『TAR/ター』ケイト・ブランシェットが放つ新たなる最高傑作
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【Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね 第1118回】
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画・ドラマを発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。
今回は、5月12日公開の『TAR/ター』と『おとななじみ』をご紹介します。
映画館で観たい!『TAR/ター』 ~強大な権力は、人間にどのような影響を与えるのか……
凛とした佇まいと美貌で世界中の注目を集める、ハリウッドきっての演技派女優ケイト・ブランシェット。その鋭敏な表現力で、これまであらゆる役どころに挑んできた彼女が、「“自身の最高傑作”を塗り替えた」と評されるほどの演技を披露したのが、映画『TAR/ター』。
「唯一無二のアーティスト、ケイト・ブランシェットに向けて書いた」と語るトッド・フィールド監督の言葉どおり、ケイト・ブランシェットの怪演ぶりが話題となっている1作です。
『TAR/ター』のあらすじ
アメリカの5大オーケストラで指揮者を務めた後、世界最高峰のオーケストラのひとつベルリン・フィルの首席指揮者に、女性として初めて就任したリディア・ター。
彼女は天才的な才能とそれを上回る努力、そして類い稀なる自己プロデュース力で、自身のブランディングにも成功。超多忙な日々を送っていた。
そんなターを公私ともに支えているのは、オーケストラのコンサートマスターで、ヴァイオリン奏者のシャロン。そして、ターの副指揮官を目指すアシスタントのフランチェスカもまた、厳格かつ緻密なターが信頼を寄せる人物だった。
あるとき、かつてターが指導した若手指揮者が死んだという知らせが届く。それをきっかけに、思いがけない陰謀が動き始め、ターの心の闇が少しずつ広がっていく……。
『TAR/ター』のみどころ
リディア・ターを演じたケイト・ブランシェットをはじめ、ニーナ・ホス、ノエミ・メルラン、マーク・ストロングといった実力派キャストが集結した本作。いずれも複雑な感情を有するキャラクターを好演。重厚感あるドラマが展開されます。
そして一際輝きを放っているのが、やはりケイト・ブランシェット。
ターを演じるために、オーストラリア出身の彼女は、ドイツ語とアメリカ英語をマスター。さらにピアノと指揮をプロフェッショナルから本格的に学び、すべての演奏シーンを自身で演じ切りました。
それと同時に、完璧主義者であるターに重くのしかかるプレッシャーや、彼女に内在する過剰すぎる自尊心を見事に体現しています。
トッド・フィールド監督いわく「強大な“権力”というものが、個人や周囲の人々にどんな影響を与えるかを描こうとした」本作。
特に“音”に対する演出が秀逸で、劇中で演奏されるクラシック音楽はもちろん、水が滴る音や小さな咳払いにいたるまで、“音”を通じてターの心理状態を映し出す手法には驚くばかり。
芸術と狂気がせめぎ合う、いまだかつて観たことがない究極のサイコスリラー。是非、最高の音響環境が整った映画館で堪能してもらいたい衝撃作です。
コチラも映画館で観たい!『おとななじみ』 ~この両片思い、成就する!?
中原アヤによる大ヒット漫画を、井上瑞稀(HiHi Jets/ジャニーズ Jr.)と久間田琳加で実写映画化した『おとななじみ』。
恋愛には鈍感な超残念男子・青山春と、一途に想い続けるあまり、世話を焼きすぎてしまうオカン系女子・加賀屋楓。20年間も片思いを続ける2人の恋は、“おとななじみ”のまま? それとも、実を結ぶのか!?
軽快で丁々発止なやり取りから、笑いとムズキュンが溢れ出ている本作。恋に一歩踏み出せない2人のもどかしさだけでなく、仕事や将来に不安を抱える心の動きも丹念に描き出されており、登場人物たちの等身大の魅力に共感を覚える人も多いことでしょう。
爽やかな新緑の季節に観て欲しい、青春ラブコメディです。
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『TAR/ター』
2023年5月12日(金)からTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
脚本・製作・監督:トッド・フィールド
音楽:ヒドゥル・グドナドッティル
出演:ケイト・ブランシェット、ニーナ・ホス、ノエミ・メルラン、ソフィー・カウアー、アラン・コーデュナー、ジュリアン・グローヴァー、マーク・ ストロング
原題:TÀR
配給:ギャガ
(C)2022 FOCUS FEATURES LLC.
公式サイト https://gaga.ne.jp/TAR/
『おとななじみ』
2023年5月12日(金)から全国東映系にてロードショー
出演:井上瑞稀(HiHi Jets/ジャニーズJr.)、久間田琳加、萩原利久、浅川梨奈、岡本夏美、菊池亜希子、宍戸美和公、横澤夏子、村上健志(フルーツポンチ)、アンミカ、松金よね子
原作:「おとななじみ」中原アヤ(集英社マーガレットコミックス刊)
監督:髙橋洋人
脚本:吉田恵里香
音楽:ノグチリョウ
主題歌:「Sweet Melody」Kis-My-Ft2
配給:東映
(C)中原アヤ/集英社 (C)2023「おとななじみ」製作委員会
公式サイト https://otonanajimi-movie.jp/
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/