンサー)がん治療の前に口腔内をケアしておくことが大切なのですね。
森田)治療を始めてからでは間に合わないことが多いです。「これから抗がん剤を使う」と告知した時点で歯科医院を受診してもらい、歯周病を治す。また、口のなかで歯が歯茎にあたるところがあれば、それを治してもらうことも大切です。
飯田)なるほど。
森田)がん治療を始める前に大切なのは、トラブルを引き起こす原因となる口腔内の細菌の数を減らすこと。そのためには歯周病を治し、歯石や歯垢(プラーク)なども徹底的に綺麗にすることが大事です。告知を受けたら、正しい歯磨きの方法も学びましょう。
口のなかの細菌から誤嚥性肺炎が生じる場合も
森田)全身麻酔による手術のあとは、しばらくベッドに横たわっていることも多いですよね。
飯田)そうなります。
森田)嚥下機能に支障をきたして誤嚥が生じると、口のなかの細菌が入ってしまい、特に高齢者の場合は誤嚥性肺炎になる可能性もあります。
飯田)すべてが口からつながっていく感じがしますね。
森田)何も症状がなくても普段から歯科医院を受診して、自分の歯のメンテナンスを行うことが大切だと思います。
番組情報
医師が週替わりで登場。
飯田浩司アナウンサーと新行市佳アナウンサーが、健康に関する疑問や予防法、症状、治療法などを聞きます