外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が4月24日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。岸田総理のアフリカ4ヵ国歴訪について解説した。
岸田総理大臣がアフリカ4ヵ国を歴訪へ
松野官房長官は4月11日、岸田総理大臣が4月末から5月初めの大型連休に、エジプト、ガーナ、ケニア、モザンビークの4ヵ国を訪問すると発表した。広島で開催する先進7ヵ国首脳会議(G7サミット)に向けて、「グローバルサウス」と呼ばれる新興国・途上国との連携強化を目指す。
飯田)間もなく大型連休が始まります。
宮家)この時期は必ず外国出張がありますが、なりたての総理なら、レストランで言えば定食A、定食B、定食Cがあるわけです。「主要7ヵ国(G7)にしましょう」とか、「韓国とやりましょう」、「東南アジアとやりましょう」というのが定番です。もちろんアメリカもそうですが。
グローバルサウスの国々への訪問 ~アフリカ支援に力を入れてきた中国
宮家)ところが、岸田総理は外務大臣を5年ほど経験しているので、アラカルトから始められるのです。そういう発想で、今度はいわゆる「グローバルサウス」と呼ばれる途上国へアフリカ中心に行くということです。エジプト、ガーナ、ケニア、モザンビーク。ガーナは17年ぶりだそうですね。
飯田)そうなのですね。
宮家)もう少し頻度を高めて欲しいですね。中国はアフリカ支援に力を入れています。イラン・イラク戦争のとき、私はスーダン経由でクウェートに行ったのですが、スーダンで飛行機が飛ばず、2日~3日間そこにいました。そのとき当時の大使館に駆け込んだら、夕飯を食べさせてくれました。私は研修生でしたから。
飯田)可哀そうだと。
宮家)そこで連れていってもらった中華料理店がとても美味しいのですよ。「本場と同じではないですか」と言ったら、「中国が農業支援をしているのだけれど、スーダンの気候と似ている中国の地域から人をたくさん連れて来て、畑を耕して野菜をつくっているのだ」ということでした。だから美味しいに決まっているのです。
TICADでアフリカとの関係強化を進める
宮家)そのくらい彼らはよきにつけ悪きにつけ、徹底的にアフリカ支援を行っています。日本も負けてはいけないので、アフリカ開発会議(TICAD)を進めています。
飯田)TICAD。
宮家)日本もアフリカにはいろいろな形で投資をしてきたわけです。ですから、G7の前にアフリカに行くのは重要ですし、よかったとは思います。
現状変更しようとする中露 ~世界を取り巻く安全保障環境が劇的に変化
宮家)今回のG7サミットはとても大事だと思います。2020年辺りからロシアと中国がおかしな動きをしています。
飯田)そうですね。
宮家)この2ヵ国については、力で現状変更をしようとしているという懸念が深まりました。日本の場合は、2010年と2012年に尖閣諸島周辺で日中関係が緊迫した状況になりました。ウクライナにおいても2014年にロシアが1回目に入り、2022年に2回目、正規軍で入った。日本を取り巻く、そして世界を取り巻く国際情勢、特に安全保障環境が劇的に変わってしまったのです。
飯田)安全保障環境が。
宮家)そういう意味では今回、G7サミットが日本で行われるのは大事なことです。世の中は変わってしまった。当時がよかったとは言いませんが、昔は米ソによる恐怖の均衡があって、それなりに安定した時代でした。相手を抑止することができた時代だった。
新たな危機感で世界全体が新しい方向を示さなければならない ~広島で行われるサミットで日本のメッセージが発信されることは重要
宮家)いまは中国が入ってきました。中国も核武装して、何百発と持つようになれば、いままでのような形の核抑止もできなくなってきますし、戦争を抑止すること自体が難しい時代だと思います。
飯田)中国が加わり。
宮家)その意味では、やはり新たな危機感を持ち、世界全体が新しい方向性を示さないといけない時代に差し掛かっているのです。今回、広島という象徴的な場所でG7が開かれます。上手くやれば日本のメッセージを外に出せる大事な場だと思います。
民主主義の前に「食べていかなければならない」グローバルサウスの国々
飯田)ロシアによるウクライナ侵略において、国連の決議なども総会で出ていますが、投票行動の内訳を見ても、賛成するところもあれば棄権した国もあります。その辺りを上手く取り込むのが大事なのでしょうか?
宮家)「グローバルサウス」のなかでも、「民主主義が大事なのはわかるが、我々も食べていかなくてはならない」という意見があるわけです。
飯田)その前に。
宮家)エネルギー価格がこんなに上がってしまいました。そう考えたら、「白黒はっきりしろ」と言われても「うーん」と引いてしまう人たちが出てくるのは当然だと思います。米ソ冷戦の時代にもそういうことがありました。ですが、そういう国があるからと言って、我々が妥協してはいけません。
ウクライナの問題は他人ごとではない ~アジアの独裁者に正しいメッセージを送らなければならない
宮家)特にウクライナで何か問題があったときに、「なぜ日本がここまでやるのだ」という話が出ます。私がよく言うのは、「ウクライナだけならば、ここまでやらなかったかも知れない」ということです。
飯田)ウクライナだけならば。
宮家)ヨーロッパの独裁者が判断ミスをしたけれど、アジアにも似たような独裁者が少なくとも2人いるでしょう?その人たちに判断ミスをされたら日本はどうなるのか。「ウクライナだけでは済まない」ということです。
G7広島サミットは日本から正しいメッセージを送る重要な機会
宮家)そう考えると、我々の近所にいる独裁者に対し、正しいメッセージを送らなくてはいけません。「力でものごとを変えようとしてもダメですよ。きちんとルールを守ってくださいね」「普遍的な価値を守ってくださいね」というメッセージを送らなくてはなりません。
飯田)正しいメッセージを。
宮家)そうする時期に来ているのです。その意味で、G7広島サミットは重要だと思います。
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