未稼働太陽光発電5万件「認定取り消し」 断行した経産省を評価するべき

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政策アナリストの石川和男が5月9日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。2023年春に認定を失った太陽光発電の事業者について解説した。

未稼働太陽光発電5万件「認定取り消し」 断行した経産省を評価するべき

※画像はイメージです

失われた太陽光発電5万件

日本経済新聞によると、国から太陽光発電の事業者として認定を受けていながら未稼働のまま滞留していた5万件が、2023年春に国からの認定を失った。認定を失ったのは再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)で期限までに運転開始への進捗が見られなかった案件。認定の失効制度は2022年4月に導入され、この春に初めて適用された。

2011年の福島原発事故によって再生可能エネルギーが注目される ~再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)

石川)きっかけは2011年3月の原発事故です。当時を思い起こすと、「原子力はダメだ、もうやめよう」となった。その代わりに何をするのかと言うと、再生可能エネルギーだと。再生可能エネルギーはいろいろな呼び方がありますが、太陽光や風力、バイオマスや水力発電、地熱発電などを「再エネ」と呼んでいます。

飯田)再生可能エネルギーについて。

石川)CO2は出ませんし、比較的安全に思えるので、そちらの方をやりましょうという流れになった。当時、原発事故とは何の関係もなく、再生可能エネルギーを広めようとして、たまたま「再生可能エネルギーを電力会社が買い取る」という法律をつくっている途中でしたが、そこで震災による原発事故が起きたのです。

反原発・脱原発の煽りもあり、買い取り価格を世界でも最高価格に設定

石川)震災や反原発・脱原発の煽りもあって、実際の買い取り価格を世界でも最高価格に設定したのが太陽光なのです。

飯田)世界最高の価格で。

石川)特にメガソーラーに関しては、野原や野山を削って、たくさんの太陽光パネルを敷き詰めていました。当時は「太陽光をつくれば原発がなくてもいけるのではないか」という風潮があり、それは誤りだったのですが、考え方は流行してしまった。もちろん実際に太陽光パネルを置いて稼働しているものは、それでいいのです。

権利だけ取得して太陽光パネルの値段が下がるまで待って稼働しない事業者が少なくない ~認定されれば送電線の空き容量が減り、再生可能エネルギーが推進できない

石川)しかし、「失われた太陽光発電」がどんなものかと言うと、高い値段に設定して「買い取りましょう」と太陽光の権利を取得しておきながら、太陽光パネルの値段が下がるのを待って稼働しなかったということです。下がれば利益が大きくなるではないですか。

飯田)初期コストが掛かりませんからね。

石川)値段が下がるのを待ち続けて、「まだまだいける。まだ下がる」と、いままでやらずに約10年経ってしまったものがたくさんあったのです。実はこれだと再生可能エネルギーが推進できなくなってしまう。買い取り制度の認定の権利は、「送電線に接続する」という権利なのです。送電線に電気を流して買い取ってもらうわけではないですか。送電線は認定すればするほど、空き容量が減っていきます。

飯田)そこは枠として取っておかなくてはならない。

再エネを希望しても枠が取れない ~約10年が経過してようやく未稼働の事業者の認定取り消しへ

石川)早く使ってくれるならいいのですが、パネルが安くなるまで待っているので、枠だけ取られてしまうと、他に再エネをやりたい人が待たされてしまうのです。

飯田)すぐにやりたいと思っていても。

石川)やる気のある人が待っているのに、やる気のない人が安くなるまで待っているという状態です。いまは2023年ではないですか。2012年に始まって、当時から未稼働のものが10年以上経ち、ようやく認定が取り消された。日本は一旦、許認可を出すとなかなかやめられない国なのです。

飯田)それで10年くらい掛かってしまうのですね。

リスクを取って認定の取り消しを断行した経産省

石川)2~3年待つくらいならまだ許せるのですが、5~6年も経てば、「あなたはやる気がないですね」と判断してやめさせるのが普通だと思います。再生可能エネルギーは、政治的には味方が多いので、「みんなが頑張っているのだから少しは待っていろ」という話もあります。

飯田)なるほど。

石川)このように、みんなで「いいではないか」と言い続けていたら、こうなってしまった。ようやく経産省の事務当局が認定取り消しの行政手続きをしたのです。経産省も文句を言われることが多いかも知れませんが、許認可の取り消しを断行することは、再生可能エネルギーを推進する上では必要なことです。経産省には「リスクを取ってよくやった」と当局の人を労いたいです。

飯田)関係者からすれば剥奪されるので文句を付けられるし、周りの人たちは「当然だろう」とあまり褒めてくれない。

石川)しかも「再エネ、太陽光をやめるの? 勿体ない」という話にもなるのです。しかし、そもそも「まだやっていないではないか」という話であり、次に待っている人に譲りましょうということです。

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